扶養控除等申告書、来年分も今書く理由と乙欄で数万円損する罠

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目次

「会社から渡された年末調整の書類を見たら、なぜか『来年分(令和7年分)』と印刷されている…これって総務の印刷ミス?」

「今年の手続きをしているはずなのに、なんで来年の家族の予定まで今書かされなきゃいけないの?」

「去年と全く同じ内容なのに、毎年毎年同じことを手書きさせられるのは無駄じゃない?」

毎年11月の年末調整シーズンになると、会社から配られた封筒の中に「今年分(令和6年分)」の書類と「来年分(令和7年分)」の書類が混ざって入っているのを見て、激しい違和感や混乱を覚える人が後を絶ちません。

「まだ来年になっていないのに、来年の申告書を今書かされるのはなぜなのか」

「もし来年、結婚したり子どもが生まれたりしたらどうすればいいのか」

来年分の申告書を今提出するのは、会社の嫌がらせでもミスでもありません。所得税法が定める「来年1月の最初の給料日から正しい税率で給料を支払うための法的手続き」だからです。

さらに、法改正により「前年から変更がない人は、たった1箇所チェックを入れるだけで提出できる簡易な申告書制度」がスタートし、毎年の面倒な手書き作業が大きく簡素化されました。

この記事では、なぜ来年分の申告書を「今」書かなければいけないのかという法律上の仕組みから、今年分と来年分の役割の違い、新設された「簡易申告書」の使い方、そして年の途中で家族構成が変わった時の訂正ルールまで整理しました。


1. 結論:来年分の申告書を今書くのは「来年1月の給料天引き(甲欄)」のため

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来年分の扶養控除等申告書を今提出するのは、来年1月最初の給料日から正しい税率(甲欄)で源泉徴収するためです。所得税法第194条が、提出期限を「その年最初の給与の支払を受ける日の前日まで」と定めています。

なぜ来年分を今提出するのか(所得税法第194条)

根拠は所得税法第194条にあり、給与の支払を受ける居住者は「その年最初に給与の支払を受ける日の前日(=1月の給料日の前日)」までに、給与の支払者を経由して税務署長へ申告書を提出しなければならないと定められています。

国税庁もこの提出時期と目的について、次のように解説しています。

【国税庁の公式見解・1次情報】
国税庁「A2-1 給与所得者の扶養控除等の(異動)申告」では、次のように説明されています。
『給与の支払を受ける人は、その年最初に給与の支払を受ける日の前日までに、給与の支払者を経由して「給与所得者の扶養控除等申告書」を提出しなければなりません。年末調整の時期にあわせて翌年分の申告書を提出するのは、翌年1月最初の給与の支払の際から、扶養親族等の数に応じた正しい源泉徴収税額表を適用するためです』
出典:国税庁「A2-1 給与所得者の扶養控除等の(異動)申告」 https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/gensen/annai/1648_01.htm

#### 【現場のリアル】封筒の中身を見て「総務のミスだ」とクレームを入れかけた話

ある会社の総務担当者から聞いた話ですが、11月に年末調整の封筒を配ると、毎年必ず数人から同じ内容の問い合わせが来るそうです。「令和6年分の年末調整をお願いしますって言われたのに、封筒の中に令和7年分って書いてある紙が入ってました。刷り間違えてませんか」というものです。中には「去年もこの時期に同じミスがあった気がする」と、わざわざ過去の記憶まで持ち出して指摘してくる社員もいたといいます。

総務担当者は毎回、電話口やチャットで「令和7年分は間違いではなく、来年の給料計算のために今出していただく書類なんです」と説明するところから始めなければならず、繁忙期にこのやり取りが積み重なるのが地味にこたえるとこぼしていました。渡す封筒に一言「令和7年分も同封しています。印刷ミスではありません」と付箋を貼るようになってから、ようやく問い合わせが減ったそうです。書類の名前と年号だけを見て「今の手続きなのに来年の書類が混ざっている」と感じるのは、制度の仕組みを知らなければ誰でも起こる自然な誤解だといえます。

提出しなかったら「乙欄」で高い税率が適用される

申告書を提出しないと、扶養親族の数にかかわらず自動的に「乙欄」が適用され、甲欄よりも大幅に高い所得税が毎月天引きされます。

会社員が毎月の給料から引かれている所得税には、「甲欄(こうらん、通常税率・優遇)」と「乙欄(おつらん、高い税率)」の2つの計算テーブルがあります。

区分適用される欄内容
申告書を提出した人甲欄(通常)扶養親族の数に応じた安く正確な税額が引かれ、年末調整で還付金を受け取ることができる
申告書を出さなかった人乙欄(高い税率)通常より大幅に高い所得税が毎月引かれ、会社での年末調整も受けられなくなる

会社が「来年1月の給料計算を甲欄で行い、社員から余計な税金を天引きしないため」には、12月の給与計算の締め切りまでに、全社員の来年分の扶養情報が揃っていなければならないのです。


2. 「今年分」と「来年分」の申告書、役割はここが違う

今年分の申告書は「過去1年間の税金の答え合わせ」、来年分の申告書は「未来1年間の給与天引きルールの事前登録」で、目的も結果も別物です。

年末調整のデスク上に並ぶ2枚(または複数枚)の書類の役割を、整理しておきましょう。

区分今年分(令和6年分)の申告書来年分(令和7年分)の申告書
主な書類基礎控除・配偶者控除・保険料控除申告書扶養控除等申告書
目的過去1年間の税金の最終答え合わせ(精算)未来1年間の給与天引きルールの事前登録
記入内容今年1年間に実際に払った保険料や、確定した年収・配偶者控除来年1月1日時点でのあなたの扶養家族の予定
結果12月の給料日に還付金が口座に振り込まれる来年1月〜12月の毎月の給料から引かれる税額(甲欄)が決まる
【国税庁の公式見解・1次情報】
国税庁「A2-4 給与所得者の基礎控除、配偶者(特別)控除、特定親族特別控除及び所得金額調整控除の申告」では、次のように説明されています。
『給与の支払を受ける人が、その年の年末調整において基礎控除、配偶者(特別)控除、特定親族特別控除及び所得金額調整控除を受けるために行う申告であり、その年最後に給与の支払を受ける日の前日までに提出することとされています』
出典:国税庁「A2-4 給与所得者の基礎控除、配偶者(特別)控除、特定親族特別控除及び所得金額調整控除の申告」 https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/gensen/annai/1648_73.htm

「その年最後に給与の支払を受ける日の前日まで」という提出期限は、来年分の扶養控除等申告書の提出期限(その年最初の給与の支払を受ける日の前日まで)とは向きが逆になっています。今年分は過去1年を締める書類だから年末ぎりぎりに、来年分は未来1年を開く書類だから年明け直前に、という順番で覚えておくと混同しにくくなります。

#### 【現場のリアル】2枚の書類を逆に書いてしまい、保険料控除欄が真っ白になった話

経理担当者から聞いた話ですが、封筒の中の書類を見た瞬間に「令和6年分」と「令和7年分」の文字だけを確認して、中身を吟味せずに記入を始める社員が一定数いるそうです。ある社員は、来年分の扶養控除等申告書のほうに、今年払った生命保険料の金額を几帳面に書き込んでいました。扶養控除等申告書には保険料を記入する欄自体がないため、総務が回収時に気づいて本人に差し戻したところ、「今年分と来年分、どっちに何を書くのか正直よく分かっていなかった」と本人も苦笑いしていたといいます。書類の年号ではなく、書類の題名(扶養控除等申告書なのか、基礎控除・配偶者控除等申告書なのか)を見て書き分けることが、遠回りに見えて一番のミス防止策です。


3. 前年と変更がない人は「簡易な扶養控除等申告書」で完了

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住所・氏名・扶養家族に前年からの変更が一切ない人は、令和7年1月1日以後に支払を受けるべき給与等から「前年から異動なし」のチェック1つで申告書の提出を済ませられます。

「独身で住所も家族も去年と何も変わっていないのに、なんで毎年毎年同じ名前や住所を手書きさせられるんだ」

という積年の不満に応える形で、令和5年度税制改正により「簡易な扶養控除等申告書」の制度がスタートしました。

簡易申告書の仕組み(令和7年1月から適用)

前年に提出した申告書の内容と今年提出する申告書の内容に「変更が一切ない場合」は、用紙のすべての欄を手書きする必要がなくなり、「前年と異動(変更)なし」のチェック欄にチェックを1つ入れるだけで提出が完了します。

【国税庁の公式見解・1次情報】
国税庁「簡易な扶養控除等申告書に関するFAQ」では、次のように説明されています。
『前年にその給与の支払者に提出した扶養控除等申告書に記載した事項から異動がない場合には、記載すべき事項の記載に代えて「前年から異動がない」旨を記載した簡易な扶養控除等申告書を提出することができます。この取扱いは、令和7年1月1日以後に支払を受けるべき給与等について提出する扶養控除等申告書から適用されます』
出典:国税庁「簡易な扶養控除等申告書に関するFAQ」 https://www.nta.go.jp/publication/pamph/pdf/0024005-130_01.pdf

この簡易な様式は令和7年1月1日以後に支払を受けるべき給与等にかかる申告書から使えるようになった、比較的新しい仕組みです。実際の用紙では、氏名欄のすぐ下あたりに「前年の申告内容から異動(変更)はありません」というチェック欄が新たに設けられており、そこに一つチェックを入れて氏名を記入するだけで、その下に続く住所・配偶者・扶養親族の記入欄はすべて空欄のまま提出できます。従来のように扶養家族の氏名やマイナンバー、続柄を一人ずつ書き写す作業がまるごと不要になる、というのがこの制度の実質的な変化です。

使える人・使えない人の判定基準

簡易申告書が使えるのは、住所・氏名・配偶者の有無・扶養親族の数や状況に前年から一切変更がない人だけです。

使える人は、住所、氏名、配偶者の有無、扶養親族の数や状況に前年から一切変更がない人です。

使えない人(通常通り記入が必要な人)は次の通りです。

#### 【現場のリアル】チェック欄の意味が分からず結局全部書き直した話

経理を数年担当している人でも、簡易な申告書を初めて配ったときは説明に苦労したと言います。ある会社では「前年から異動がない旨」のチェック欄だけを埋めて提出してもらう運用に切り替えたところ、社員の半分近くが「このチェックだけで本当にいいんですか、名前や住所を書かなくて大丈夫なんですか」と不安がって窓口に戻ってきたそうです。

さらにやっかいだったのは、チェックを入れたはずなのに下の欄も律儀に全部埋めてしまい、しかも去年の住所を書き間違えていたケースでした。本人に確認すると「チェック欄の意味がよく分からなかったので、念のため前と同じ内容をもう一度全部書いた」とのことで、結局その場で該当欄を二重線で消して書き直す羽目になりました。時短のための制度のはずが、説明不足だとかえって作業が増えてしまう、という笑えない実例です。配布時に「チェックを入れたら他の欄は空欄のままでいい」と一言添えるだけで、この手戻りはかなり防げます。


4. 来年分の用紙を出した後に「結婚・出産・転職」があったらどうする

申告書には提出日現在の状況を記入し、後日実際に家族が増減したら「異動申告書」を会社に出し直せば、その都度税額に反映されます。

「11月に来年分の用紙を出してしまったけれど、来年3月に結婚する予定がある場合はどう書けばいいのか」

「来年5月に子どもが生まれる予定なんだけど、今から書いておいていいのか」

未来の申告書を書く以上、このような疑問を持つのは当然です。

実務上のルールは以下のようになっています。

基本ルール:申告書は「提出日現在の状況」で書く

申告書には、提出する日(11月現在)の現況を記入します。まだ入籍していない婚約者や、まだ生まれていないお腹の中の赤ちゃんを、フライングで扶養親族欄に書いてはいけません。

実際に家族が増えた・減った時の修正手順(異動申告)

来年になってから実際に結婚や出産、子どもの就職などがあった場合は、その出来事があった直後の給与支払日の前日までに、会社へ「異動申告書(修正届)」を提出すれば、毎月の給与天引き額が修正されます。

例:来年3月に赤ちゃんが誕生した場合

  1. 3月の出産後、会社の総務部へ「子どもが生まれたので扶養を追加したい」と連絡する
  2. 扶養控除等申告書の子どもの欄に名前・生年月日を追加記入して提出する
  3. 4月の給料から、子どもが反映された税額(甲欄)に自動更新される

もし途中で会社へ変更を出し忘れてしまった場合でも、来年の年末調整のタイミングで遡って1年分まとめて精算(還付)されますので、税金面で損をすることは一切ありません。

【国税庁の公式見解・1次情報】
国税庁「A2-1 給与所得者の扶養控除等の(異動)申告」では、異動申告の提出時期について次のように説明されています。
『当初提出した申告書の記載内容に異動があった場合には、その異動の日後、最初に給与の支払を受ける日の前日までに異動の内容等を記載した申告書を提出してください』
出典:国税庁「A2-1 給与所得者の扶養控除等の(異動)申告」 https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/gensen/annai/1648_01.htm

ポイントは「異動があった日」ではなく「異動の日後、最初の給与支払日の前日まで」という期限になっていることです。出産や結婚から数日以内に慌てて提出する必要はなく、次の給料日の前日までに間に合わせれば問題ありません。

#### 【現場のリアル】出産予定日を扶養に書いてしまい、窓口で訂正になった話

ある社員は、来年5月に第一子が生まれる予定だったため、11月に提出する来年分の申告書の扶養親族欄に、生まれてくる子どもの名前の候補と出産予定日をあらかじめ書き込んで提出しました。総務担当者が受け取った際に「まだ生まれていないお子さんは、今の時点では扶養親族として記載できません」と説明し、その場でいったん扶養親族欄を空欄に戻してもらう対応になったそうです。本人は「先に書いておけば、生まれたときの手続きが楽になると思っていた」と話していましたが、実際には出産後に会社へ連絡し、あらためて異動申告書を提出する流れになります。未来の予定を先回りして書きたくなる気持ちは自然ですが、申告書はあくまで「提出日現在、実在する家族」を書く書類だと意識しておく必要があります。


5. 甲欄と乙欄、手取りはどれくらい違うのか

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月給30万円の会社員で比較すると、申告書を出し忘れて乙欄が適用された場合、甲欄との差は毎月約4万円にのぼります。

扶養控除等申告書を提出した場合(甲欄)と、出し忘れた場合(乙欄)で、毎月の給料から天引きされる税額がどれほど違うのか、国税庁の「給与所得の源泉徴収税額表(月額表)」から比較してみましょう。

月額税額比較表(国税庁 源泉徴収税額表より)

社会保険料控除後の月給甲欄(扶養親族0人の場合)甲欄(扶養親族1人の場合)乙欄(未提出の場合)毎月の手取りの差額
月給20万円4,770円2,900円23,100円約18,300円 損
月給30万円8,420円6,800円52,100円約43,600円 損
月給40万円16,070円13,240円88,700円約72,600円 損
月給50万円28,280円24,190円126,500円約98,200円 損

このように、扶養控除等申告書を1枚出さなかっただけで、毎月の手取りが4万〜7万円以上も強制的に削られてしまうことになります。

(確定申告をすれば最終的に戻ってきますが、1年間手取りが減り続けるため資金繰り上は避けたい状況です。)

#### 【現場のリアル】乙欄で天引きされて家賃の引き落としに焦った新入社員の話

ある新入社員は、入社初月に扶養控除等申告書の提出が間に合わず、乙欄で税金が計算された給与明細を見て青ざめたそうです。額面はほぼ同期と同じはずなのに、手取りが2万円近く少ない。原因が分からないまま「振込額を間違えたのでは」と経理に問い合わせたところ、「扶養控除等申告書がまだ届いていないので、今月は乙欄で計算しています」と説明を受け、そこで初めて申告書一枚の有無がこれほど手取りに直結すると知ったといいます。

翌月あわてて書類を提出し、税額は甲欄に切り替わったものの、初月分の差額は年末調整までそのまま据え置きになりました。本人いわく「家賃の引き落とし日と給料日が近くて、あの月は本気で残高が心配になった」とのことで、書類一枚を出し忘れるだけで生活資金のやりくりにまで影響が出ることを身をもって体験した格好です。入社時の書類は後回しにせず、初回の給料日前日までに出し切ることの重みが伝わるエピソードです。


6. 【重大注意】2箇所以上の会社に「来年分の申告書」を出してはいけない

扶養控除等申告書を提出できるのは「主たる給与の支払者(最も収入が多い1社)」のみで、2社目に提出すると税務署から是正通知が来て過去分を追徴されます。

Wワーク(アルバイト掛け持ち)や副業をしているサラリーマンが最も犯しやすい間違いが、「本業の会社とバイト先の両方に扶養控除等申告書を提出してしまうこと(二重提出)」です。

申告書は「メインの1社だけ」に提出するルール

所得税法上、扶養控除等申告書を提出できるのは「主たる給与の支払者(最も収入が多い1社)」のみと定められています。2社目のサブ勤務先には提出してはいけません(サブ勤務先では乙欄で税金が引かれます)。

【国税庁の公式見解・1次情報】
国税庁「No.2520 2か所以上から給与をもらっている人の源泉徴収」では、次のように説明されています。
『「給与所得者の扶養控除等申告書」を提出している人に支払う給与を主たる給与といい、その他の給与を従たる給与といいます。2か所以上から給与の支払を受けている人は、そのうちの1か所の給与の支払者だけに扶養控除等申告書を提出することになっています』
出典:国税庁「No.2520 2か所以上から給与をもらっている人の源泉徴収」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2520.htm

なお、1社分の収入だけでは配偶者控除や扶養控除を控除しきれない事情がある場合に限り、扶養親族を分けて2社目に「従たる給与についての扶養控除等申告書」を提出できる例外もあります。ただしこれは扶養控除等申告書そのものの二重提出とは別の制度で、通常のダブルワークで両方に同じ申告書を出してよいという意味ではありません。

#### 【現場のリアル】バイト先で「みんな書いてるから」と言われて二重提出しかけた話

本業の会社員として働きながら週末に飲食店でアルバイトをしていた人が、年末調整の時期にバイト先から扶養控除等申告書を渡され、記入して提出しようとしたことがありました。同じシフトの学生アルバイトが「これ書いておくと税金安くなるらしいよ」と話していたのを聞き、深く考えずに書き始めたそうです。たまたま本業の年末調整担当者に雑談で話したところ、「扶養控除等申告書は本業の会社にしか出せないので、バイト先には出さないでください」と止められ、事なきを得ました。本人いわく「税金が安くなる書類だとしか思っておらず、二重に出すと後で追徴されるなんて想像もしていなかった」とのことで、アルバイト先から渡された書類だからといって記入前提で受け取ってはいけない、という教訓になったといいます。

二重提出がばれた場合に起きること

二重提出は税務署のシステムで発覚し、両方の会社に是正通知が届いたうえで過去分の税金と延滞税を一括追徴されます。

  1. 両方の会社で「甲欄」として税金が安く計算される
  2. 翌年、税務署のシステムで「1人の人間が2つの会社で甲欄控除を受けている」ことが発覚する
  3. 2社目の会社および本業の会社へ税務署から「源泉徴収税額の是正通知」が一括送付される
  4. 過去に遡って不足分の税金と延滞税を一括追徴され、副業も会社に知られてしまう

副業バイト先から「年末調整の用紙書いてね」と渡されても、「本業の会社で提出しているので、こちらでは提出できません(乙欄で処理してください)」とハッキリ伝えることが重要です。


7. 年末調整の「2枚の申告書」を最速で書き上げる3大時短テクニック

年末調整の書類はマル扶・マル基マル配・マル保の3点を順番に埋めれば、合計5分程度で書き終えられます。

年末調整の書類作成をわずか数分で終わらせるための実務テクニックをまとめます。

ステップ内容所要時間の目安
① 来年分(令和7年分)のマル扶を見る去年と変更がなければ「変更なし」にチェックして氏名だけ書く1分
② 今年分(令和6年分)のマル基・マル配を見る自分の年収見積額を早見表で所得に換算し、基礎控除48万円を記入2分
③ 今年分(令和6年分)のマル保を見る自宅に届いた保険会社やiDeCoのハガキの数字をそのまま転記してハガキを貼る2分

#### 【現場のリアル】保険料のハガキを1枚捨ててしまい、控除額が減った話

ある社員は、秋に自宅へ届く生命保険料控除証明書のハガキを、勧誘のダイレクトメールと勘違いして開封せずに処分してしまったことがありました。年末調整の書類を書く段階になって「そういえば今年はハガキが来なかった気がする」と気づき、保険会社に再発行を依頼したものの、発送までに1週間ほどかかり、会社の提出締切に間に合わなかったそうです。結局その年は該当分の保険料控除を受けられず、確定申告で還付を受けることになりました。ハガキが届く時期(多くは10月頃)を把握しておき、届いた封筒を開けずに処分しないことが、実は一番の時短テクニックだったりします。


8. よくある質問(Q&A)

退職予定者、共働き世帯、法人番号欄、中途入社者からの質問に、それぞれ結論を先に示して回答します。

読者からよく寄せられる質問

#### Q1. 今年の年末(12月31日)で退職する予定です。それでも来年分の申告書を提出する必要がありますか。

A. 12月で退職することが確定している場合は、来年分の申告書は提出不要です。

来年1月1日時点でその会社に在籍していないため、来年分の申告書は転職先の新しい会社、または年明けの手続き先で提出することになります。今年分(令和6年分)の書類のみを提出して年末調整を受けてください。

国税庁の解説でも、申告書の提出義務は「給与の支払を受ける居住者」がその年最初の給与の支払を受ける日の前日までに、給与の支払者を経由して行うものとされています(前掲「A2-1 給与所得者の扶養控除等の(異動)申告」)。退職して支払関係そのものがなくなる会社に対しては、この提出義務が発生しません。

#### Q2. 夫婦共働きの場合、来年生まれる予定の子どもは夫と妻のどちらの扶養に入れるべきですか。

A. 原則として「年収(所得)が高い方の親」の扶養に入れるのが最も節税になります。

税率が高い親の側で扶養控除を受けた方が、世帯全体の手取りの戻り額が大きくなるためです。

#### Q3. 申告書の上部に印刷されている「給与支払者の法人番号(会社のマイナンバー)」は自分で書く必要がありますか。

A. 空欄のままで大丈夫です。会社側で印刷または入力します。

会社の法人番号や所在地は、会社の人事・総務部門が管理・追記する欄ですので、従業員が調べる必要はありません。

#### Q4. 12月に入社したばかりの新入社員ですが、今年分と来年分の両方を書く必要がありますか。

A. はい、両方提出します。

前職の源泉徴収票を添えて「今年分」の年末調整を受け、同時に1月以降の給与計算のために「来年分」の扶養控除申告書を提出します。

#### 【現場のリアル】前職の源泉徴収票を出し忘れて年末調整をやり直した話

12月に転職してきた社員が、前職の源泉徴収票を提出しないまま今年分の年末調整の書類だけを出してしまい、いったん今の会社での年末調整が完了してしまったことがありました。翌年になって前職から源泉徴収票が郵送で届き、本人が総務に「これ、どうすればいいですか」と持ち込んだところ、すでに年末調整が確定した後だったため、会社側では再調整ができず、結局本人が確定申告をして前職分の所得を合算し直す羽目になったそうです。総務担当者は「転職された方には、前職の源泉徴収票が届き次第すぐ持ってきてくださいと必ず伝えるようにしている」と話していました。中途入社の年は、今年分と来年分の書類に加えて前職の源泉徴収票、この3点セットが揃って初めて年末調整が完了することを覚えておく必要があります。


まとめ:来年分の申告書の意味を知って提出しよう

来年分の申告書を今書くのは所得税法第194条に基づく手続きであり、仕組みを知っていれば毎年の作業はチェック1つで終わります。

年末調整の仕組みと書類の意味を正しく理解すれば、毎年の書類作成は決して面倒な作業ではありません。

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