「住宅ローン控除の計算をしたら控除額が30万円あったのに、所得税が15万円しかなくて半分余ってしまった…」
「所得税から引ききれなかった住宅ローン控除は捨てられちゃうの?住民税からいくら引いてくれるの?」
住宅ローン控除(税額控除)を受けているサラリーマンが、源泉徴収票を見ながら最も驚き、不安を感じるのが「所得税額よりも住宅ローン控除枠の方が大きくて、枠が引ききれずに余ってしまう問題」です。
安心してください。所得税から引ききれなかった住宅ローン控除の余り枠は、翌年度の「住民税(毎月の給料から天引きされる地方税)」から自動的に差し引かれます。
ただし、住民税から差し引ける金額には「前年の課税総所得金額等の5%(最高9万7,500円)」という法律上の上限リミットが設定されているため、無理に高額なローンを組むと「所得税からも住民税からも引ききれずに枠をドブに捨てる」という事態が発生します。
この記事では、住宅ローン控除が所得税から引ききれない仕組みから、住民税控除の上限計算式(最高9.75万円)、毎年6月に届く住民税決定通知書での確認手順、ふるさと納税やiDeCoとの併用ルール、そして年収別の実質手取りシミュレーションまで整理しました。
【現場のリアル】源泉徴収票を見て「還付金が思ったより少ない」と焦った話
新築マンションを購入して初めて住宅ローン控除の恩恵を受けるはずだった会社員の方から聞いた話です。不動産会社の営業から「年末調整で税金がごっそり戻ってきますよ」と説明を受けていたため、12月の給与明細を開いた瞬間に大きな還付を期待していたそうです。ところが実際に振り込まれた金額は思っていたより少なく、その場で「営業の説明と違う、控除額を計算し間違えたんじゃないか」と焦って会社の経理に問い合わせたといいます。経理担当者から「所得税から引ききれなかった分は、来年6月以降の住民税から少しずつ引かれる仕組みになっているので、今回の還付金だけがすべてではないですよ」と説明を受け、そこでようやく制度の全体像を理解できたとのことでした。住宅ローン控除は所得税と住民税の二段構えで還元される仕組みだと知らないまま12月の明細だけを見ると、この手の早とちりは誰にでも起こり得ます。
1. なぜ住宅ローン控除は「所得税から引ききれない」のか

住宅ローン控除は、税率を掛ける前の所得から差し引く「所得控除」とは違い、計算された税金そのものから直接マイナスする「税額控除」です。控除額そのものが所得税額を上回ることは珍しくなく、その場合に「引ききれない余り」が生じます。
【所得税から引ききれない具体例(年収500万円・住宅ローン残高4,000万円)】
・今年の住宅ローン控除枠(残高4,000万 × 0.7%):280,000円
・年収500万円の人の納めるべき所得税額 :140,000円
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-> 14万円の所得税から28万円を引くと、所得税は「0円」になり、140,000円の枠が余る
この控除額の計算式(借入金の年末残高等に0.7%を乗じる)は、国税庁のタックスアンサーで明示されています。
【国税庁の公式見解・1次情報】
国税庁「No.1211-1 住宅の新築等をし、令和4年以降に居住の用に供した場合(住宅借入金等特別控除)」では、住宅ローン控除の額は、居住の用に供した年以後の各年分の所得税額から、住宅借入金等の年末残高の合計額(取得対価等のうち少ない方の金額)に0.7%を乗じた金額を控除するものと定められています。
出典:国税庁「No.1211-1 住宅の新築等をし、令和4年以降に居住の用に供した場合(住宅借入金等特別控除)」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1211-1.htm
この余った14万円の枠が、翌年6月から翌々年5月までに支払う住民税へと自動でスライドします。
2. ひと目でわかる、住民税から控除される「上限額(9.75万円)」の計算式
住民税から控除される金額は、「所得税で引ききれなかった住宅ローン控除額」と「法律で決められた住民税側の上限額」のうち、いずれか小さい方の金額になります。この住民税側の仕組みを所管しているのは総務省です。
【総務省の公式見解・1次情報】
総務省「所得税から住宅ローン控除額を引ききれなかった方(新築・購入等で住宅ローンを組む方・組んでいる方へ)」のページでは、所得税から控除しきれなかった住宅ローン控除額について、翌年度の個人住民税から控除を受けられる仕組みが説明されています。控除限度額は、令和4年以降に入居した場合は前年の課税総所得金額等の5%(上限97,500円)、平成26年4月から令和3年12月までの特定取得等に該当する場合は7%(上限136,500円)とされ、この住民税控除については市区町村への別途申請は原則不要で、勤務先を通じた年末調整または確定申告の手続きの中で自動的に反映される仕組みになっています。
出典:総務省「所得税から住宅ローン控除額を引ききれなかった方」 https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_zeisei/czaisei/czaisei_seido/090929.html
| 入居した時期の区分 | 住民税の控除限度計算式 | 住民税の控除上限額 |
|---|---|---|
| 令和4年(2022年)以降に入居 | 前年の課税総所得金額等 × 5% | 最高 97,500円 / 年 |
| 平成26年4月〜令和3年末入居(消費税8%・10%の特定取得等) | 前年の課税総所得金額等 × 7% | 最高 136,500円 / 年 |
【住民税減税の実例シミュレーション(課税所得250万円・余り枠14万円の場合)】
・課税所得 × 5% = 250万円 × 5% = 125,000円
・法律上の上限額 = 97,500円
-> 小さい方である97,500円が翌年の住民税から減税される
(所得税14万円 + 住民税9.75万円 = 合計23万7,500円が実質の還元額)
3. 住民税から本当に引かれたか確認する方法(6月の住民税決定通知書)

「年末調整で申告したけれど、本当に翌年の住民税が安くなっているのか心配」という方は、毎年5月下旬から6月に会社から配られる「給与所得等に係る市民税・県民税 特別徴収税額の決定通知書」を確認しましょう。
### 住民税決定通知書のチェックポイント
- [ 税額控除額 ]または[ 摘要 ]欄を確認:
・摘要欄に「住宅借入金等特別税額控除額:97,500円」と印字されていれば、
- 毎月の給与天引きの住民税が約8,125円ずつ安くなっている
【現場のリアル】決定通知書の摘要欄がどこか分からず総務に聞いた話
住宅を購入して初めて住民税決定通知書を受け取った方から聞いた話です。6月に会社から封筒を渡され、開けてみたものの、細かい数字がびっしり並んだ表のどこに住宅ローン控除の結果が書いてあるのか見当がつかなかったといいます。とりあえず一枚ずつ眺めてみたものの「税額控除前所得割額」「税額控除額」といった漢字の羅列に気後れしてしまい、結局その場で総務の担当者のデスクまで通知書を持って行き、「これ、住宅ローン控除ちゃんと反映されてますか、どこを見ればいいですか」と直接聞いたそうです。担当者に摘要欄の「住宅借入金等特別税額控除額」という項目を指で示してもらい、そこに書かれた金額を見て初めて「ちゃんと引かれている」と安心できたとのことでした。通知書は毎年1回しか届かないため、どこに何が書いてあるか忘れてしまうのは自然なことで、分からなければ総務や経理に確認するのが結局いちばん早いという話でした。
4. ふるさと納税、iDeCoを併用したときの控除枠の食い合い
住宅ローン控除で所得税が0円になっている人が、ふるさと納税やiDeCoを行う際に気をつけたい点です。
【住宅ローン控除 × ふるさと納税 × iDeCoの併用ルール】
| ① ふるさと納税 | ワンストップ特例を使えば、寄附額から2,000円を引いた 全額が住民税から控除されるため、住宅ローン控除の枠 とは別枠で処理され、干渉しにくい |
|---|---|
| ② iDeCo(イデコ) | iDeCoの掛金で課税所得が減ると所得税額も下がるため、 住宅ローン控除が住民税の上限(9.75万円)で溢れる 可能性はあるが、世帯全体の手取りはプラスになる |
住宅ローン控除の枠が住民税側の上限で溢れてしまっている人がふるさと納税をする場合は、確定申告ではなくワンストップ特例制度を利用する方が、制度上のねじれを避けやすい選択です。
【現場のリアル】ふるさと納税の枠が溢れて損をしそうになった話
住宅ローン控除を使い始めた年に、例年通りの感覚でふるさと納税の上限額いっぱいまで寄附してしまった方の話です。翌年届いた住民税決定通知書を見ると、住宅ローン控除の住民税分がすでに上限の97,500円近くまで達していて、そこにふるさと納税の控除も重なった結果、控除の合計が住民税額そのものに対して大きくなりすぎ、一部の寄附金控除が住民税から引ききれずに終わってしまったといいます。本人は「去年までと同じ金額を寄附しただけなのに、なぜか自己負担が増えている気がする」と不安になり、自治体の税務課に電話で問い合わせたところ、「住宅ローン控除とふるさと納税の控除が同じ年の住民税に重なると、上限の計算が変わることがある」と説明を受けたそうです。結局大きな実害にはならなかったものの、住宅ローン控除を受けている年は、ふるさと納税のシミュレーションサイトの計算結果をそのまま鵜呑みにせず、控除の重なりを念頭に置いて少し余裕を持たせた金額に留めておくのが無難だと本人は振り返っていました。
5. よくある質問(Q&A)

Q1. 住民税から控除を受けるために、市区町村へ別の申請書を出す必要がありますか。
A. 一切不要です。会社の年末調整で提出した住宅ローン控除のデータが、勤務先からお住まいの市区町村へ自動的に連携され、役所側で計算されて住民税から差し引かれます。
Q2. 住宅ローン控除で所得税も住民税もゼロになった場合、余った控除枠を翌年に繰り越せますか。
A. 繰り越しはできません。その年の控除枠は、所得税と住民税それぞれの上限まで使い切った時点でその年のうちに精算され、余った分は翌年以降に持ち越せません。
6. 【年収別シミュレーション】所得税と住民税からそれぞれいくら引かれる
年収400万円、600万円、800万円のサラリーマンが、残高4,000万円(控除枠28万円)のローンを組んだ場合の控除配分です。
【ケース1:年収400万円(所得税 約8.5万円・住民税 約17.5万円)】
・所得税からの控除: 85,000円(所得税が0円になる)
・引ききれない余り:195,000円
・住民税からの控除: 97,500円(上限満額適用)
-> 合計控除額:182,500円(余った約9.7万円は使い切れず消滅)
【ケース2:年収600万円(所得税 約20万円・住民税 約30万円)】
・所得税からの控除:200,000円(所得税が0円になる)
・引ききれない余り: 80,000円
・住民税からの控除: 80,000円(余り枠全額を控除)
-> 合計控除額:280,000円(28万円全額を消化)
年収400万円のケースのように、控除枠に対して所得税と住民税を合わせても消化しきれない金額が出ると、その分はそのまま切り捨てになります。借入額を決める段階で、自分の年収からおおよその所得税額・住民税額を把握しておくと、こうした取りこぼしを避けやすくなります。
7. 「住宅ローン減税の枠余り」を防ぐマイホーム購入時の頭金戦略
年収に対して借入額が大きすぎると、所得税と住民税を合わせても控除枠を使い切れないことがあります。事前に年収別のおおよその所得税・住民税額を把握し、枠が余りにくい借入額を設計しておくこと、あるいは夫婦でペアローンを組んで控除枠を分散させることも、実務上よく使われる対策です。
まとめ:住民税からの自動控除の仕組みを理解して手取りを把握しよう
- 所得税から引ききれなかった住宅ローン控除は、翌年の住民税から自動的に控除される。
- 住民税の控除上限は、前年の課税総所得金額等の5%(最高97,500円、令和4年以降入居の場合)。
- 毎年6月に届く「住民税決定通知書」の税額控除欄・摘要欄で、実際に控除されているか確認できる。
- ふるさと納税はワンストップ特例を使えば住宅ローン控除との干渉を避けやすいが、枠が重なる年は上限の計算が変わることもあるので油断は禁物。
税金の仕組みを正しく把握しておけば、12月の給与明細と翌年6月の住民税決定通知書、それぞれで慌てずに済みます。
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