「パート先の店長から『年末調整の用紙、書いて出してね』と急に手渡された。うちは夫の扶養に入っているのに、私も別に年末調整をしていいものなのか」
「夫の会社の年末調整にも私の名前と見込み年収を書いているはずなのに、パート先にも書類を出したら二重に申告したことにならないか」
秋になると、スーパーや薬局、飲食店、事務のパートといった勤務先の総務や店長から、扶養控除等申告書や基礎控除申告書といった年末調整の用紙を渡されるパート主婦は多いです。夫の会社の年末調整でも自分の名前と年収の見込みを書いてもらっているだけに、パート先からも書類を求められると、二重に何かをしてしまうのではないかと身構えてしまう気持ちはよく分かります。
パート先に自分自身の年末調整の書類を出すことと、夫の会社の年末調整で夫が配偶者控除を受けることは、そもそも計算の目的が別の制度です。パート先の書類は妻自身のその年の所得税を精算するためのもの、夫の会社の書類は夫自身の所得税を計算するためのものであり、両方に出しても不正にはなりません。むしろパート先に何も出さないと、毎月のパート代から必要以上に高い税金が天引きされ続けてしまいます。
一方で、子どもの扶養控除や生命保険料控除のように、夫婦のどちらか一方しか使えない控除項目を勘違いして両方の年末調整書類に書いてしまうと、翌年になって税務署から是正の連絡が来ることがあります。この記事では、パート先の年末調整と夫の年末調整がそれぞれ何のための手続きなのか、国税庁のタックスアンサーの記載を確認しながら整理し、実際に現場で起きた戸惑いの実例も交えて、申告書のどの欄を書いてどの欄を空欄にすればいいのかまで具体的に見ていきます。
1. なぜ「両方に提出」で正しいのか、甲欄と乙欄の話

結論、パート先と夫の会社、両方に扶養控除等申告書を提出するのが正しい手続きです。パート先の書類は妻自身の天引き計算を「甲欄」にするためのもの、夫の会社の書類は夫自身の配偶者控除の判定のためのものであり、両者は別の制度です。
| 区分 | 提出先 | 目的 | 提出しない場合 |
|---|---|---|---|
| 甲欄(主たる給与) | 扶養控除等申告書を提出した勤務先 | 扶養親族等を考慮した通常の税額で天引き | ― |
| 乙欄(従たる給与) | 申告書を提出していない勤務先 | 一律で高めの税額表を適用 | パート先に未提出だとこちらが適用される |
給与を受け取っている人は、扶養控除等申告書を勤務先に提出する義務があります。国税庁のページには、この申告の対象者について明確な記載があります。
【国税庁の公式見解・1次情報】
国税庁「A2-1 給与所得者の扶養控除等の(異動)申告」では、対象者について次のように説明されています。
『国内において給与の支給を受ける居住者は、源泉控除対象配偶者や扶養親族の有無にかかわらず原則としてこの申告を行わなければなりません。』
出典:国税庁「A2-1 給与所得者の扶養控除等の(異動)申告」 https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/gensen/annai/1648_01.htm
つまり、夫の扶養に入っているかどうかや、パート代がいくらかにかかわらず、パートで給与をもらっている以上、この申告書を出すこと自体が原則になります。ただし、複数の勤務先から給与を受けている場合は提出先が制限されます。
【国税庁の公式見解・1次情報】
同じく「A2-1 給与所得者の扶養控除等の(異動)申告」には、次のように明記されています。
『2以上の給与の支払者から給与の支払を受ける場合には、そのいずれか一の給与の支払者に対してのみ提出することができます。』
出典:国税庁「A2-1 給与所得者の扶養控除等の(異動)申告」 https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/gensen/annai/1648_01.htm
この「いずれか一の給与の支払者」というのが、夫の年末調整とはまったく別の意味を持ちます。パート先が1か所だけなら、その1か所に扶養控除等申告書を出すのが標準です。提出した勤務先での給与は「主たる給与」として扱われ、天引きされる所得税は「甲欄」という比較的低い税額で計算されます。
【国税庁の公式見解・1次情報】
国税庁「No.2520 2か所以上から給与をもらっている人の源泉徴収」では、主たる給与と従たる給与について次のように説明されています。
『「給与所得者の扶養控除等申告書」を提出している人に支払う給与であり、源泉徴収税額は税額表の「甲欄」で求めます。』『主たる給与の支払者以外の給与の支払者が支払う給与であり、源泉徴収税額は税額表の「乙欄」で求めます。』
出典:国税庁「No.2520 2か所以上から給与をもらっている人の源泉徴収」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2520.htm
パート先に何も提出しないと、この申告書が出されていない扱いとなり、天引きの計算は「乙欄」という、扶養親族の人数などを考慮しない一律で高めの税額表が適用されてしまいます。夫の扶養に入っていることと、パート先での天引き計算がどちらの欄になるかは、まったく別の話だということです。パート先の総務から書類を渡されたら、それは「夫の扶養から外れるかどうか」の話ではなく、「パート代の天引き計算を甲欄にしてもらうための手続き」だと捉えれば、迷いなく提出できます。
現場のリアル、夫の扶養に入っているのに出していいのか不安になった総務窓口
薬局でパート勤務を始めて2年目になる方から聞いた話です。10月の終わりに休憩室で店長から扶養控除等申告書を手渡され、記入して総務の窓口に持っていったところ、パートリーダーから「配偶者の有無のところ、旦那さんの扶養に入ってるなら、うちの年末調整に出すのはまずいんじゃないですか」と声をかけられたそうです。悪気のない一言だったものの、その場で「本当に出していいものなのか」と急に不安になり、記入済みの用紙を持ったまま総務の前で立ち尽くしてしまったといいます。結局、その日は提出せずに一度持ち帰り、帰宅後にスマホで国税庁のサイトを調べて、パート先への提出と夫の扶養は別の手続きだと理解してから、翌日改めて総務に出し直したそうです。「聞かれた瞬間は誰でも不安になると思うが、パート先の書類は自分の天引き計算のためのものだと分かってからは、迷わず出せるようになった」と話していました。
2. 妻の年末調整と夫の配偶者控除は別制度、基礎控除は重複ではない
結論、妻がパート先で受ける基礎控除と、夫が自分の会社で受ける配偶者控除は、それぞれ別人の所得税計算の中で完結する別制度であり、二重控除にはなりません。令和7年分からは、配偶者控除の所得要件も引き上げられています。
| 区分 | 令和6年分まで | 令和7年分以降 |
|---|---|---|
| 配偶者控除の対象となる配偶者の合計所得金額 | 48万円以下 | 58万円以下 |
| 給与収入のみの場合の年収換算 | 103万円以下 | 123万円以下 |
| 配偶者特別控除で夫が満額(38万円)を受けられる妻の年収上限 | 150万円 | 160万円 |
パート先の年末調整でパート主婦自身が受けるのは、自分自身の基礎控除です。国税庁のタックスアンサーには、基礎控除について次のような説明があります。
【国税庁の公式見解・1次情報】
国税庁「No.1199 基礎控除」では、次のように説明されています。
『確定申告や年末調整において所得税額の計算をする場合に、総所得金額などから差し引くことができる控除の1つに基礎控除があります。』
出典:国税庁「No.1199 基礎控除」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1199.htm
基礎控除は、所得のある人それぞれに対して用意されている控除です。妻がパート先の基礎控除申告書に自分の合計所得金額を書いて基礎控除を受けることと、夫が自分の会社の年末調整で自分の基礎控除を受けることは、それぞれ別人の所得税計算の中で完結しており、二重控除にはなりません。夫婦それぞれが1人1枠の基礎控除を使うのは、重複ではなく本来の制度どおりの姿です。
一方、夫が受ける配偶者控除は、夫自身の所得税を計算する際に、生計を一にする妻の所得が一定額以下であることを条件に適用される、夫側の控除です。
【国税庁の公式見解・1次情報】
国税庁「No.1191 配偶者控除」では、控除対象配偶者となる条件の一つとして次のように定めています。
『民法の規定による配偶者であること(内縁関係の人は該当しません。)』
また、生計要件については次のように明記されています。
『納税者と生計を一にしていること』
このほか、配偶者の年間の合計所得金額が58万円以下(給与収入のみの場合は123万円以下、令和7年分以後)であることなどが要件とされ、納税者本人の合計所得金額が1,000万円を超える場合は配偶者控除を受けられません。
出典:国税庁「No.1191 配偶者控除」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1191.htm
夫が配偶者控除を受けるための手続きは、夫が自分の会社に提出する基礎控除申告書兼配偶者控除等申告書の中で、妻の年収見込みを書くだけで完結します。妻がパート先に扶養控除等申告書を出すかどうかは、この夫側の手続きに一切影響しません。パート先の総務が知りたいのは妻自身の天引き計算の話であり、夫の配偶者控除の可否を判定しているわけではないのです。
3. 子どもの扶養控除は夫婦どちらか一方のみ、重複するとどうなるか

結論、同じ子どもを夫婦それぞれの扶養控除等申告書に重複して記載することはできません。両方に書いて提出してしまうと、税務署の名寄せで重複が発覚した時点で一方の申告について是正が必要になり、追加の所得税と延滞税が発生します。
夫婦がそれぞれ別の勤務先から給与をもらっている家庭で、実際に間違いが起きやすいのが子どもの扶養控除です。国税庁のタックスアンサーには、複数の所得者がいる場合の扶養控除の所属について、次のような案内があります。
【国税庁の公式見解・1次情報】
国税庁「No.1181 納税者が2人以上いる場合の扶養控除の所属の変更」では、扶養親族の所属を変更する場合の要件として次のように説明されています。
『改めてその所属の異なる記載をした申告書等を提出することによりその所属をさらに変更することはできますが、その場合には、扶養親族を増加させようとする者および減少させようとする者全員がその所属の異なる記載をした申告書等を提出しなければなりません。』
なお、修正申告書や更正の請求書はこの申告書等には含まれず、いずれかの居住者がいったん確定申告書を提出している場合には、扶養親族の所属の変更はできないとされています。根拠法令等として、所得税法施行令第219条、所得税基本通達85-2が示されています。
出典:国税庁「No.1181 納税者が2人以上いる場合の扶養控除の所属の変更」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1181.htm
同じ子どもを、夫の扶養控除等申告書と妻の扶養控除等申告書の両方に書いてしまうことがまさにこの「重複」に当たります。国税庁が公表している法令解釈通達のページでも、同じ世帯に所得者が2人以上いる場合の扱いが整理されています。
【国税庁の公式見解・1次情報】
国税庁の法令解釈通達「2以上の所得者がいる場合の扶養親族等の所属」(所得税法施行令第219条関係)では、同一の親族を重複して申告しない限り、いずれの所得者の扶養親族としても差し支えないとされています。ただし2人以上の居住者が同一人をそれぞれ自己の扶養親族として申告書等に記載した場合、その年にすでに一方の居住者が申告書等の記載でその親族を扶養に入れているときはその居住者の扶養親族とし、いずれの居住者の記載によっても定まらないときは、総所得金額等が最も大きい居住者の扶養親族として取り扱われます。
出典:国税庁「2以上の所得者がいる場合の扶養親族等の所属」 https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/gensen/03/09.htm
夫婦の勤務先どちらの年末調整担当者も、相手の会社に何が書かれているかまでは分かりません。書類上は何も問題なく処理され、両方の会社で控除が適用された状態のまま年末調整が終わってしまいます。ずれが表面化するのは、年明けに税務署の名寄せ処理で同じ子どもが2件の申告書に扶養親族として記載されていることが分かったタイミングです。この場合、後から一方の申告について扶養控除を外す是正が必要になり、追加で所得税を納めることになります。
パート先で扶養控除等申告書を書く際は、控除対象扶養親族の欄に子どもの氏名を書くのは、夫婦のうちその子を扶養に入れると決めた側の書類だけにする、というのが実務上の対処です。もう一方の書類では、その欄を空欄のまま提出します。
現場のリアル、子どもの扶養控除をうっかり両方の年末調整書類に書いてしまった話
小学生の子どもが2人いる共働き家庭の方から聞いた話です。夫婦それぞれの会社から扶養控除等申告書が配られたとき、「せっかくだから」という軽い気持ちで、下の子は夫の申告書に、上の子は自分の申告書に、それぞれ1人ずつ書いて提出したそうです。翌年の初夏になって、夫宛てに税務署から「扶養控除の内容について確認したいことがある」という文書が届き、開けてみると下の子が夫と妻それぞれの年末調整書類の両方に扶養親族として記載されている、という指摘でした。本人としては「1人ずつ分けて書いたのだから重複ではない」というつもりだったのが、実際には別の年の記載で下の子が両方の書類に載ってしまっていたことが原因だったといいます。税務署とのやり取りの末、妻側の扶養控除を取り消す形で是正申告を行い、数万円分の追加の所得税と延滞税を納めることになりました。「扶養控除は子ども1人につき1人の親にしか付けられないという単純なルールを、夫婦で別々に書類を出しているうちに見落としていた。次からは記入前に夫婦で申告書を並べて確認するようにしている」と振り返っていました。
4. 生命保険料控除・地震保険料控除も夫婦で重複できない
結論、生命保険料控除と地震保険料控除は、その保険料を実際に支払った人だけが受けられる控除です。契約者が夫で支払口座も夫名義であれば、妻が自分のパート先の申告書に同じ証明書の金額を書いて提出することはできません。
| 控除項目 | 対象になる人 | 上限の目安 |
|---|---|---|
| 生命保険料控除(No.1140) | 実際に生命保険料・介護医療保険料・個人年金保険料を支払った人 | 各区分ごとに上限あり、合計で最大12万円 |
| 地震保険料控除(No.1145) | 実際に地震保険料を支払った人 | 支払額5万円以下は全額、5万円超は一律5万円 |
保険料控除申告書についても、夫婦間で見落としがちな注意点があります。国税庁のタックスアンサーでは、生命保険料控除と地震保険料控除のいずれも、保険料を実際に支払った人が受けられる控除として説明されています。
【国税庁の公式見解・1次情報】
国税庁「No.1140 生命保険料控除」では、納税者が生命保険料、介護医療保険料および個人年金保険料を支払った場合に、一定の金額の所得控除を受けられると説明されています。
出典:国税庁「No.1140 生命保険料控除」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1140.htm
【国税庁の公式見解・1次情報】
国税庁「No.1145 地震保険料控除」では、納税者が特定の損害保険契約等に係る地震等損害部分の保険料や掛金を支払った場合に、一定の金額の所得控除を受けられると説明されています。控除額は、支払った地震保険料が50,000円以下であればその全額、50,000円を超える場合は一律50,000円です。
出典:国税庁「No.1145 地震保険料控除」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1145.htm
控除の対象になるのは、あくまで「その保険料を実際に支払った人」です。1枚の保険料控除証明書は1契約につき1枚しか発行されないため、控除を受けられるのは基本的にその保険料を口座振替や給与天引きで支払っている契約者側だけになります。夫名義で契約し夫の口座から引き落とされている生命保険を、妻が自分のパート先の保険料控除申告書にも書いて提出してしまうと、実際には妻が保険料を支払っていない契約について控除を申請したことになり、二重控除に当たります。
保険料控除証明書のコピーを取ること自体は珍しくありませんが、実際に金額として記入し控除を申請できるのは、その保険料を負担している側の一度きりです。証明書のコピーを配偶者の勤務先にも渡す場合は、金額欄には記入せず「確認のための共有」にとどめておくのが安全です。
現場のリアル、生命保険料控除証明書のコピーを両方の会社に出してしまった話
夫婦で個人年金保険と学資保険に加入している方の話です。10月に保険会社から控除証明書のハガキが夫婦それぞれの名義で1通ずつ届いたのですが、学資保険については契約者が夫、保険料の引き落とし口座も夫名義の口座だったにもかかわらず、証明書の原本がなぜか妻の職場宛の郵便物と一緒に自宅に届いていました。妻は「うちに来た証明書だから」と、原本のコピーを取って自分のパート先の保険料控除申告書に金額を記入して提出し、後日夫にも証明書のコピーを渡して夫の会社の年末調整にも同じ金額を書いてもらっていたそうです。翌年、夫の会社の給与担当者から「同じ保険の控除が別の証明書番号で2件計上されているように見える」と指摘を受け、調べてみると学資保険の控除がまるまる夫婦両方の年末調整に計上されていたことが分かりました。結局、妻側で提出していた分を取り下げる訂正の手続きを行うことになり、「証明書に自分の名前が書いてなくても、契約者と支払口座が誰なのかを確認してから記入すればよかった」と話していました。
5. パート先へ提出する申告書、どの欄を書いてどの欄を空欄にするか

結論、パート先に提出する扶養控除等申告書は、妻自身の基本情報だけを記入し、源泉控除対象配偶者欄と控除対象扶養親族欄は多くの家庭で空欄のまま提出するのが標準です。
| 記入欄 | 記入内容 | 理由 |
|---|---|---|
| 氏名・住所・生年月日・マイナンバー | 妻自身の情報を記入 | 妻自身の天引き計算に使う基本情報のため |
| 配偶者の有無 | 「有」にチェック | 事実として記入するだけで税額計算には直結しない |
| 源泉控除対象配偶者欄 | 空欄が標準 | 夫の合計所得金額が900万円超(多くのフルタイム勤務で該当)だと記入不可 |
| 控除対象扶養親族(子ども)欄 | 空欄が標準 | 夫側の年末調整で扶養に入れると決めた場合、妻側は空欄にする |
給与所得者の扶養控除等(異動)申告書では、まず自分の氏名、住所、生年月日、マイナンバーを記入し、配偶者の有無の欄は「有」にチェックを入れます。その先にある「源泉控除対象配偶者」の欄は、多くの家庭で空欄のまま提出することになります。この欄に配偶者を書けるのは、記入する本人の合計所得金額が900万円以下であることに加えて、配偶者側の合計所得金額も95万円以下であることが条件だからです。
【国税庁の公式見解・1次情報】
国税庁の確定申告書等作成コーナーの解説ページでは、源泉控除対象配偶者について次のように定義されています。
『源泉控除対象配偶者とは、居住者(合計所得金額が900万円以下)の配偶者でその居住者と生計を一にするもの(青色事業専従者等を除く)のうち、合計所得金額95万円以下である者をいいます。』
出典:国税庁「源泉控除対象配偶者とは」(確定申告書等作成コーナー) https://www.keisan.nta.go.jp/r2yokuaru/ocat2/ocat22/cid550.html
フルタイムで働いている夫の合計所得金額は、ほとんどの家庭で95万円を大きく上回ります。そのため、夫の合計所得が95万円を超えている限り、妻が自分のパート先に出す申告書の源泉控除対象配偶者の欄には夫の名前を書けません。この欄は空欄で正しく、記入漏れではありません。
「控除対象扶養親族」の欄については、前述の通り、子どもを夫婦どちらの扶養に入れるかを夫婦間で決めたうえで、入れないと決めた側の申告書では空欄にします。年収の高い側に入れるのが一般的な考え方ですが、法律上どちらに入れなければならないという決まりはないため、教育費や住宅ローンの控除状況などを踏まえて夫婦で話し合って決めて構いません。決めた内容は、双方の申告書で矛盾なく反映させることが重要です。
基礎控除申告書兼配偶者控除等申告書兼特定親族特別控除申告書兼所得金額調整控除申告書についても、パート先に提出するのは基本的に自分自身の基礎控除申告書の欄だけです。配偶者控除等申告書の欄は、夫が自分の会社に提出する書類の中で夫自身が記入する部分であり、妻の申告書側では空欄のまま提出して問題ありません。保険料控除申告書は、前述の通り自分が実際に支払っている保険料の分だけを記入します。
6. よくある質問
Q1. パート先を2箇所掛け持ちしている場合、両方に扶養控除等申告書を出していいですか。
いいえ。前述の国税庁「A2-1」の通り、扶養控除等申告書を提出できるのは「いずれか一の給与の支払者」だけです。収入の多いメインのパート先にのみ提出し、もう一方のパート先には提出せず、乙欄で天引きしてもらう形になります。控除しきれない扶養親族がある場合は、国税庁「No.2520」にある「従たる給与についての扶養控除等申告書」をサブのパート先に提出する方法もあります。
Q2. 年収が低く、そもそも所得税がほとんど引かれていません。それでもパート先へ提出すべきですか。
提出してください。扶養控除等申告書を提出しておくことで、パート先の給与計算は甲欄で処理され、年間の所得税額が正しく精算されます。提出しない場合は乙欄が適用され、所得税が発生する見込みがなくても毎月一定額が天引きされ続けることになります。あとから確定申告で還付を受けることもできますが、最初から甲欄で処理してもらう方が手間はかかりません。
Q3. 夫の扶養控除等申告書に書いた「配偶者の見込み年収」と、実際のパート代がずれてしまいました。
年末が近づいて実際の年収が見込みと変わった場合は、夫の会社の年末調整で「基礎控除申告書兼配偶者控除等申告書」を提出する時点で、妻の実際の年間所得の見込み額を改めて書き直すことができます。パート先に提出する妻自身の書類とは別の手続きなので、思い出したタイミングで夫の会社の担当者に確認すれば対応してもらえます。
まとめ
パート先から渡される年末調整の書類は、夫の扶養に入っているかどうかとは関係なく、妻自身のパート代にかかる所得税を正しく精算するためのものです。国税庁「A2-1」が示す通り、給与をもらっている人は原則としてこの申告を行う必要があり、提出しないと乙欄という高めの税額表で天引きされ続けてしまいます。夫の会社での配偶者控除の適用も、妻自身の基礎控除の適用も、それぞれ別の人の所得税計算の中で完結する制度なので、両方に提出しても二重控除にはなりません。
一方で、子どもの扶養控除や生命保険料控除・地震保険料控除のように、夫婦のどちらか一方しか使えない控除を、勘違いから両方の年末調整書類に書いてしまうと、国税庁「No.1181」や関連の通達が示す重複禁止のルールに触れ、翌年になって是正の連絡が来ることがあります。子どもをどちらの扶養に入れるか、どの保険料をどちらが控除するかを、夫婦で一度並べて確認してから提出すれば、迷うことなく両方の年末調整を進められます。
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