「大学に通いながらバイトで学費と生活費を稼いでいるけれど、年末調整の書類に『勤労学生』という欄があるのに気づいた」
「勤労学生控除を使うと年収いくらまで所得税がかからなくなるのか、令和7年度の税制改正でその金額は変わったのか」
大学、短大、専門学校、高校などに通いながらアルバイトで収入を得ている学生にとって、知っておくべき最も重要な所得控除が勤労学生控除です。所得控除27万円という金額自体は今回の税制改正でも変わっていませんが、この控除を使えるかどうかを決める所得要件と、給与所得控除・基礎控除という土台の金額が令和7年度税制改正で大きく引き上げられ、非課税になる年収のラインが従来より150万円前後まで広がっています。しかもこの改正の結果、勤労学生控除を使わなくても年収160万円程度まで所得税がかからないケースが出てきており、控除の存在意義そのものが変わりつつあります。この記事では、国税庁タックスアンサーNo.1175(勤労学生控除)、No.1177(特定親族特別控除)、No.1180(扶養控除)、および国税庁「令和7年度税制改正による所得税の基礎控除の見直し等について」にもとづいて、勤労学生控除の正確な要件と、親の扶養控除への影響まで整理しました。
1. 勤労学生控除とは何か、3つの必須要件と対象校の範囲

勤労学生控除は、給与所得などの勤労による所得があり、合計所得金額が一定額以下で、学校教育法などに定める学校の学生・生徒であることの3要件すべてを満たす人が受けられる27万円の所得控除です。
1-1. 3つの必須要件(国税庁No.1175)
【国税庁の公式見解・1次情報】
国税庁 タックスアンサー「No.1175 勤労学生控除」では、勤労学生とは次の3要件すべてに該当する人をいうと定められています。
『(1)給与所得などの勤労による所得があること (2)合計所得金額が一定額以下で、かつ、勤労に基づく所得以外の所得(株式の配当所得やネット副業などの雑所得を含む)が10万円以下であること (3)特定の学校の学生、生徒であること』。控除額は27万円です。
出典:国税庁「No.1175 勤労学生控除」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1175.htm
このうち(2)の合計所得金額の要件は、令和7年度税制改正で75万円以下から85万円以下に引き上げられました。給与収入だけの学生の場合、これは給与収入おおむね150万円以下に相当します。
【国税庁の公式見解・1次情報】
国税庁「令和7年度税制改正による所得税の基礎控除の見直し等について」では、次のように定められています。
『勤労学生の合計所得金額の要件:85万円以下(改正前:75万円以下)』。この改正は令和7年分以後の所得税について適用されます。
出典:国税庁「令和7年度税制改正による所得税の基礎控除の見直し等について」 https://www.nta.go.jp/users/gensen/2025kiso/index.htm
1-2. 対象になる学校とならない学校
対象になる学校は、学生証や生徒手帳の提示だけで済むところと、学校発行の証明書の添付が必須のところに分かれます。
| 学校区分 | 対象の可否 | 年末調整での証明 |
|---|---|---|
| 大学・大学院・短大・高等専門学校 | 対象 | 学生証の提示のみでよい |
| 高等学校(定時制・通信制含む) | 対象 | 生徒手帳の提示のみでよい |
| 専修学校(認可専門学校) | 対象 | 学校発行の「勤労学生控除の対象校証明書」と「履修証明書」の添付が必須 |
| 職業訓練法人の認定職業訓練課程 | 対象 | 訓練施設発行の証明書の添付が必須 |
| 無認可のスクール・カルチャー教室 | 対象外 | — |
#### 【現場のリアル】専修学校の証明書を取り忘れて年末に慌てた話
専門学校(美容系の専修学校)に通いながらアパレル店でバイトをしていた学生の話です。11月にバイト先から「給与所得者の扶養控除等申告書」を渡され、勤労学生欄にチェックを入れて提出したところ、経理担当から「専修学校に通っている方は、学校発行の証明書を添付してもらう必要があります」と言われて初めて、大学生の友人たちとは提出物が違うことに気づいたそうです。
学校の事務窓口に証明書の発行を依頼したところ、発行までに2週間ほどかかると言われ、年末調整の締め切りぎりぎりになってようやく間に合ったといいます。本人は「大学の友達は学生証を見せるだけで終わったと聞いていたので、専門学校だけこんなに手間がかかるとは知らなかった。もっと早く動いていれば焦らずに済んだ」と振り返っていました。専修学校に通う学生は、証明書の発行に時間がかかることを見込んで、年末調整の書類が配られる前の段階で学校側に発行手続きを確認しておくと安心です。
2. 令和7年度税制改正、所得要件85万円と給与収入150万円への緩和
令和7年度税制改正で給与所得控除の最低保障額が55万円から65万円に、基礎控除が所得に応じて最大95万円に引き上げられた結果、勤労学生控除を使った場合の非課税ラインは給与収入150万円前後まで広がりました。
2-1. 給与所得控除65万円+基礎控除+勤労学生控除27万円の非課税計算
勤労学生控除を使った場合に本人の所得税がゼロになる仕組みは、給与所得控除、基礎控除、勤労学生控除という3つの控除の合計額が課税所得を上回るかどうかで決まります。
【国税庁の公式見解・1次情報】
国税庁「令和7年度税制改正による所得税の基礎控除の見直し等について」では、次のように定められています。
『給与所得控除については、55万円の最低保障額が65万円に引き上げられました』『基礎控除は、合計所得金額132万円以下の場合は95万円(改正前:48万円)』。いずれも令和7年分以後の所得税から適用されます。
出典:国税庁「令和7年度税制改正による所得税の基礎控除の見直し等について」 https://www.nta.go.jp/users/gensen/2025kiso/index.htm
| 控除の種類 | 改正前 | 令和7年度税制改正後 |
|---|---|---|
| 給与所得控除(最低保障) | 55万円 | 65万円 |
| 基礎控除(合計所得132万円以下の学生の場合) | 48万円 | 95万円 |
| 勤労学生控除 | 27万円 | 27万円(変更なし) |
| 勤労学生控除の所得要件 | 合計所得75万円以下(給与収入130万円以下) | 合計所得85万円以下(給与収入150万円以下) |
2-2. 勤労学生控除を使わなくても160万円まで非課税になる逆転現象
給与所得控除と基礎控除だけで、勤労学生控除を使わない学生でも給与収入160万円程度までは所得税がかからないケースが生じており、勤労学生控除自体の非課税ライン(給与収入150万円)と重なる、あるいは逆転する現象が起きています。
これは、基礎控除が合計所得132万円以下の人について95万円に引き上げられたことが大きく影響しています。勤労学生控除の資格を得られる給与収入150万円以下の範囲は、この基礎控除95万円が適用される範囲にすっぽり収まるため、勤労学生控除を申告してもしなくても、結果として非課税になる学生が増えました。裏を返せば、勤労学生控除の恩恵が実際に効いてくるのは、給与収入が150万円を超えて160万円に近づく手前の、ごく狭い範囲に限られるということです。年末調整の書類に「勤労学生」欄があるからといって、必ず得をするとは限らない点は、正しく理解しておく必要があります。
#### 【現場のリアル】令和7年度改正を知らず旧基準103万円で我慢してシフトを削った話
大学2年生で、先輩から「バイト代は103万円を超えると税金の話がややこしくなるから気をつけろ」と言われ続けてきたという学生の話です。11月の時点で年収が98万円に達していたため、念のため12月のシフトを大きく減らそうとしていたところ、たまたま大学の学生課で奨学金の相談をした際に、職員から「所得税の非課税の壁は今の制度だと130万円や150万円まで広がっていますよ」と教えられ、自分が古い情報のまま行動していたことに気づいたそうです。
本人は「103万円という数字だけがずっと頭に残っていて、税制が変わっていることを知らなかった。知らないまま12月のシフトを削っていたら、稼げたはずのお金を無駄に諦めるところだった」と話していました。結局12月も通常通りシフトに入り、年収を118万円まで伸ばすことができたといいます。SNSや先輩から聞いた情報が古いままアップデートされずに広まっているケースは多く、年末にシフトを決める前に、その年の最新の非課税ラインを自分で確認することの重要性がよく分かる例です。
3. 年末調整、扶養控除等申告書の書き方と添付書類

勤労学生控除を受けるには、年末調整で「給与所得者の扶養控除等申告書」の「勤労学生」欄にチェックを入れ、学校名・入学年月日・所得の見積額を記入する必要があります。
3-1. 「勤労学生」欄への記入と証明書添付
申告書の「障害者又は勤労学生」の内容欄に、通っている学校名、入学年月日、その年の所得の見積額を記入します。専修学校や各種学校に通う学生は、これに加えて学校発行の「勤労学生控除の対象校証明書」および「履修証明書」の添付が必要です。年末調整のタイミングで提出し忘れた場合は、翌年に自分で確定申告をすることで控除を受けられます。
#### 【現場のリアル】勤労学生欄にチェックを入れ忘れて年明けに慌てた話
コンビニでアルバイトをしながら大学に通っていた学生の話です。11月にバイト先から扶養控除等申告書を渡された際、勤労学生控除という言葉自体を知らず、特に何も記入せずに提出してしまったそうです。年が明けて源泉徴収票を確認したところ、月々の給料からそこそこの所得税が天引きされていたことに気づき、友人に相談したところ「勤労学生控除を申告していれば、その分は戻ってきたはずだよ」と言われて初めて自分が損をしていたことを知ったといいます。
本人は「勤労学生という言葉の欄があることすら見た記憶がなかった。バイト先も特に説明してくれなかったので、自分で調べない限り気づけない仕組みだと思った」と話していました。年末調整に間に合わなかった場合でも、確定申告をすれば天引きされすぎた所得税の還付を受けられるため、税務署や国税庁の確定申告書等作成コーナーで手続きをして事なきを得たそうです。年末調整の書類は、内容を理解しないまま空欄で出すと、本来受けられる控除を取りこぼす可能性があるという典型的な例です。
4. 本人の税金がゼロでも親の扶養控除が崩れるリスク
学生本人の所得税がゼロになっても、本人の年収が親の扶養控除の所得要件を超えると、親が受けている扶養控除が減額または消滅し、親の税金が増えるという世帯全体でのトラブルが毎年起きています。
4-1. 特定扶養親族(19〜22歳)63万円、123万円超は段階消滅に緩和
19歳以上23歳未満の子を持つ親が受けられる特定扶養親族の控除額は所得税63万円ですが、令和7年度税制改正でこの控除が全額消滅する崖のような仕組みは解消され、子の年収が123万円を超えても188万円以下であれば「特定親族特別控除」により段階的に減っていく仕組みに変わりました。
【国税庁の公式見解・1次情報】
国税庁 タックスアンサー「No.1177 特定親族特別控除」では、次のように定められています。
『特定親族特別控除とは、居住者が生計を一にする年齢19歳以上23歳未満の親族等で、合計所得金額が58万円を超え123万円以下である人(特定親族)を有する場合に、その居住者のその年分の総所得金額等から、その特定親族1人につき、その特定親族の合計所得金額に応じて最高63万円を控除するものです』
出典:国税庁 タックスアンサー No.1177「特定親族特別控除」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1177.htm
4-2. 一般扶養親族(16〜18歳の高校生)38万円、給与123万円以下に緩和
16歳以上19歳未満の高校生を持つ親が受けられる一般の控除対象扶養親族の控除額は所得税38万円で、令和7年度税制改正により所得要件が合計所得58万円以下(給与収入123万円以下)に引き上げられました。ただしこちらは特定親族特別控除のような段階的な緩和措置がなく、123万円を1円でも超えると控除が全額消滅する崖のような構造が今も残っています。
【国税庁の公式見解・1次情報】
国税庁 タックスアンサー「No.1180 扶養控除」では、次のように定められています。
『扶養控除の対象となる扶養親族とは、その年12月31日現在の年齢が16歳以上の人で、配偶者以外の親族であること、納税者と生計を一にしていること、年間の合計所得金額が58万円以下であることなどの要件を満たす人をいいます。控除額は一般の控除対象扶養親族が38万円、特定扶養親族(19歳以上23歳未満の人)が63万円です』
出典:国税庁「No.1180 扶養控除」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1180.htm
| 扶養親族の区分 | 対象年齢 | 控除額(所得税) | 123万円超のときの扱い |
|---|---|---|---|
| 特定扶養親族(大学生年代) | 19歳以上23歳未満 | 63万円 | 188万円以下まで段階的に減額(特定親族特別控除) |
| 一般の控除対象扶養親族(高校生) | 16歳以上19歳未満 | 38万円 | 123万円超で全額消滅(段階緩和なし) |
学生本人が勤労学生控除で自分の所得税をゼロにできたとしても、年収が123万円を超えていれば、高校生の場合は親の控除が即座に全額なくなり、大学生年代の場合でも188万円までは控除が目減りし続けます。本人の非課税と親の扶養控除は、まったく別の基準で判定されるという点を混同しないことが重要です。
#### 【現場のリアル】親の特定親族特別控除の段階控除を知らず必要以上に心配した話
大学3年生の子を持つ親の話です。子どものアルバイト代が年収130万円を超えそうだと知り、以前ネットで見た「103万円を1円でも超えたら扶養控除が全額消える」という古い情報だけを覚えていたため、控除がまるごとなくなって家計への打撃が大きいのではないかとかなり心配していたそうです。子ども本人にシフトを減らすよう強く言おうとしたところ、子どもが大学の窓口で聞いてきた話として「今は123万円を超えてもいきなりゼロにはならず、188万円まで少しずつ減っていくだけらしい」と説明し、親子で一緒に国税庁のページを確認したといいます。
実際に確認したところ、子どもの年収は135万円程度になる見込みで、特定親族特別控除により控除額は63万円から数万円減る程度で済むことが分かり、親は「ゼロになると思い込んで本気で叱る準備までしていたのに、実際はそこまで大きな影響ではなかった。古い知識のまま焦って子どもに当たらなくて良かった」と話していました。制度が変わったタイミングでは、旧ルールの記憶のまま必要以上に心配したり、逆に安心しすぎたりする家庭がどちらも起こりやすいため、心配になった時点で国税庁の一次情報を確認する習慣が欠かせません。
5. 住民税は所得税と別基準、非課税上限134万円

住民税は基礎控除が43万円で据え置かれているため、勤労学生控除(住民税26万円)を使っても、給与収入134万円が非課税になる上限という所得税とは異なるラインが生まれています。
| 税目 | 給与所得控除 | 基礎控除 | 勤労学生控除 | 非課税になる給与収入の上限 |
|---|---|---|---|---|
| 所得税 | 65万円 | 95万円(合計所得132万円以下の場合) | 27万円 | 150万円前後(勤労学生控除の資格上限) |
| 住民税 | 65万円 | 43万円(据え置き) | 26万円 | 134万円 |
所得税では非課税でも住民税では均等割や所得割がわずかに発生するケースがあるのは、この基礎控除の据え置きが原因です。年末調整で勤労学生控除の申告をしていても、翌年5月頃に届く住民税決定通知書で数千円程度の税額が記載されていることがありますが、これは記載ミスではなく、所得税と住民税で非課税ラインの設計が異なることによるものです。
6. よくある質問
Q1. 専修学校に通っているが証明書が間に合わない場合はどうすればよいですか
年末調整に証明書が間に合わない場合は、年末調整では勤労学生控除を適用せずに一旦提出し、証明書が揃った時点で確定申告をすることで控除を受けられます。証明書の発行には時間がかかることが多いため、年末調整の書類が配られる前の段階で学校に発行を依頼しておくと確実です。
Q2. 株式投資やネット副業の利益がある場合、勤労学生控除は使えなくなりますか
勤労に基づく所得以外の所得(株式の配当所得やネット副業などの雑所得)が10万円を超えると、給与収入が150万円以下であっても勤労学生控除の対象外になります。給与以外の所得がある学生は、その合計額が10万円以下に収まっているかどうかを別途確認する必要があります。
Q3. 勤労学生控除と親の扶養控除、どちらを優先して考えるべきですか
本人の税金だけを考えるなら勤労学生控除の資格ライン(給与収入150万円前後)を意識すればよいですが、世帯全体の手取りを最大化したいのであれば、親の扶養控除が消滅・減額し始める給与収入123万円のラインの方が優先度が高くなります。本人の所得税がゼロでも、親の控除が減れば世帯全体では増税になるため、家族で年収の着地見込みを共有しておくことが欠かせません。
Q4. 高校生でも勤労学生控除は使えますか
高校生(定時制・通信制含む)も学校教育法に規定する学校の生徒に該当するため、給与収入150万円前後までの所得要件を満たせば勤労学生控除の対象になります。ただし親の扶養控除は、高校生の場合は一般の控除対象扶養親族(38万円)として給与収入123万円が崖のような上限になっており、大学生年代の特定扶養親族とは緩和のされ方が異なる点に注意してください。
まとめ
勤労学生控除は、給与所得があり、合計所得金額が一定額以下で、学校教育法などに定める学校の学生・生徒であることの3要件を満たす人が受けられる27万円の所得控除です。令和7年度税制改正により所得要件が合計所得75万円以下から85万円以下に引き上げられ、給与収入だけで見た資格ラインは130万円前後から150万円前後に広がりました。同時に給与所得控除と基礎控除そのものが引き上げられた結果、勤労学生控除を使わなくても給与収入160万円程度まで所得税がかからないケースが生まれ、控除自体の存在意義が薄れつつある点は見落とされがちです。一方で親の扶養控除は本人の非課税とは別基準で判定され、高校生の子については給与収入123万円を超えた瞬間に控除が全額消滅し、大学生年代の子については188万円まで段階的に減っていく仕組みに変わっています。専修学校に通う学生は証明書の準備に時間がかかること、住民税は基礎控除が据え置きで所得税より非課税ラインが低いことも含め、本人の税金と親の税金を別々に確認することが、世帯全体で損をしないための一番の近道です。
年末調整や税金の手続きをスマートに解決したい方は、完全無料で使える「書けた年末調整」をご利用ください。