【年末調整では絶対にできないこと一覧】医療費控除・住宅ローン1年目・ふるさと納税・雑損控除・初年度副業

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目次

「病院でたくさん治療費を払ったから、年末調整で医療費の領収書を出せば税金が戻ってくる?」

「マイホームを買った1年目だけど、会社の年末調整で住宅ローン控除の書類を出せばいいの?」

11月になると、会社から配られる年末調整の用紙を前にして、その年に支払った医療費やふるさと納税、新築マイホームの書類まで、あらゆる控除証明書を会社にまとめて出そうとする人が毎年一定数います。

しかし所得税法上、会社の年末調整で処理できる控除と、自分で税務署へ確定申告しなければ1円も反映されない控除は、はっきりと線引きされています。年末調整で会社が勝手にやってくれるはずだと思い込んで放置してしまうと、数万円から数十万円単位で受け取れるはずだった還付金をそのまま取りこぼすことになりかねません。

この記事では、会社の年末調整では処理できない控除の一覧から、年末調整と確定申告の正確な仕分け方、確定申告を行うべき時期、国税庁のタックスアンサーに基づく法的根拠まで、実際に窓口で起きたやり取りも交えて整理しました。

【現場のリアル】医療費の領収書を会社に出そうとして総務に突き返された話

ある会社の総務担当者から聞いた話です。年末調整の時期、経理事務未経験の若手社員が、家族の入院費や通院の領収書を封筒いっぱいに詰めて、扶養控除等申告書と一緒に総務の窓口に持ってきたことがあったそうです。本人は「今年は歯の治療と子どもの入院で結構お金がかかったので、これで税金が戻ってくるんですよね」と、むしろ得意げな様子だったといいます。ところが担当者が中身を確認して、「申し訳ないのですが、医療費の領収書は会社では扱えません。これは年明けにご自身で税務署に確定申告していただく書類です」と伝えると、本人は明らかに拍子抜けした顔をして「え、年末調整で終わりじゃないんですか」と聞き返してきたそうです。担当者いわく、こういう問い合わせは毎年必ず何件かあり、特に入社して初めて年末調整を経験する若手や、その年に初めて大きな医療費を払った人ほど、会社に出せば自動的に処理されると思い込んでいる傾向が強いとのことでした。結局その社員は領収書一式をいったん持ち帰り、源泉徴収票を受け取ったあとに自分で確定申告することになったといいます。


1. ひと目でわかる、年末調整でできることと絶対にできないことの完全仕分け表

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まず、あなたの手元にある控除証明書や領収書がどちらに該当するのか、全体マップで確認しましょう。年末調整の対象となる範囲については、国税庁「No.2662 年末調整のしかた」でも手続きの概要が示されています(出典:https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2662.htm)。

控除・手続きの名称会社の年末調整でできるか税務署への確定申告が必要か
基礎控除(全員一律)○ 年末調整で完結不要
配偶者控除・配偶者特別控除○ 年末調整で完結不要
子ども・親の扶養控除○ 年末調整で完結不要
障害者控除・ひとり親控除・寡婦控除○ 年末調整で完結不要
社会保険料控除(健康保険・厚生年金)○ 年末調整で完結不要
小規模企業共済等掛金控除(iDeCoなど)○ 年末調整で完結不要
生命保険料控除・地震保険料控除○ 年末調整で完結不要
住宅ローン控除(2年目以降)○ 年末調整で完結不要
医療費控除・セルフメディケーション税制× できない確定申告が必須
住宅ローン控除(1年目・初年度)× できない確定申告が必須
ふるさと納税・寄附金控除(ワンストップ特例を使わない場合)× できない確定申告が必須
雑損控除(災害・盗難・横領)× できない確定申告が必須
副業所得(原則20万円超)・株式口座間の損益通算× できない確定申告が必須
【会社の総務・経理に提出しても処理してもらえない書類】
・病院や薬局の「医療費の領収書」
・ふるさと納税の「寄附金受領証明書」(ワンストップ特例の申請書を除く)
・1年目のマイホームの「登記事項証明書」「売買契約書」「借入金の年末残高等証明書」
-> これらを会社に出しても、「会社では処理できないので税務署へ行ってください」と返却されます。

2. 年末調整で絶対にできない控除の詳細と、確定申告が必要な理由

なぜこれらの控除は会社の年末調整で取り扱えないのか。国税庁のタックスアンサーに基づいて、一つずつ確認していきます。

医療費控除・セルフメディケーション税制

家族全員の年間医療費が一定額を超えた場合に使える控除です。

【国税庁の公式見解・1次情報】
国税庁「No.1120 医療費を支払ったとき(医療費控除)」では、その年の1月1日から12月31日までの間に、自己または自己と生計を一にする配偶者やその他の親族のために支払った医療費が一定額を超えるときは、その医療費を基に計算した金額の所得控除を受けられるとされています。控除額は「実際に支払った医療費の合計額から保険金などで補てんされる金額を差し引き、さらに10万円(その年の総所得金額等が200万円未満の人は総所得金額等の5パーセント)を差し引いた金額」で計算され、控除の上限は200万円です。この控除の適用を受けるためには確定申告書を提出する必要があると明記されており、年末調整で処理できる旨の記載はありません。
出典:国税庁「No.1120 医療費を支払ったとき(医療費控除)」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1120.htm

家族の病歴や通院履歴が分かってしまう領収書を会社の総務に見せることになるため、プライバシーの観点からも、医療費控除は税務署への確定申告でのみ処理する仕組みになっています。

住宅ローン控除の1年目(初年度)

マイホームを新築・購入・増改築した最初の年は、必ず確定申告が必要です。

【国税庁の公式見解・1次情報】
国税庁「No.1211-1 住宅の新築等をし、令和4年以降に居住の用に供した場合(住宅借入金等特別控除)」では、控除を受ける最初の年分については、確定申告書に「(特定増改築等)住宅借入金等特別控除額の計算明細書」や「住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書」など所定の書類を添付して税務署に提出する必要があるとされています。控除額は、住宅借入金等の年末残高(取得対価等のうち少ない方の金額)に0.7パーセントを乗じた金額です。一方で2年目以降については、給与所得者は年末調整でこの特別控除の適用を受けることができるとも記載されており、税務署から送付される「年末調整のための住宅借入金等特別控除証明書兼給与所得者の住宅借入金等特別控除申告書」と「住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書」を勤務先に提出すればよいとされています。
出典:国税庁「No.1211-1 住宅の新築等をし、令和4年以降に居住の用に供した場合(住宅借入金等特別控除)」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1211-1.htm

つまり住宅ローン控除は「1年目だけ税務署、2年目以降は会社」という、控除の中でも珍しい二段構えの手続きになっています。1年目に確定申告を済ませておかないと、2年目以降も年末調整で控除を受けることができません。

【現場のリアル】マイホーム1年目、年末調整だけで終わったと思い込んで還付を逃しかけた話

新築の戸建てを購入した会社員の方から聞いた話です。引っ越しと入居準備でばたばたしていたその年の11月、いつも通り会社から配られた年末調整の用紙に、扶養控除や生命保険料控除の欄だけを記入して提出したそうです。住宅ローンの書類は不動産会社から渡された分厚いファイルに入ったままで、本人は「住宅ローン控除の書類は不動産屋さんからもらった気がするけど、年末調整の封筒には特に何も指示がなかったから、多分自動で計算されるんだろう」と思い込んでいたといいます。ところが年明け、同じくマイホームを購入した同僚と雑談していたときに「1年目は確定申告しないと控除受けられないよ、知らなかった?」と言われて青ざめ、慌てて源泉徴収票と借入金の年末残高証明書を引っ張り出して、期限ぎりぎりで税務署の窓口に駆け込んだとのことでした。本人いわく「不動産会社の営業さんは住宅ローン控除がお得だという説明はしてくれたけど、初年度は自分で確定申告しないといけないという説明はさらっとしか聞いた記憶がなかった」とのことで、数十万円単位の還付を危うく逃すところだったと振り返っていました。

ふるさと納税・寄附金控除

国や自治体、認定NPO法人などへの寄付金は、原則として確定申告での精算が必要です。

【国税庁の公式見解・1次情報】
国税庁「No.1150 一定の寄附金を支払ったとき(寄附金控除)」では、寄附金控除の額は「その年に支出した特定寄附金の額の合計額」と「その年の総所得金額等の40パーセント相当額」のいずれか低い金額から2,000円を差し引いた金額とされています。また国税庁「No.1155 ふるさと納税(寄附金控除)」では、確定申告が不要な給与所得者がふるさと納税を行った場合、寄附先が5団体以内であれば、ふるさと納税先の自治体に申請することで確定申告をせずに控除を受けられる「ワンストップ特例制度」が案内されています。逆に、寄附先が6自治体以上になった場合や、医療費控除など他の理由で確定申告を行う場合は、ふるさと納税の金額も含めて確定申告書に記載する必要があるとされています。
出典:国税庁「No.1150 一定の寄附金を支払ったとき(寄附金控除)」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1150.htm
出典:国税庁「No.1155 ふるさと納税(寄附金控除)」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1155.htm

ワンストップ特例を使わずに寄附した人、6自治体以上に寄附した人、あるいは他の理由で確定申告をする人は、会社の年末調整ではなく確定申告での処理が必要になります。

【現場のリアル】ふるさと納税の証明書を年末調整の封筒に入れてしまった話

経理事務を担当している方から聞いた話です。ある社員が、ふるさと納税の返礼品と一緒に届いた寄附金受領証明書を、年末調整の扶養控除等申告書と保険料控除申告書が入った封筒にそのまま一緒に入れて提出してきたことがあったそうです。担当者が中身を確認すると、寄附金受領証明書が4枚、ワンストップ特例の申請書ではなく寄附金の受領証明書だけがまとまって入っていて、「これはワンストップ特例の申請はもう自治体に送られたものですか、それともこれから会社で処理してほしいということですか」と本人に確認したところ、「よく分からないけどふるさと納税は年末調整でやるものだと思っていたので、とりあえず一緒に出しました」という答えが返ってきたといいます。担当者が「ふるさと納税は会社では処理できないので、ワンストップ特例の申請書を寄附先の自治体に直接送るか、それをしていない場合は確定申告で控除を受けることになります」と説明すると、本人はワンストップ特例の申請書自体を提出し忘れていたことにその場で気づき、寄附先が5自治体以内だったこともあって、結局年明けに確定申告で処理することになったとのことでした。

雑損控除(災害・盗難・横領の損害)

地震、台風、火災、空き巣などの被害を受けた場合の控除です。

【国税庁の公式見解・1次情報】
国税庁「No.1110 災害や盗難などで資産に損害を受けたとき(雑損控除)」では、対象となる損害の原因を、震災・風水害・冷害・雪害・落雷などの自然現象による災害、火災・火薬類の爆発などの人為による異常な災害、害虫などの生物による異常な災害、盗難、横領に限定しています(詐欺や恐喝による損失は対象外です)。控除額は「(損害金額+災害等関連支出の金額-保険金等の額)-総所得金額等×10パーセント」と「(災害関連支出の金額-保険金等の額)-5万円」のいずれか多い方の金額で計算します。適用を受けるには、確定申告書に雑損控除に関する事項を記載し、災害等に関連したやむを得ない支出の金額を証する書類を添付または提示する必要があるとされています。
出典:国税庁「No.1110 災害や盗難などで資産に損害を受けたとき(雑損控除)」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1110.htm

損害額の計算や証拠書類の確認が複雑になるため、雑損控除は会社の年末調整の枠組みには含まれておらず、税務署での確定申告のみで受け付けられます。

副業所得・不動産所得・暗号資産の利益

会社の給与以外で得た所得は、給与計算とは切り離して申告します。

【国税庁の公式見解・1次情報】
国税庁「No.1900 給与所得者で確定申告が必要な人」では、給与等の収入金額が2,000万円以下の給与所得者で、1か所から給与の支払を受けており、その給与について源泉徴収や年末調整が行われる場合、給与所得および退職所得以外の所得金額の合計額が20万円以下であるときは、原則として確定申告を要しないとされています。ただし、これは確定申告を要しない場合の規定であり、医療費控除の適用を受けるための還付申告など、他の理由で確定申告を行う場合には、20万円以下の副業所得もあわせて申告しなければならない点が明記されています。
出典:国税庁「No.1900 給与所得者で確定申告が必要な人」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1900_qa.htm

つまり副業所得が20万円以下だから申告不要と思っていても、医療費控除やふるさと納税の確定申告を別途行う場合は、その副業所得も一緒に申告しなければならないという点が見落とされがちです。

【現場のリアル】副業20万円ルールを盾に申告をやめようとしてヒヤリとした話

会社員の傍らでライティングの副業をしている方から聞いた話です。その年、住宅ローン控除の1年目にあたり確定申告が必要な年だったのですが、本人は「副業の所得は20万円以下だから申告しなくていいはずだ」と思い込み、住宅ローン控除の申告書に副業の収入を一切記載せずに税務署の窓口に提出しようとしたそうです。窓口の職員から「住宅ローン控除の還付を受けるための確定申告をされる場合は、20万円以下の副業所得も含めてすべて申告していただく必要がありますよ」と指摘され、本人は「20万円以下は申告しなくていいと聞いていたので、まさか含めないといけないとは思わなかった」とかなり驚いた様子だったといいます。結局その場で副業の収入と経費をメモしてきたレシートを基に金額を計算し直し、申告書を書き直すことになったそうです。20万円ルールはあくまで「確定申告をしない場合」の話であって、他の理由で申告書を出すなら副業所得もまとめて記載しなければならないという条件付きのルールだと知らなかったための行き違いでした。


3. 年末調整と確定申告の年間スケジュール

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サラリーマンが年間を通じて行うべき、税金手続きの大まかな流れです。確定申告の受付期間は原則として2月16日から3月15日まで(曜日の関係で数日前後することがあります)で、還付申告の場合はそれより前の1月から提出できます(出典:国税庁「所得税及び復興特別所得税の確定申告期間」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/qa/02.htm)。

【サラリーマンの年間税務カレンダー】

① 11月中旬:会社の年末調整会社でできる控除(保険・iDeCo・扶養・2年目
以降の住宅ローン等)を記入して提出
② 12月〜1月:源泉徴収票受取会社から「年末調整済みの源泉徴収票」を受領
医療費の領収書やふるさと納税証明書を集計
③ 2月16日〜3月15日ごろ
(還付申告なら1月から可能)
スマホやe-Taxで確定申告
医療費控除・1年目住宅ローン・寄付金などを
申告し、還付金を口座で受け取る

還付申告は確定申告の受付開始を待たずに、翌年の1月から提出できます。医療費控除や住宅ローン控除1年目のように還付が発生するケースは、混雑する2月中旬以降を待たずに早めに動いたほうが、税務署の窓口も空いていて手続きがスムーズです。


4. よくある質問

Q1. 年末調整を提出した後に、確定申告をしても大丈夫ですか。

問題ありません。むしろそれが正規の手順です。会社で年末調整を済ませた源泉徴収票をもとに、年明けに税務署へ確定申告を行えば、会社で受けた控除に加えて医療費控除などの追加還付が受けられます。

Q2. 確定申告をすると、会社の年末調整は無駄になりますか。

無駄にはなりません。年末調整で適用された生命保険料控除や扶養控除のデータは、そのまま確定申告書に引き継いで記載しますので、二度手間で控除が消えるようなことはありません。

Q3. 自分の控除が年末調整でできるのか、確定申告が必要なのか分からないときはどうすればいいですか。

まずは本記事1章の仕分け表で該当項目を確認してください。それでも判断がつかない場合は、控除証明書に記載された発行元(税務署、自治体、保険会社など)の性質から考えるのが早道です。会社の総務・経理担当者に直接聞く、または国税庁の電話相談センターや最寄りの税務署に問い合わせるのが確実です。

Q4. 確定申告はいつから始められますか。

還付を受けるための申告(還付申告)であれば、翌年の1月1日から提出可能です。通常の確定申告期間である2月16日から3月15日ごろを待つ必要はありません。医療費控除や住宅ローン控除1年目のように還付が発生するケースは、早めに準備を整えて1月中に提出してしまうのも一つの方法です。


5. 提出先を間違えた場合のトラブルと対処法

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年末調整の書類に医療費の領収書やふるさと納税の証明書を誤って一緒に提出してしまった場合の実務フローです。

【会社で返却されたときの対応手順】
1. 会社の人事・総務から「この書類は会社では処理できません」と一式が返却される。
2. 慌てずに、12月の給与明細と「源泉徴収票」を受け取るまで待つ。
3. 1月以降、返却された領収書と源泉徴収票を持って、e-Taxまたは書面で確定申告する。
-> 会社で受け付けてもらえなかった書類でも、確定申告すれば正規の手続きで控除を受けられます。

会社に書類を突き返されたこと自体は珍しくなく、総務・経理側もそのやり取りには慣れています。落ち込む必要はなく、返ってきた書類一式を年明けの確定申告用にそのまま保管しておけば十分です。


まとめ

税務のルールを正しく切り分けておけば、会社で受けられる控除と、自分で確定申告しなければならない控除を取りこぼさずに済みます。

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