親が自営業・個人事業主の場合、子どもが「専従者給与」をもらっている時の年末調整ルール

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目次

「実家の飲食店や農家、商店を手伝って、親から専従者給与をもらっているけれど、年末調整はどうなるの」

「親から専従者給料をもらいながら、親の確定申告で扶養控除にも入れてもらえるの」

親が個人事業主やフリーランスとして商売を営んでおり、その仕事を手伝って給料を受け取っている家族、配偶者や子どものケースです。この給料は税法上「青色事業専従者給与」または「事業専従者控除(白色申告の場合)」と呼ばれ、個人事業主にとって代表的な節税策のひとつになっています。

ただし専従者給与には、税法上かなり厳格な排他ルールが定められています。親から専従者給与を1円でも受け取っている子どもや配偶者は、親の確定申告で扶養控除や配偶者控除の対象にすることが法律上できません。さらに専従者として給与をもらっている子ども自身の年末調整は、親(事業主)が会社と同じように行って源泉徴収票を発行するという、実務上のルールになっています。

この記事では、専従者給与の基本的な仕組みから、扶養控除との排他関係、令和7年度税制改正で変わった非課税ラインの金額、専従者給与の年末調整の実際の流れ、外でのバイト掛け持ちによる否認リスク、届出書の提出期限まで、国税庁の公式情報にもとづいて整理しました。


1. 専従者給与と扶養控除、両方は絶対に併用できない

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専従者給与と扶養控除の関係は、所得税法第57条と、扶養控除の要件を定めた規定によって、次のように整理されています。

【国税庁の公式見解・1次情報】
国税庁「No.1180 扶養控除」では、控除対象扶養親族となるための要件のひとつとして、次のように説明されています。
『青色申告者の事業専従者としてその年を通じて一度も給与の支払を受けていないこと又は白色申告者の事業専従者でないこと』
出典:国税庁「No.1180 扶養控除」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1180.htm

つまり、その年に一度でも専従者として給与を受け取っていれば、その時点で扶養親族の要件そのものを満たさなくなります。月8万円だけもらった、繁忙期だけ手伝って数万円もらった、という少額のケースであっても例外はありません。金額の多寡ではなく「専従者として給与の支払いを受けたという事実があるかどうか」で判定される点が、この制度のいちばん厳しいところです。

もう一方の専従者給与の側についても、国税庁は青色事業専従者給与が経費として認められるための要件を次のように示しています。

【国税庁の公式見解・1次情報】
国税庁「No.2075 青色事業専従者給与と事業専従者控除」では、青色事業専従者給与の要件として次のように説明されています。
『青色申告者と生計を一にする配偶者その他の親族であること』『その年の12月31日現在で年齢が15歳以上であること』『その年を通じて6か月を超える期間、その青色申告者の営む事業に専ら従事していること』
このほか、税務署へ提出した「青色事業専従者給与に関する届出書」に記載した方法により、記載されている金額の範囲内で支払われたものであること、そしてその労務の対価として相当であると認められる金額であることも要件とされています。
出典:国税庁「No.2075 青色事業専従者給与と事業専従者控除」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2075.htm

根拠条文は所得税法第57条で、同ページの関連法令欄にも「所法2、56、57、所令164、165、所規36の4」と明記されています。専従者給与を経費として使うか、通常の扶養控除・配偶者控除を使うか、家族はこのどちらか一方しか選べません。

選べる選択肢親(事業主)の側子ども・配偶者の側
専従者給与を選ぶ給与を全額経費に算入できる自分の所得として自分で税金を計算する
扶養控除・配偶者控除を選ぶ専従者給与としての経費計上はできない収入をアルバイト等の範囲内に抑える必要がある
両方は選べない専従者給与を1円でも払った時点で扶養控除は不可専従者給与を1円でも受け取った時点で扶養親族から外れる

#### 【現場のリアル】確定申告の直前に排他ルールを知って青ざめた話

飲食店を営むある個人事業主の方の話です。年末調整の時期に、長年の税理士との顧問契約を切って自分で確定申告ソフトに入力を始めたところ、大学の夜間部に通いながら店を手伝う息子さんの分について、専従者給与と扶養控除の両方を入力欄に打ち込んでしまい、ソフトのエラー表示で初めて「どちらか一方しか選べない」ことに気づいたそうです。前年までは税理士が当然のように専従者給与の届出だけを使っていたのに、なぜ自分は扶養控除も使えると思い込んでいたのか、本人は「毎年もらう源泉徴収票の控除欄をちゃんと見ていなかったのが原因だと思う」と振り返っていました。専従者給与を選んだ年は、扶養控除等申告書の記入欄そのものが親側の申告書に出てこないため、迷ったら前年の確定申告書の控えで「事業専従者給与」の欄に金額が入っているかどうかをまず確認するのが早道です。


2. 専従者給与の金額と子どもの税金、令和7年度税制改正後の非課税ライン

専従者給与をいくらに設定するかによって、親の節税額と子ども自身にかかる税金の額が決まります。この非課税ラインは令和7年度の税制改正で大きく変わりました。

【国税庁の公式見解・1次情報】
国税庁「令和7年度税制改正による所得税の基礎控除の見直し等について」では、給与所得控除とあわせて次のように説明されています。
『給与所得控除について、55万円の最低保障額が65万円に引き上げられました』
あわせて扶養親族等の合計所得金額要件も『58万円以下(改正前:48万円以下)』に引き上げられ、この改正は令和7年分以後の所得税について適用されます。
出典:国税庁「令和7年度税制改正による所得税の基礎控除の見直し等について」 https://www.nta.go.jp/users/gensen/2025kiso/index.htm

基礎控除58万円と給与所得控除の最低保障額65万円を合計すると123万円になり、専従者給与だけを受け取っている子どもが自分の所得税を一切払わなくて済む年収ラインは、従来の103万円から123万円に引き上げられています。横浜市の公式資料でも同じ数字が確認できます。

【横浜市の公式見解・1次情報】
横浜市「令和7年度税制改正(いわゆる年収の壁への対応)の概要」では、給与収入ベースの要件について次のように説明されています。
『同一生計配偶者・扶養親族:103万円 → 123万円』
この改正は令和7年1月1日から12月31日までの収入を基礎とする令和8年度の個人住民税に適用されるとされています。
出典:横浜市「令和7年度税制改正(いわゆる年収の壁への対応)の概要」 https://www.city.yokohama.lg.jp/kurashi/koseki-zei-hoken/zeikin/y-shizei/kojin-shiminzei-kenminzei/R7kaisei.html

専従者給与の金額を実際に設定する際の目安は、次のようになります。

専従者給与の月額(年額)親の事業の経費計上額子ども自身の所得税(目安)ポイント
月 10.25万円(年 123万円)123万円が全額経費所得税0円(基礎控除58万+給与所得控除65万の範囲内)令和7年分以降の新しい非課税上限
月 10万円(年 120万円)120万円が全額経費所得税0円端数を気にせず設定しやすい水準
月 15万円(年 180万円)180万円が全額経費所得税・住民税とも一定額が発生本格的に働く子ども向け

ここで注意したいのは、この123万円という数字はあくまで所得税の非課税ラインだという点です。住民税は自治体ごとに非課税限度額の基準が異なり、給与所得控除の最低保障額引き上げに連動して非課税ラインが底上げされてはいますが、所得税の123万円より低い水準で均等割や所得割が課税され始める自治体も少なくありません。専従者給与を123万円ぴったりに設定すると、所得税はゼロでも住民税だけは数千円から1万円台の課税が発生する可能性があるため、正確な金額は子どもの住所地の市区町村へ確認しておくと安心です。

#### 【現場のリアル】「103万円のつもりで組んだ給与」が去年までの感覚だった話

八百屋を営むある個人事業主の方は、毎年3月に届出書を提出する際、長年「専従者給与は月8.5万円、年103万円にしておけば子どもの税金はゼロ」という感覚で金額を決めていました。今年もいつもどおり月8.5万円で届出書を書こうとしたところ、知人の税理士から「今年から103万円の壁は123万円に変わっているので、もう少し払っても税金はゼロのままですよ」と指摘され、初めて改正のことを知ったそうです。本人は「毎年同じ金額で提出していたので、税制が変わったこと自体に気づかなかった。届出書の上限金額を書き換えるタイミングを逃していたら、損をしていたところだった」と話していました。専従者給与の金額は一度決めたら固定というわけではなく、税制改正があった年は特に、届出書に記載する上限金額を見直す価値があります。


3. 専従者の年末調整は、親(事業主)が会社と同じように行う

親が自営業・個人事業主の場合、子どもが「専従者給与」をもらっている時の年末調整ルールの計算・シミュレーションイメージイラスト

専従者給与をもらっている子どもの年末調整は、勤務先が親という点を除けば、一般の会社員の年末調整とほぼ同じ流れで進みます。

  1. 子どもが親(事業主)へ「給与所得者の扶養控除等申告書」を提出する。
  2. 親(事業主)が、子どもの1年間の給与総額をもとに所得税の過不足を計算し、年末調整で精算する。
  3. 親が子どもに対して「給与所得の源泉徴収票」を作成し、翌年1月中に交付する。
  4. 親が市区町村役場へ「給与支払報告書」を、税務署へ「法定調書合計表」をそれぞれ提出する。

親が個人事業主であっても、従業員を雇う一般の会社と同じ手続きを踏む必要があり、専従者だからといって年末調整そのものが簡略化されるわけではありません。逆にいえば、親自身が「事業主」であると同時に「給与を払う会社の総務担当者」という2つの役割を1人でこなすことになるため、初めての年は書類の抜け漏れが起きやすい場面でもあります。

#### 【現場のリアル】親自身が初めて年末調整の作業をして戸惑った話

農業を営むある方は、長年専従者給与という制度自体は知っていたものの、実際に自分の子どもを専従者として届け出て給与を払い始めたのはその年が初めてでした。12月になって税理士から「そろそろお子さんの年末調整の書類を出してください」と言われ、扶養控除等申告書を子どもに渡すところから始めて、源泉徴収票の作成、市区町村への給与支払報告書の提出まで、一つひとつ手探りで進めることになったそうです。本人は「自分が事業主で、しかも従業員が自分の子どもという状況だと、書類を催促するタイミングも気を遣う。他人の会社なら事務的にできることが、身内相手だとつい後回しにしてしまいがちだった」と振り返っていました。専従者給与を新しく始める年は、年末になって慌てないよう、届出書を提出した段階で年末調整に必要な書類一式のスケジュールも一緒に確認しておくのが実務的です。


4. 専従者が外で別のバイトを掛け持ちすると、専従者資格そのものが否認される

青色事業専従者として認められる大前提は、その年を通じて親の事業に「専ら従事」していることです。

【国税庁の公式見解・1次情報】
国税庁「No.2075 青色事業専従者給与と事業専従者控除」の要件では、『その年を通じて6か月を超える期間、その青色申告者の営む事業に専ら従事していること』が求められています。
出典:国税庁「No.2075 青色事業専従者給与と事業専従者控除」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2075.htm

もし子どもが実家の手伝いをおろそかにして外のアルバイトを掛け持ちし、外の労働時間や収入の比重が明らかに大きくなると、税務署の調査で「専ら従事していたとは認められない」と判断される可能性があります。専従者と否認されると、親がその年に経費として計上していた専従者給与は全額が必要経費から除外され、追徴課税が発生します。数十万円から数百万円単位の給与を何年分もさかのぼって否認されるケースもあり、影響は決して小さくありません。

専従者になっている家族は、原則として外でのアルバイトは控えるか、空いた時間だけの短時間労働にとどめておくのが安全です。「6か月を超える期間」という要件があるため、逆にいえば年の前半だけ実家を手伝い、後半は外で働くといった変則的な働き方も、専ら従事の要件を満たさなくなるリスクがあります。

#### 【現場のリアル】学生の子どもが繁忙期以外は外でバイトしていて指摘された話

飲食店を営むある個人事業主の方の話です。夜間部に通う息子さんを青色事業専従者として届け出ていましたが、実際には店が忙しい週末だけ手伝い、平日は近所のコンビニで長時間アルバイトをしていました。ある年の税務調査で、コンビニ側の給与支払報告書の情報と突き合わせた結果、店の帳簿に記録されている勤務時間よりも外でのアルバイト時間のほうが明らかに長いことを指摘され、専従者としての実態がないのではないかと詰められたそうです。最終的には店の勤務記録やタイムカードを提示して専従の実態を説明し、大事には至らなかったものの、本人は「専従者給与を経費にするなら、勤務時間を記録に残しておかないと、いざというとき説明のしようがないと痛感した」と話していました。専従者給与を使う場合は、実際の勤務日と時間をメモやタイムカードで残しておくことが、後々の説明材料として役立ちます。


5. 届出書の提出期限、青色事業専従者給与を経費にするための事前手続き

親が自営業・個人事業主の場合、子どもが「専従者給与」をもらっている時の年末調整ルールの完了・申告イメージイラスト

専従者給与を経費として認めてもらうには、事前に税務署へ届出書を提出しておく必要があります。提出していない場合や、期限に間に合わなかった場合は、その年の専従者給与を経費にすることができません。

【国税庁の公式見解・1次情報】
国税庁「青色事業専従者給与に関する届出手続」では、提出期限について次のように説明されています。
原則として『その年の3月15日まで』に提出する必要があり、新たに専従者を有することとなった場合や新規開業の場合は、その日から『2か月以内』に提出することとされています。
出典:国税庁「青色事業専従者給与に関する届出手続」 https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/shinkoku/annai/12.htm

年の途中で子どもが専従者として働き始めた場合や、専従者給与の金額を増やしたい場合は、変更後の届出書を改めて提出する必要があります。届出書に記載した上限金額を超えて支給した分は、たとえ実際に支払っていても経費として認められないため、年の途中で昇給させる予定がある場合は、あらかじめ余裕を持った上限額で届け出ておくのが実務上の工夫です。


6. よくある質問

Q1. 大学生の子どもに専従者給与を払うことはできますか。

昼間部の大学生は、学業が本分であるため「専ら事業に従事している」とは通常認められず、専従者にはなれません。夜間部や通信制の学生、休学中の子どもであれば、実態として事業に専ら従事していると認められれば専従者になれます。

Q2. 専従者給与をもらっている子どもは、国民健康保険や国民年金はどうなりますか。

個人事業主の家族として、原則は自分自身で国民健康保険と国民年金を納付する形になります。支払った保険料は、子ども自身の年末調整で社会保険料控除として全額控除の対象になります。

Q3. 専従者給与を103万円で設定していた過去の分は、さかのぼって123万円まで非課税だったことにできますか。

できません。非課税ラインの引き上げは令和7年分以後の所得税から適用されるもので、それ以前の年に103万円を超えて課税された分がさかのぼって非課税になるわけではありません。今年以降の届出書の金額を見直す際の目安として使ってください。


まとめ、専従者給与のルールは「二者択一」と「専ら従事」を押さえておく

専従者給与をもらっている子どもは、親の確定申告で扶養控除や配偶者控除には入れません。給与の金額にかかわらず、専従者給与を選ぶか通常の扶養控除を選ぶかは完全な二者択一です。令和7年度税制改正により、子ども自身の所得税が非課税になる年収ラインは103万円から123万円に引き上げられており、届出書の金額を長年見直していない家庭は、この機会に一度確認しておく価値があります。専従者の年末調整は親が事業主として自ら行い、源泉徴収票の交付や給与支払報告書の提出まで一般の会社と同じ手続きが必要です。そして専従者として認められる大前提は、その年を通じて事業に専ら従事していることであり、外でのアルバイトを掛け持ちしすぎると専従者資格そのものが否認されるリスクがあります。

制度の細かいルールを一つひとつ確認しながら進めれば、家族で働きながら受けられる税制優遇を無理なく活用できます。年末調整の書類作成をスマホで手早く終わらせたい方は、無料で使える「書けた年末調整」もあわせてご利用ください。

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