「会社員は自営業と違って、仕事で使うスーツや靴、仕事用の本を買っても経費で落とせない」
毎月の給与明細から引かれる税額を見て、そう諦めている人は多いはずです。
営業でボロボロになる革靴やスーツ、スキルアップのために自腹で通ったスクール代、業務に必要な専門書や業界紙の購読代。どれも「会社で働くため」「給料を稼ぐため」に支払ったお金であるにもかかわらず、サラリーマンだから経費にならないと思い込んでいる方が大半です。
しかし日本の税法には、会社員であっても仕事に必要な自腹支出を確定申告で差し引ける公的な制度、特定支出控除(とくていししゅつこうじょ)が実在します。国税庁 タックスアンサー「No.1415 給与所得者の特定支出控除」には、次のように書かれています。
【国税庁の公式見解・1次情報】
国税庁タックスアンサー「No.1415 給与所得者の特定支出控除」では、次のように定められています。
『給与所得者が次の1から7の特定支出をした場合、その年の特定支出の額の合計額が、給与所得控除額の2分の1相当額を超えるときは、確定申告によりその超える部分の金額を給与所得控除後の所得金額から差し引くことができる制度があります』
出典:国税庁 タックスアンサー No.1415「給与所得者の特定支出控除」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1415.htm(根拠条文:所得税法第57条の2)
この記事では、特定支出控除の基本の仕組みから、対象となる7区分の支出、年収別の適用基準額シミュレーション、会社から証明書をもらう具体的な手順、そして「なぜ実際に使っている人がほとんどいないのか」という税制の裏側まで、国税庁の公式情報にもとづいて整理します。
1. サラリーマンの経費制度「特定支出控除」とは

制度の基本の考え方
サラリーマンには、実際の支出を積み上げなくても法定の「みなし経費」が無条件で差し引かれる仕組みがあります。これが給与所得控除で、国税庁タックスアンサー「No.1410 給与所得控除」によって年収に応じた金額が定められています。
特定支出控除は、この給与所得控除の半分を超えるほど仕事の実費がかさんでしまった年に、超えた部分だけを追加で所得から差し引ける救済措置という位置づけです。裏を返せば、給与所得控除の半分を超えない限り一円も戻ってきません。ここが「話題になる割に使っている人をほとんど見ない」最大の理由につながっていきます。
制度ができた経緯
税務専門メディアの報道(関内会計、税のしるべなど複数媒体が国税庁公表データをもとに報じた内容)によると、特定支出控除は昭和62年度の税制改正で創設され、昭和63年分の所得税から適用が始まりました。ただし創設当初は対象となる支出の範囲が狭く、給与所得控除の「全額」を超えなければ使えなかったため、以後約25年間はほとんど利用者がいない状態が続いたと報じられています。
流れが変わったのは平成25年(2013年)分からです。資格取得費やスーツなどの衣服費、図書費が新たに対象へ加わり、適用の基準額も「給与所得控除の全額」から「2分の1」へ引き下げられました。この改正を境に、利用者数は2013年分で約1,600人へと急増し、直近で公表されている平成30年分では1,704人(適用件数3,154件、前年比86人増)まで増えています。とはいえ、会社員の確定申告者数全体からすればごくわずかな人数にとどまっています。
【現場のリアル】経理に証明書を頼んだら「そんな書類は聞いたことがない」
ある会社員がインターネットで特定支出控除の存在を知り、資格スクールの受講料の領収書を持って経理担当に「証明書を書いてもらえますか」と相談したところ、返ってきたのは「そんな書類は聞いたことがないので、税理士に確認してから折り返します」という言葉だったそうです。特定支出控除は使う人が極端に少ないため、中小企業の経理・総務担当者でも制度自体を知らないケースが珍しくありません。証明書の様式は国税庁のサイトからこちらが印刷して持参し、「所得税法第57条の2に基づく特定支出の証明書です」と用途を具体的に説明しないと、話がまったく前に進まないというのが実情です。
2. 特定支出控除の対象となる7つの区分
特定支出として認められる支出は、法律で定められた次の7区分に限定されています。国税庁タックスアンサー「No.1415」で「次の1から7の特定支出」と明記されているとおり、現行制度は6区分ではなく7区分です(かつては通勤費・転居費・研修費・資格取得費・帰宅旅費・勤務必要経費の6区分でしたが、単なる転勤にとどまらない業務出張の実費を拾えるよう「職務上の旅費」が独立した区分として加わっています)。
| 区分 | 特定支出の名称 | 対象となる主な費用 | 対象外となる主な例 |
|---|---|---|---|
| 第1号 | 通勤費 | 通例として認められる通勤のための運賃・交通費 | 会社の通勤手当を超えて私的に利用したグリーン車・タクシー代 |
| 第2号 | 職務上の旅費 | 勤務する場所を離れて職務を遂行するために直接必要な旅行の費用 | 私的な旅行、業務と関係のない同行者の費用 |
| 第3号 | 転居費 | 転勤に伴う転居のために通常必要な運送代・交通費・宿泊費 | 家族の観光費用、敷金・礼金、家賃そのもの |
| 第4号 | 研修費 | 職務に直接必要な技術・知識を得るためのセミナー受講料、講習会費 | 趣味・教養のための習い事 |
| 第5号 | 資格取得費 | 職務に直接必要な資格を取得するための費用(弁護士、税理士、宅建、簿記、大型免許など) | 職務と関係のない趣味の資格 |
| 第6号 | 帰宅旅費 | 単身赴任者が勤務地・居所と自宅の間を往復する交通費(月4往復=片道8回まで) | 月4往復を超える分の交通費 |
| 第7号 | 勤務必要経費 | 図書費(職務に関連する書籍・専門書・定期刊行物)、衣服費(制服・スーツなど)、交際費等(職務上の取引先への接待・贈答) | 私的な書籍、私服として着る服、社内の飲み会代 |
勤務必要経費の「65万円上限」に注意
第7号の勤務必要経費(図書費・衣服費・交際費等)は、3つの費用を合計した金額に上限が設けられています。国税庁タックスアンサー「No.1415」には次のように明記されています。
【国税庁の公式見解・1次情報】
『その支出の額の合計額が65万円を超える場合には、65万円までの支出に限ります』
出典:国税庁 タックスアンサー No.1415「給与所得者の特定支出控除」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1415.htm
つまり年間で高級スーツを100万円分購入したとしても、特定支出としてカウントできるのは最大65万円までです。
【現場のリアル】MBAの学費証明を「個人の自己啓発」と断られた話
外資系メーカーに勤めるある会社員は、社会人向けの経営大学院(MBA)に自費で通い、年間45万円の授業料を支払っていました。特定支出控除を使おうと人事部に証明書の発行を依頼したところ、「会社として推薦や指示をした研修ではなく、あなた個人の判断で申し込んだ自己啓発なので、職務に直接必要とは証明できない」と断られたそうです。研修費・資格取得費の証明書は、会社が「その支出が業務に直接必要である」と公的に認める書類です。会社の業務命令や人事評価上の推奨と紐づいていない自己都合の学びは、たとえ内容が仕事に役立つものであっても証明を得にくいというのが実務上の壁になっています。
3. あなたは使える? 年収別「基準額」早見表とシミュレーション

特定支出控除を利用するには、対象支出の年間合計額が「その年の給与所得控除額の2分の1」を超えなければなりません。年収ごとに、実際いくら自腹を切れば控除対象になるのかを確認します。
なお給与所得控除額は、令和7年度税制改正により令和7年分以降の金額が見直されており、収入190万円以下の場合の最低保証額が55万円から65万円に引き上げられています(国税庁「令和7年度税制改正により、所得税の『基礎控除』や『給与所得控除』に関する見直し…」広報資料 https://www.nta.go.jp/publication/pamph/gensen/0025005-051.pdf)。以下は国税庁タックスアンサー「No.1410 給与所得控除」(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1410.htm)に示された令和7年分以降の速算式にもとづく金額です。
年収別・特定支出控除の適用基準額一覧表
| 額面年収 | 給与所得控除額(令和7年分以降) | 特定支出控除の基準額(2分の1) | 控除を受けるために必要な年間自腹額 |
|---|---|---|---|
| 200万円 | 68万円 | 34万円 | 34万円超 |
| 300万円 | 98万円 | 49万円 | 49万円超 |
| 400万円 | 124万円 | 62万円 | 62万円超 |
| 500万円 | 144万円 | 72万円 | 72万円超 |
| 600万円 | 164万円 | 82万円 | 82万円超 |
| 700万円 | 180万円 | 90万円 | 90万円超 |
| 850万円以上 | 195万円(上限) | 97万5,000円 | 97万5,000円超 |
給与所得控除額は、660万円未満の収入については国税庁が公表する所得税法別表第五(給与所得控除後の給与等の金額の表)で1円単位まで確定します。上表は速算式で算出した概算額なので、実際の申告では源泉徴収票の金額を国税庁の速算表・計算コーナーに当てはめて確認してください。
【ケーススタディ】年収500万円の営業職Aさんの場合
- 年収:500万円(所得税率・住民税率とも10%と仮定)
- 給与所得控除額:144万円
- 特定支出控除の基準額:72万円(144万円÷2)
#### Aさんの1年間の自腹支出内訳
- 職務に必要なスーツ・靴・カバン代:40万円(65万円の上限以内)
- 業務関連の専門書・業界誌の購読費:15万円
- 業務に必要な経営大学院(MBA)の授業料:45万円(会社が推薦制度を通じて証明書を発行)
- 特定支出の合計額:40万円+15万円+45万円=100万円
#### 控除額と戻ってくる税金
- 特定支出控除額:100万円(支出合計)-72万円(基準額)=28万円
- 所得税の減税効果:28万円×10%=28,000円
- 住民税の減税効果:28万円×10%=28,000円
- 合計節税額:56,000円
Aさんは年間100万円を仕事のために自腹で投資し、28万円の所得控除を得て、合計5万6,000円の税金を取り戻しました。決して割の良い投資ではありませんが、もともと自己投資として支払うつもりだった支出の一部が戻ってくると考えれば、申告する価値はあります。
4. なぜ特定支出控除は「知る人ぞ知る」制度のままなのか
インターネットで「サラリーマンもスーツ代が経費になる」と話題になることがありますが、実際にこの制度を使っている人は、税務専門メディアが報じた直近の公表数値(平成30年分)で全国1,704人にとどまります。確定申告をする給与所得者全体の中でも、極めて限られた人数です。利用が広がらない背景には、大きく3つの壁があります。
壁1:基準額が高すぎる
年収500万円の人が72万円を超える自腹支出をするというのは、手取りの1〜2割近くを仕事の支出に充てることに等しい水準です。会社の経費精算を使わずにここまでの自腹を切るケースは、一般的な会社員では稀です。
壁2:会社の公式証明書をもらうハードルが高い
特定支出控除を受けるには、領収書を集めるだけでは足りず、国税庁所定の「給与等の支払者の証明書」を、対象となる支出項目ごとに会社から発行してもらう必要があります。会社側からすると、税務署に「なぜこれを職務に直接必要と証明したのか」と問われるリスクを負ってまで、社員個人の節税のために証明書を出すメリットがありません。実際に断られる理由として、「会社の経費として精算すべきもの」「業務命令ではない自己研鑽を職務に直接必要とは証明できない」「スーツは私生活でも着られるため業務専用と証明できない」といった説明が現場ではよく聞かれます。
壁3:戻ってくる税金が支出額に見合わない
先ほどのAさんの例のとおり、100万円使って戻ってくる税金は5万6,000円程度です。「支出全額が返ってくる」わけではなく「基準額を超えた部分に税率をかけた分」しか返らないため、節税目的だけでわざわざ支出を積み増す行為は完全に本末転倒です。
5. 特定支出控除を検討する価値がある「例外的なケース」

ハードルは高いものの、次のような状況に当てはまる年は使う価値があります。
ケース1:自腹で高額な国家資格や大学院に通った年
弁護士、税理士、公認会計士、一級建築士、大学院・専門職大学院など、年間の学費が100万円を超える資格取得や研修を自腹で受けた場合。会社が「将来の幹部育成や業務上不可欠なスキル」として資格取得を推奨・容認しており、証明書に協力的な場合はとくに現実的です。
ケース2:転勤で自腹の引っ越し・出張費用が多額になった年
転勤の辞令が出たものの、会社の引っ越し手当の上限を超えて数十万円の自腹費用が発生した場合。
ケース3:単身赴任で頻繁に帰宅している年
会社の帰宅旅費手当を超えて、月2〜4回のペースで新幹線や飛行機を使って自宅へ帰省しており、年間の交通費が高額になっている場合(月4往復=片道8回までが対象)。
【現場のリアル】帰宅旅費の領収書を1年分探すはめになった話
単身赴任で毎週末に新幹線で帰省していたある会社員は、確定申告の時期になって初めて特定支出控除の存在を知り、1年分の新幹線チケットの領収書をかき集めることになりました。ネット予約分は履歴からPDFを再発行できましたが、駅の券売機で現金購入した分は控えを捨ててしまっており、結局その月の分は証明のしようがなく対象から外さざるを得なかったそうです。帰宅旅費で特定支出控除を狙うなら、月初にその月分の領収書をまとめて写真に撮り、家計簿アプリのフォルダにでも放り込んでおく。これだけで年末の作業量がまったく変わります。
6. 特定支出控除の確定申告・申請手順
特定支出控除は年末調整では手続きできません。会社で年末調整を済ませたあと、翌年2月16日から3月15日ごろの間に、自分自身で税務署へ確定申告(還付申告)を行う必要があります。
証明書はどの部署に頼めばいいか
証明書の発行元は「給与等の支払者」、つまり勤務先の会社です。実務上は総務部・人事部の給与担当、または経理部門が窓口になることが多いですが、会社の規模によっては担当が定まっていないこともあります。依頼する際は「所得税法第57条の2に基づく、特定支出控除の証明書がほしい」と用途を明確に伝え、国税庁の様式を印刷して持参すると話が早く進みます。
使う様式は国税庁サイトのどこにあるか
- 給与所得者の特定支出に関する明細書(申告書に添付する明細書本体)
国税庁「確定申告書等の様式一覧」内のPDF:https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/yoshiki/02/pdf/039.pdf
- 給与等の支払者の証明書(会社に記入・押印してもらう様式)
国税庁「給与所得者の特定支出に関する証明書」様式ページ:https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/yoshiki/02/tokutei.htm
- 制度全体の手引き(申告書の書き方つき)
国税庁「確定申告の手引き」:https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/tebiki/2025/pdf/038.pdf
手続きの流れ
- 1年間の領収書・レシート・クレジットカード明細を、支出の区分(通勤費・研修費・資格取得費など)ごとに集計する
- 上記の国税庁サイトから「給与所得者の特定支出に関する明細書」と「給与等の支払者の証明書」の様式をダウンロード・印刷する
- 証明書を勤務先の給与担当部署に提出し、会社の記名・押印をもらう
- 会社から交付された源泉徴収票を手元に用意する
- 確定申告書に特定支出控除の欄を記入し、証明書と領収書明細を添付して税務署へ提出する(e-Taxでの提出も可能)
提出に必要な書類
- 確定申告書(給与所得の特定支出控除の欄に記入)
- 給与所得者の特定支出に関する明細書
- 給与等の支払者の証明書(会社の記名・押印がある原本)
- 支出の事実および金額を証明する書類(領収書、受講証明書、運賃の領収証など)
- 給与所得の源泉徴収票
7. 特定支出控除が使えない年の現実的な節税策
特定支出控除の基準を満たせない年がほとんどの会社員にとって、手取りを増やす確実な方法は、年末調整と確定申告で使える「正攻法の控除」を漏れなく使い切ることです。
iDeCo(個人型確定拠出年金)
国税庁タックスアンサー「No.1135 小規模企業共済等掛金控除」(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1135.htm)のとおり、iDeCoの掛金はその年に支払った全額が所得控除の対象です。企業年金のない会社員が月2万円(年間24万円)を積み立てた場合、所得税・住民税をあわせて年間4万8,000円〜7万2,000円程度安くなる計算になります(掛金の上限額は会社の企業年金の有無によって変わるため、加入前にご自身の上限を確認してください)。
ふるさと納税(寄附金控除)
実質自己負担2,000円で、翌年の住民税から控除されます。ワンストップ特例、または確定申告で手続きできます。
セルフメディケーション税制(医療費控除の特例)
国税庁タックスアンサー「No.1129 特定一般用医薬品等購入費を支払ったとき(医療費控除の特例)」(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1129.htm)によると、1年間に薬局で購入した対象の市販薬(かぜ薬、湿布、胃腸薬、花粉症薬等)が1万2,000円を超えた場合、その超えた部分(最高8万8,000円)を所得控除できます。通常の医療費控除とはどちらか一方しか選べません。
配偶者控除・扶養控除・住宅ローン控除の適用漏れをなくす
別居している高齢の親への仕送りによる扶養追加、19〜22歳の子どもの特定扶養親族控除、生命保険料控除の枠の使い切りなど、年末調整の書類に正しく記入するだけで受けられる控除を取りこぼさないことが先決です。
8. よくある質問
Q1. 副業をしている場合、スーツ代やPC代を経費にできますか
はい。個人事業(業務委託・雑所得・事業所得)としての副業であれば、売上から直接「必要経費」として差し引けます。特定支出控除のような会社の証明書や高い基準額は不要で、自宅の家賃や光熱費、インターネット代、パソコン代、副業関連の書籍代などを、業務で使用した割合に応じて経費計上できます。これが「会社員が副業を始める節税メリット」としてよく挙げられる理由です。
Q2. 会社の飲み会代(自腹の参加費)は特定支出の「交際費」に入りますか
いいえ、社内の親睦会や単なる飲み会は対象外です。特定支出控除の交際費等として認められるのは「職務上関係のある取引先、得意先に対する接待、供応、贈答」に限られます。社内の上司や同僚との飲み会代は対象になりません。
Q3. スーツ代の領収書の宛名は会社名にすべきですか、個人名ですか
あなた個人のフルネームで発行してもらってください。特定支出控除は「あなたが自腹で支払った費用」を申告する制度なので、宛名が会社名になっていると「会社の経費で精算されたもの」とみなされて税務署から否認されるおそれがあります。
まとめ
特定支出控除は、会社員でもスーツ代や資格取得費を確定申告で経費にできる公的な制度です。国税庁タックスアンサー「No.1415」が示すとおり、通勤費・職務上の旅費・転居費・研修費・資格取得費・帰宅旅費・勤務必要経費の7区分が対象で、合計額が給与所得控除額の2分の1(国税庁「No.1410」による年収別の金額はこの記事の表のとおり)を超えた部分だけが控除されます。
ただし、給与所得控除の半分を超える自腹支出と、会社の公式な証明書という2つの高いハードルがあるため、実際の利用者は全国で1,704人(平成30年分)にとどまっているのが現実です。大学院の学費や高額資格の取得、多額の自腹転勤費用がある年でなければ、無理に狙う必要はありません。
多くの会社員にとって手取りを守る近道は、年末調整での控除漏れをなくすことと、iDeCoやふるさと納税といった正攻法の制度を確実に使うことです。特定支出控除は、それらを一通りやり切ったうえで、なお自腹の支出が突出して多かった年に思い出せば十分な、いわば最後の一手として頭の片隅に置いておく制度だと考えておくのがちょうどいいところです。