「実家で暮らす両親に毎月生活費を仕送りしているけれど、これって年末調整で扶養に入れられるのかな」
「もし扶養に入れたら、どれくらい税金が安くなるんだろう」
年末調整の書類を前に、ふとそんな疑問がよぎった人は多いはずです。実は別居している親への仕送りであっても、一定の条件を満たせば年末調整で「扶養控除」の対象になり、所得税と住民税の両方を下げることができます。
ただし、別居の親を扶養に入れるためには、生計を一にしていることの証明(仕送りの事実)や親の所得制限など、いくつかクリアすべき条件があります。この記事では、離れて暮らす親を扶養に入れるための条件、実際にどれくらい節税になるのかの目安、そして年末調整での申告書の書き方までを、実務の目線でまとめます。
別居している親を「扶養」に入れるための3つの条件

【国税庁の公式見解・1次情報】
国税庁タックスアンサー「No.1180 扶養控除」では、扶養親族として認められる要件を次のように定めています。
『扶養親族とは、その年の12月31日の現況で、次の四つの要件のすべてに当てはまる人です。(1)配偶者以外の親族(6親等内の血族及び3親等内の姻族)であること(2)納税者と生計を一にしていること(3)年間の合計所得金額が48万円以下であること(4)青色申告者の事業専従者としてその年を通じて一度も給与の支払を受けていないこと又は白色申告者の事業専従者でないこと』
出典:国税庁 タックスアンサー No.1180「扶養控除」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1180.htm
別居している親を年末調整で扶養に入れるためには、この要件のうち特に実務でつまずきやすい次の3つの条件をすべて満たす必要があります。
1. 親と「生計を一にしている」こと(定期的な仕送り)
別居していても、あなたが親の生活費や療養費を継続的に仕送りしている、つまり「生計を一にしている」状態であれば、扶養の対象になります。
ここでのポイントは、「年に1回や2回の帰省時にお小遣いを渡す」程度では認められないということです。銀行振込など、定期的かつ客観的に仕送りの事実が証明できる記録を残しておく必要があります。
2. 親の年間所得が「48万円以下」であること
親自身の1年間の合計所得金額が48万円以下であることが条件です。
「所得48万円以下」というと少なく感じますが、親の収入が公的年金のみの場合は、公的年金等控除額が差し引かれるため、年齢によって以下のように収入ベースの上限が緩和されます。
【国税庁の公式見解・1次情報】
国税庁タックスアンサー「No.1600 公的年金等の課税関係」では、公的年金等に係る雑所得の計算方法を次のように説明しています。
『公的年金等に係る雑所得の金額は、その年中の公的年金等の収入金額の合計額から、公的年金等控除額を控除した金額です』
出典:国税庁 タックスアンサー No.1600「公的年金等の課税関係」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1600.htm
この公的年金等控除額を反映させると、年金収入のみの親については次の年収であれば合計所得金額48万円以下の要件を満たします。
| 親の年齢(その年の12月31日時点) | 収入が「公的年金のみ」の場合の年収上限 |
|---|---|
| 65歳未満 | 年収108万円以下 |
| 65歳以上 | 年収158万円以下 |
親が年金をもらっていても、この金額の範囲内であれば扶養に入れることができます。
3. 他の兄弟姉妹の扶養に入っていないこと
親を扶養に入れられるのは、兄弟姉妹の中で1人だけです。
例えば、あなたと兄の両方が実家に仕送りをしていたとしても、両親(または父か母のどちらか)を重複してそれぞれの扶養に入れることはできません。事前に兄弟間で「誰が親を扶養に入れるか」を話し合っておきましょう。
【現場のリアル】兄弟で押し付け合いになった扶養控除
あるメーカー勤務の男性は、地方の実家で暮らす母親に毎月3万円を仕送りしていましたが、年末調整の時期になって初めて、同じく仕送りをしていた妹も母親を自分の扶養に入れて申告していたことが発覚しました。会社の総務担当者から「お母様、妹さんの方でも扶養親族として申告が上がっていますが」と指摘され、電話口で兄妹げんかのような言い合いになったそうです。結局、仕送り額が多く実家への訪問頻度も高かった兄側が扶養に入れることで決着しましたが、年が明けてから妹の申告分を取り下げる修正の手間がかかりました。総務担当者いわく、こうした兄弟間の重複申告は毎年一定数発生する定番のトラブルで、事前にひとことLINEで「今年は私が扶養に入れるね」と共有しておくだけで防げるものばかりだといいます。
扶養控除を受けると、税金はいくら安くなる?

親を扶養に入れた場合、親の年齢に応じてあなたの所得から一定額が控除され、その結果として税金が安くなります。
親(別居)を扶養に入れた場合の控除額は以下の通りです。
| 親の年齢(その年の12月31日時点) | 控除の種類 | 所得税の控除額 | 住民税の控除額 |
|---|---|---|---|
| 70歳未満 | 一般の控除対象扶養親族 | 38万円 | 33万円 |
| 70歳以上 | 老人扶養親族(同居老親等以外) | 48万円 | 38万円 |
※同居している70歳以上の親の場合は控除額が上がりますが、今回は「別居」の場合の金額です。国税庁タックスアンサー「No.1180 扶養控除」では、70歳以上の控除対象扶養親族を「老人扶養親族」とし、そのうち納税者やその配偶者と同居を常況としている直系尊属を「同居老親等」として区別しています。
節税額のシミュレーション(目安)
あなたの所得税率が10%(年収400万〜500万円程度の目安)、住民税率が10%とした場合、70歳以上の別居の親を1人扶養に入れると次の計算になります。
- 所得税:48万円 × 10% = 48,000円 安くなる
- 住民税:38万円 × 10% = 38,000円 安くなる
- 合計:年間 86,000円 も手取りが増える計算になります
仕送りをしているなら、申告しない手はありません。
「うちの親は条件を満たしている?」「書類のどこに何を書けばいいの?」と迷ったら、当社のサービス『書けた年末調整』にお任せください。スマホからチャット形式の簡単な質問に答えていくだけで、自動で条件を判定し、必要な申告書がパッと完成します。もう電卓もボールペンも不要です。
無料で申告書を作成してみる別居の親を扶養に入れる!年末調整での書き方と必要書類
条件を満たしていることがわかったら、実際に年末調整で申告しましょう。
申告書のどこに書くの?
会社の年末調整で配られる「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」に記入します。国税庁タックスアンサー「No.2662 年末調整のしかた」でも、この申告書を提出している人が年末調整の対象になると案内されています(出典:https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2662.htm)。
用紙の真ん中あたりにある「B 控除対象扶養親族(16歳以上)」の欄に、以下の内容を記載します。
- 氏名・マイナンバー: 親の氏名とマイナンバー(個人番号)
- あなたとの続柄: 「父」または「母」
- 生年月日: 親の生年月日
- 老人扶養親族: 親が70歳以上の場合は、「同居老親等」の右側にある「その他」に丸をつけます。
- 所得の見積額: 親の今年の所得見込み額を記入(年金収入のみで65歳以上・年収120万なら、所得は「10万円」と計算して記入します)
- 非居住者である親族: (※海外に住んでいる場合のみ記入。国内の場合は空欄)
- 生計を一にする事実: 今回の仕送り金額の年間合計額を記入(例:「600,000円」など)
- 住所又は居所: 実家の住所(別居している親の住所)を記入
【現場のリアル】「その他」に丸をつけ忘れて指摘された話
70歳になった父親を初めて扶養に入れた会社員の女性は、申告書の「老人扶養親族」の欄に「同居老親等」と「その他」の2つの選択肢があることに気づかず、どちらにも丸をつけないまま提出してしまいました。年末調整の集計作業をしていた総務担当者から「お父様は同居ですか、それとも別居ですか。丸がついていないと控除額の区分が確定できません」と内線電話で確認され、慌てて訂正印を持って総務窓口まで走った、という話をよく聞きます。別居の場合に同居老親等の欄へ誤って丸をつけてしまうと、実際より10万円多い48万円の控除枠で計算されてしまい、後日税務署から会社宛てに是正の連絡が入ることもあります。小さな丸ひとつですが、所得税の計算に直結する重要な項目なので、記入前に自分の親が同居か別居かを指差し確認するくらいの慎重さが要ります。
注意点:手渡しでの仕送りはNG?送金証明を残そう
国内に住む親へ仕送りをしている場合、法律上は年末調整の際に証明書の添付は義務付けられていません。
しかし、会社や税務署から「本当に生計を一にしているか」の確認として、送金関係書類の提示を求められることが非常に多いのが実情です。
現金を手渡ししていると客観的な証拠が残りません。そのため、仕送りは必ず銀行振込や現金書留で行い、振込明細書や通帳のコピー、書留の控えなどをしっかり保管しておきましょう。(親の生活費となる水道光熱費などを、あなたが口座引き落としなどで直接支払っている場合も証明になります)
まとめ:別居の親への仕送りはしっかり申告して節税しよう!

離れて暮らす親への仕送りは、決して小さな負担ではありません。だからこそ、国が用意している「扶養控除」の制度を正しく使って、しっかり税金を安くしましょう。
【チェックリスト】
- [ ] 定期的に銀行振込などで仕送りをしている(国税庁タックスアンサー No.1180の「生計を一にしている」要件)
- [ ] 親の年収が上限(65歳以上で年金のみなら158万円)以下である(国税庁タックスアンサー No.1600の公的年金等控除額を踏まえた目安)
- [ ] 他の兄弟が親を扶養に入れていない
- [ ] 振込明細など、送金の証拠が手元にある
これらをクリアしていれば、年末調整の用紙に忘れずに記入してください。
「書き方が不安」「親の所得計算が難しい」という方は、スマホで質問に答えるだけで書類が作れる『書けた年末調整』を活用して、サクッと年末調整を終わらせましょう。
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