「高校生で初めてバイトを始めたけれど、バイト先から年末調整の紙を出せと言われた」
「高校生のバイト代が103万円を超えたら、親の税金や手取りはどうなるのか」
ファミレス、コンビニ、ファーストフード、スーパーなどでアルバイトをする高校生(16歳〜18歳)が、11月にバイト先から「給与所得者の扶養控除等申告書」を渡されて戸惑うケースは毎年後を絶ちません。高校生であっても、給与をもらっている以上はバイト先へこの書類を提出する必要があります。そして本人と家族全体の税負担を左右する最大の分岐点が、以前よく言われた「年収103万円の壁」です。ただしこの数字は令和7年度の税制改正で動いています。給与所得控除の最低保障額が55万円から65万円に、扶養親族の所得要件が合計所得48万円以下から58万円以下に、それぞれ令和7年分の所得税から引き上げられたため、現在の防衛ラインは「123万円」です。年間のバイト代が123万円を超えると、親が受けていた扶養控除(一般の控除対象扶養親族、38万円)が全額消滅し、親の税金が年間で数万円単位で増えます。
この記事では、高校生の年末調整書類の位置づけから、令和7年度税制改正後の123万円の正確な計算ルール、交通費の非課税の扱い、親の税金への影響シミュレーションまでを、国税庁のタックスアンサーに基づいて整理しました。
1. 高校生バイトも年末調整書類の提出が必須、123万円が防衛ライン

高校生のアルバイトであっても給与所得者である以上、バイト先に「給与所得者の扶養控除等申告書」を提出する義務があり、令和7年度税制改正後は年間123万円が親の扶養控除を守れるかどうかの分岐点になります。
1-1. なぜ提出が必須なのか、出さないと「乙欄」で手取りが減る
| 提出した場合 | 提出しなかった場合 |
|---|---|
| 甲欄(通常税率)が適用され、扶養親族の数に応じた税額が源泉徴収される。年末調整で払いすぎた分が還付される | 乙欄(高い税率)が自動適用され、年末調整そのものを受けられなくなる |
【国税庁の公式見解・1次情報】
国税庁「A2-1 給与所得者の扶養控除等の(異動)申告」では、次のように説明されています。
『給与の支払を受ける者は、扶養控除等の対象者となるかどうかにかかわらず、この申告書を提出しなければなりません。提出期限は、その年最初に給与の支払を受ける日の前日までです』
出典:国税庁「A2-1 給与所得者の扶養控除等の(異動)申告」 https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/gensen/annai/1648_01.htm
高校生でバイト代が少なく所得税がかからない見込みであっても、この申告書自体は提出しておいたほうが安全です。提出していれば甲欄が適用され、月々の天引き額が少なく済むためです。
#### 【現場のリアル】初めての年末調整用紙を前に固まったコンビニバイトの話
高校2年生になって初めてコンビニでアルバイトを始めた生徒の話です。11月のシフトに入った日、店長から「これ書いて来週までに出しておいて」と一枚の紙を渡されました。タイトルには「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」と書かれており、見慣れない漢字の羅列と、マイナンバーや住所を記入する欄の多さに面食らって、その場で固まってしまったそうです。
家に持ち帰って親に見せたところ、親も「学生バイトなのにこんな本格的な書類が来るのか」と驚き、結局ネットで書き方を調べながら二人で1時間近くかけて記入したといいます。本人いわく「年末調整という言葉自体、学校でも家でも教わったことがなかったので、何のための紙なのか説明もなく渡されるとただの脅しの紙に見えた」とのことでした。この生徒のように、提出そのものは義務であっても、何のための書類かを店側が説明してくれるとは限らないため、初めてバイトを始める段階で「123万円」という数字とセットで仕組みを知っておくと、書類を渡された瞬間の戸惑いはかなり減ります。
2. 年収123万円の壁、金額ごとの本人と親への影響一覧
年収が123万円以下なら本人の所得税は0円で親の扶養控除も満額適用されますが、123万円を1円でも超えると親の扶養控除が全額消滅し、親の税金が増えます。
123万円という金額は、給与所得控除65万円と基礎控除58万円を合計した非課税枠から導かれる数字です。この2つの控除額は令和7年度の税制改正で引き上げられたもので、改正前はそれぞれ55万円・48万円でした。国税庁「No.1180 扶養控除」では、扶養親族の要件として「年間の合計所得金額が58万円以下であること」が定められており、給与収入のみの場合はこれが給与収入123万円以下という基準に対応します。
【国税庁の公式見解・1次情報】
国税庁「令和7年度税制改正による所得税の基礎控除の見直し等について」では、次のように定められています。
『給与所得控除については、55万円の最低保障額が65万円に引き上げられました。この改正は、令和7年12月1日に施行され、令和7年分以後の所得税について適用されます』
出典:国税庁「令和7年度税制改正による所得税の基礎控除の見直し等について」 https://www.nta.go.jp/users/gensen/2025kiso/index.htm
| 年間のバイト代 | 本人の所得税 | 本人の住民税 | 親が受けられる扶養控除 |
|---|---|---|---|
| 110万円以下 | 0円 | 0円 | 満額(所得税38万円・住民税33万円) |
| 110万円超〜123万円以下 | 0円 | 数千円程度 | 満額(所得税38万円・住民税33万円) |
| 123万円超 | 課税される | 課税される | 0円(全額消滅) |
住民税は非課税になる年収ラインが所得税より低く、単身者ではおおむね110万円が目安です(改正前は100万円でした)。123万円までの間に本人の住民税だけがわずかに発生する期間があるのはこのためです。控除の金額自体(所得税38万円・住民税33万円)は改正の前後で変わっておらず、変わったのはこの控除が適用される年収の上限だけです。
#### 【現場のリアル】123万円をたった1万円オーバーして親に指摘された話
高校3年生が、部活を引退した秋以降にシフトを増やしたところ、年間のバイト代が124万円になってしまった話です。本人としては「123万円という数字は聞いていたが、124万円くらいなら誤差の範囲だろう」という軽い認識だったそうです。ところが年明けに親の会社から届いた住民税の通知を見た親が、扶養控除の欄が去年と変わっていることに気づき、「なんで扶養控除がゼロになっているのか」と本人に確認したところ、初めて124万円という数字の重みを知ることになりました。
親は「たった1万円多く稼いだだけで、こっちの税金が何万円も増えるとは思わなかった」と困惑し、本人も「1万円オーバーしたら親の扶養控除がまるごと消えるなんて、段階的に減っていくものだと思い込んでいた」と振り返っていました。123万円の壁は、越えた分に応じて少しずつ影響が出る仕組みではなく、1円でも超えた瞬間に親の控除が全額なくなる崖のような制度だという点が、実際に痛い目を見るまで伝わりにくい部分です。
3. 親の扶養控除38万円が消滅した場合の増税額シミュレーション

高校生の子どもの年収が123万円を2万円超えて125万円になった場合、親(年収600万円・所得税率20%と仮定)の税負担は年間で約109,000円増えます。
親が受けていた扶養控除が消えることで増える税額は、所得税と住民税それぞれで別々に計算する必要があります。
| 消滅する控除 | 控除額 | 税率 | 増税額 |
|---|---|---|---|
| 所得税の扶養控除 | 38万円 | 20% | 約76,000円 |
| 住民税の扶養控除 | 33万円 | 10% | 約33,000円 |
| 合計 | — | — | 約109,000円 |
子どもが2万円多く稼いだ結果、世帯全体では親の手取りが年間約109,000円減ることになります。子どもの取り分が2万円増えても、親の負担増がそれを大きく上回るという逆転現象が起きる点が、この壁の最も注意すべき性質です。所得税率は親の年収帯によって変わるため、年収600万円より税率区分が高い世帯ではさらに増税額が大きくなり、逆に税率が低い世帯では増税額は小さくなります。
4. 通勤手当(交通費)は123万円の計算に含めない
バイト先から支給される通勤手当のうち、国税庁が定める非課税限度額の範囲内の金額は、123万円の判定に使う年収に含める必要がありません。
123万円の判定に使う年収は「給与の総支給額から非課税の通勤手当を除いた金額」です。交通費が非課税になるかどうか、非課税になる場合の上限額は、電車・バスなどの交通機関を利用する場合と、マイカー・自転車で通勤する場合とで基準が異なります。
4-1. 電車・バス通勤者の非課税限度額
電車やバスなど交通機関を利用して通勤する場合、最も経済的かつ合理的な経路・方法による通勤定期券などの金額が、1か月あたり15万円までは非課税となります。
【国税庁の公式見解・1次情報】
国税庁 タックスアンサー「No.2582 電車・バス通勤者の通勤手当」では、次のように定められています。
『通勤のため交通機関を利用している人に支給する通勤手当のうち、1か月当たりの合理的な運賃等の額(最も経済的かつ合理的な経路および方法で通勤した場合の通勤定期券などの金額)が非課税となる。ただし、その金額が1か月当たり15万円を超える場合には、15万円が非課税となる限度額となる』
出典:国税庁 タックスアンサー No.2582「電車・バス通勤者の通勤手当」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2582.htm
高校生のバイト代で月15万円を超える通勤手当が支給されるケースはほぼ想定されないため、実務上は「電車・バス通勤の交通費は全額非課税」と考えて差し支えありません。123万円の判定に使う年収は、給与総支給額からこの非課税の通勤手当を差し引いた金額です。
4-2. マイカー・自転車通勤者は片道の距離で上限が変わる
自転車や自動車で通勤する場合の非課税限度額は、片道の通勤距離に応じて段階的に定められており、交通機関利用者の一律15万円とは基準が異なります。
| 片道の通勤距離 | 1か月当たりの非課税限度額 |
|---|---|
| 2km未満 | 全額課税(非課税枠なし) |
| 2km以上10km未満 | 4,200円 |
| 10km以上15km未満 | 7,300円 |
| 15km以上25km未満 | 13,500円 |
| 25km以上35km未満 | 19,700円 |
| 35km以上 | 距離に応じて段階的に増加(上限あり) |
【国税庁の公式見解・1次情報】
国税庁 タックスアンサー「No.2585 マイカー・自転車通勤者の通勤手当」では、片道の通勤距離に応じた1か月当たりの非課税限度額が上記のように定められています。
出典:国税庁「No.2585 マイカー・自転車通勤者の通勤手当」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2585.htm
自転車通勤の高校生で片道2km未満の場合は非課税枠自体がなく、支給された交通費も含めて123万円の判定を行う必要がある点に注意してください。
#### 【現場のリアル】交通費を年収に含めて計算し、無駄にシフトを削った話
高校生がバス通学の定期代として毎月5,000円の交通費をバイト先からもらっていたケースです。年末が近づき「そろそろ123万円に近づいてきたかもしれない」と不安になった本人は、給与明細の「総支給額」の欄をそのまま合計し、そこに交通費も含めた金額で123万円を超えそうだと判断してしまいました。超過を避けるため、12月の忙しい時期に自分から店長にシフトを減らしてほしいと申し出て、稼げるはずだった数万円を諦めたそうです。
後日、親が源泉徴収票を確認したところ、支払金額の欄にはすでに交通費を除いた金額が記載されており、実際には123万円まで数万円の余裕があったことが判明しました。本人は「交通費も含めて全部『稼いだお金』だと思い込んでいたので、まさか交通費だけ計算から外していいなんて知らなかった」と悔しがっていたといいます。123万円の判定は給与明細の総支給額をそのまま見るのではなく、非課税の通勤手当を除いた金額で考える必要があるという、地味だが実害の出やすい落とし穴です。
5. 高校生は「一般の控除対象扶養親族」、控除額は38万円

16歳以上19歳未満の高校生は「一般の控除対象扶養親族」に区分され、親が受けられる控除額は所得税38万円、住民税33万円です。19歳以上23歳未満になると「特定扶養親族」に区分が変わり、控除額は所得税63万円に増額されます。
【国税庁の公式見解・1次情報】
国税庁 タックスアンサー「No.1180 扶養控除」では、次のように定められています。
『控除対象扶養親族とは、扶養親族のうち、その年12月31日現在の年齢が16歳以上の人をいいます』
また扶養親族の所得要件については『年間の合計所得金額が58万円以下であること』とされており、給与収入のみの場合はこれが給与収入123万円以下という基準に対応します。
出典:国税庁「No.1180 扶養控除」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1180.htm
5-1. 扶養親族の区分と控除額の一覧
| 区分 | 対象年齢(その年12月31日時点) | 所得税の控除額 | 住民税の控除額 |
|---|---|---|---|
| 一般の控除対象扶養親族(高校生はここ) | 16歳以上19歳未満 | 38万円 | 33万円 |
| 特定扶養親族(大学生年代) | 19歳以上23歳未満 | 63万円 | 45万円 |
| 老人扶養親族(同居老親等以外) | 70歳以上 | 48万円 | 38万円 |
| 同居老親等 | 70歳以上(同居) | 58万円 | 45万円 |
高校生の子どもがいる家庭で消滅するのは「38万円」の一般の控除対象扶養親族の枠であり、大学生の子どもがいる家庭で消滅する「63万円」の特定扶養親族の枠とは金額も影響額も異なります。兄弟姉妹が複数いる家庭では、どの子がどちらの区分に当たるかを取り違えないよう確認しておく必要があります。
6. よくある質問
Q1. 高校生でも「勤労学生控除」を使って150万円まで稼げますか
本人の所得税は勤労学生控除を使うことで年収150万円近くまで0円に抑えられますが、親の扶養控除は年収123万円を超えた時点で消滅するため、本人と親の基準は別物として考える必要があります。勤労学生控除は本人の税負担だけを軽くする制度であり、親の扶養控除を守る効果はありません。
Q2. 複数のバイト先を掛け持ちしている場合の123万円はどう計算しますか
すべてのバイト先の給与を合算し、そこから非課税の通勤手当を除いた金額が123万円以内かどうかで判定します。1つのバイト先の収入だけを見て123万円以内だから大丈夫と判断すると、掛け持ち分を含めた合計で超えてしまうケースがあるため、年末が近づいたら全てのバイト先の給与明細を突き合わせて確認してください。
#### 【現場のリアル】掛け持ちバイトの合算を忘れて扶養から外れかけた高校生の話
平日は個人経営の学習塾で採点補助、週末はコンビニでレジ打ちという掛け持ちをしていた高校生の相談です。「それぞれのバイト先では123万円を超えていないから大丈夫」と思い込んでいたものの、2社分を合算すると年間130万円近くに達していたことが12月になって発覚しました。塾のバイト先は源泉徴収がほとんど発生しない小規模な事業所だったため、税金が引かれていないことが「稼ぎすぎていない証拠」だと勘違いしていたそうです。所得税の計算は勤務先ごとではなく、本人が1年間に得たすべての給与を合算して行うため、掛け持ちをしている高校生ほど、月ごとの給与明細を1冊のノートやスマホのメモにまとめて合計額を随時確認しておく必要があります。
Q3. 12月にもらった源泉徴収票はどこを確認すればよいですか
「支払金額」の欄が123万円以下になっているか、そして「源泉徴収税額」の欄が0円になっているかの2点を確認します。支払金額はすでに非課税の通勤手当を除いた金額で記載されています。源泉徴収税額の欄に0円以外の金額が入っている場合、年末調整で還付しきれなかった税金が残っている可能性があるため、確定申告をすれば戻ってくることがあります。
#### 【現場のリアル】源泉徴収税額の欄に数字が入っていて確定申告した高校生の話
夏休みだけ短期の引っ越し補助のアルバイトを掛け持ちした高校生の話です。年末調整をしていない短期バイト先の分だけ源泉徴収税額の欄に数千円の数字が残っており、そのままにしていれば払いすぎた税金が戻らないところでした。親が確定申告のやり方を一緒に調べ、税務署の確定申告会場で職員に教わりながら申告書を作成したところ、数千円ではありましたが無事に還付を受けられたそうです。源泉徴収票は「もらったらしまっておくだけの紙」ではなく、税額の欄に数字が入っているかどうかを毎年チェックする習慣をつけておくと、取り戻せるはずのお金を取りこぼさずに済みます。
まとめ
高校生のアルバイトであっても、バイト先へ「給与所得者の扶養控除等申告書」を提出する必要があります。年収123万円以下なら本人の所得税は0円で、親が受けられる扶養控除(一般の控除対象扶養親族、所得税38万円・住民税33万円)も満額のまま維持されます。123万円を1円でも超えると親の扶養控除は全額消滅し、親の税金は年間で数万円単位、条件によっては10万円前後増えることもあります。通勤手当は国税庁が定める非課税限度額の範囲内であれば123万円の計算から除外できるため、給与明細の総支給額をそのまま見て年収を判断しないよう注意してください。かつて「103万円の壁」と呼ばれていたラインは、令和7年度税制改正によって「123万円の壁」に変わっています。
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