はじめに

新入社員として働き始め、初めて迎える冬。「会社から年末調整の書類を提出するように言われたけれど、新卒1年目でも年末調整って必要なの?」「初任給からの数ヶ月分しかもらってないけど…」「学生時代のバイト代はどうなるの?」と戸惑っていませんか?
先に押さえておきたいのは、新入社員(1年目)であっても年末調整は必要だという点です。国税庁のタックスアンサー「No.2665 年末調整の対象となる人」(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2665.htm)では、年末調整の対象を「1年を通じて勤務している人」に加えて「年の中途で就職し、年末まで勤務している人」と明記しています。新卒で4月に入社し、そのまま年末まで在籍していれば、この後者にそのまま該当します。
この記事では、新卒1年目が年末調整でつまずきやすい「学生時代のバイト収入の扱い」と「配られた書類のどこに何を書くか」を、国税庁の公式ページの記載に沿って具体的に整理します。
新入社員(1年目)も年末調整の対象になる根拠
年末調整とは何かについて、国税庁は「No.2662 年末調整のしかた」(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2662.htm)で、給与の支払者が源泉徴収した所得税および復興特別所得税の合計額と、その人が1年間に納めるべき税額とを一致させる手続きだと説明しています。毎月の給与から天引きされる源泉徴収額は概算であり、年末に実際の年間給与額で計算し直して差額を精算する、という仕組みです。
同じページでは、年末調整の対象となる給与は「1月1日から12月31日までの間に支払うことが確定した給与」であるとされ、対象者の条件として「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出していることが挙げられています。入社してすぐに配られるあの用紙を出していなければ、そもそも年末調整の土俵に乗らないということです。
なぜ新入社員でも年末調整をやったほうがいいのか
毎月の給与から引かれている所得税は、年間を通じて同じ給与が続くという前提で機械的に計算されているため、賞与の有無や年の途中の入社といった事情までは反映されていません。年末調整で実際の年間所得を基に計算し直すと、天引きされすぎていた分が還付金として12月または1月の給与と一緒に戻ってくることが多くあります。また、年末調整の結果はそのまま翌年の住民税額の算定基礎になるため、正しく申告しないと本来より高い住民税を払うことにもなりかねません。年末調整を会社で済ませておけば、原則として自分で税務署に出向いて確定申告をする必要もなくなります。
【現場のリアル・体験談】「扶養控除等申告書」の意味が分からず同期と顔を見合わせた

入社初日か2日目、総務から茶封筒でどさっと渡される書類の中に「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」というA4用紙が入っている。名前は聞いたことがあっても、大学を出たばかりで「扶養」も「異動」も自分ごととして考えたことがない新入社員は多い。同期入社の何人かで顔を見合わせて「これ、扶養する家族がいないのに書く意味あるの」「異動ってまだ配属も決まってないのに何のこと」と困惑した、という話はよく聞く。
実際には、この書類は独身で扶養家族がいない人でも全員が提出する前提の書類で、「異動」は転勤や引っ越しの意味ではなく、扶養親族の状況が年の途中で変わったときの届け出も兼ねているという書式上の名残に近い。氏名・住所・生年月日・マイナンバーといった基本情報を埋めるだけで用が足りるケースがほとんどなのに、書類名の物々しさだけで身構えてしまい、提出が締切ぎりぎりになる新入社員は現場でも珍しくない。総務側からすれば「独身なら上の欄だけ書いて出してくれればいい」というごく単純な依頼のことが多いので、分からない箇所は空欄のまま抱え込まず、配属先の先輩か人事に一言確認するだけで大半は解決する。
学生時代の「アルバイト収入」はどう扱われるか
新入社員が一番迷いやすいのが、入社前に稼いでいたアルバイト代の扱いです。国税庁の「No.2668 年末調整の対象となる給与」(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2668.htm)は、年の途中で就職した人が就職前に別の会社などから給与を受け取っていた場合、その前の給与も含めて年末調整をすると定めています。ここでいう「別の会社などから受け取った給与」には、学生時代のアルバイト代も含まれます。つまり、入社した年の1月1日から入社直前までのバイト収入があるなら、それは今の会社の給与と合算して1年分の所得として精算する対象になるということです。
さらに「No.2674 中途就職者の年末調整」(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2674.htm)では、前の勤務先の給与額・源泉徴収税額・社会保険料額を確認したうえで年末調整を行うとされ、その確認は前の勤務先が発行する源泉徴収票によって行うとされています。この確認ができない場合は年末調整自体ができず、本人が確定申告で精算することになると明記されています。
バイト先から「源泉徴収票」をもらっている場合
アルバイト先から源泉徴収票を受け取っているなら、それを今の会社の経理・総務に提出するだけで済みます。会社側がアルバイト時代の収入と現在の給与を合算して年末調整をしてくれます。
| 学生時代のバイト収入の状況 | 年末調整での必要な対応 |
|---|---|
| 源泉徴収票が手元にある | 今の会社に提出し、現在の給与と合算して計算してもらう |
| 源泉徴収票がない・もらっていない | アルバイト先の給与担当に連絡し、至急発行を依頼する |
| アルバイト先が複数あった | すべてのアルバイト先の源泉徴収票を集めて提出する |
もし源泉徴収票が提出期限に間に合わなかったら
アルバイト先が倒産していた、担当者と連絡が取れないなど、会社の年末調整の提出期限までにどうしても源泉徴収票が揃わない場合もあります。この場合、会社での年末調整にはアルバイト収入を含めず、国税庁「No.1900 給与所得者で確定申告が必要な人」(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1900.htm)にあるとおり、2か所以上から給与を受けていて年末調整されなかった給与収入と各種所得の合計額が20万円を超えるときは、自分で確定申告をして精算する必要があります。確定申告の受付期間は例年2月16日から3月15日です。提出が遅れそうな時点で、会社の総務に「アルバイト先の源泉徴収票が期限までに間に合わない」と早めに申告しておくと、年末調整から除外する処理をしてもらえます。
初めての年末調整で書類の書き方がわからない…という方へ
源泉徴収票の扱いや申告書の記入欄で迷ったとき、こうした複雑な計算や手書きの書類作成も『書けた年末調整』ならスマホで質問に答えるだけで終わります。新入社員でも迷わず進められるので、勤務先に導入されているか確認してみてください。
無料で申告書を作成してみる【現場のリアル・体験談】バイト収入を書く欄が見当たらず戸惑った

「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を初めて手にした新入社員が次につまずくのが、学生時代のバイト収入をどこに書けばいいのか分からないという点だ。この書類には「バイト収入」という欄はどこにもない。実は、これは書き間違いではなく仕組み上そうなっている。この申告書は扶養親族の有無やマイナンバーなど本人の属性情報を書く用紙で、収入額そのものを記入する欄ではないからだ。バイト時代の収入は、この申告書ではなく、後述する源泉徴収票を経理に提出することで反映される。
もう一つよくある戸惑いが、「給与所得者の基礎控除申告書 兼 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書」の「あなたの本年中の合計所得金額の見積額」欄だ。ここには今の会社からの給与見込み額だけでなく、学生時代のバイト収入も合算した金額を書く必要があるのに、案内文だけを読むと「今年の給与」が今の会社の分だけを指しているように読めてしまう。この欄を今の会社の給与額だけで書いてしまい、後日経理から「バイト分の源泉徴収票と金額が合いません」と指摘を受けて書き直しになった、という話は現場でしばしば起きる。心当たりがある場合は、提出前に経理担当へ「1月から3月分のアルバイト収入も合算して書けばいいですか」と一言確認しておくと手戻りを防げる。
「103万円の壁」の情報は古いかもしれない
学生時代のバイト収入について検索すると「103万円を超えると親の扶養から外れる」という情報が数多くヒットしますが、これは令和6年分までの制度です。国税庁が公表している「令和7年度税制改正による所得税の基礎控除の見直し等について」(https://www.nta.go.jp/users/gensen/2025kiso/index.htm)によると、令和7年分以後の所得税では基礎控除が合計所得金額に応じて58万円から最大95万円に、給与所得控除の最低保障額が55万円から65万円に、それぞれ引き上げられました。これに伴い、扶養親族や同一生計配偶者として認められる合計所得金額の要件も48万円以下から58万円以下に引き上げられており、給与収入だけで見ると、扶養から外れないラインは103万円から123万円に変わっています。
新入社員本人が19歳以上23歳未満で年の途中まで親の扶養に入っていたケースでは、国税庁「No.1177 特定親族特別控除」(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1177.htm)も関係してきます。対象は合計所得金額58万円超123万円以下(給与収入だけなら123万円超188万円以下)の親族で、合計所得金額が58万円超85万円以下(給与収入150万円以下)までなら、以前の特定扶養控除と同額の63万円が控除されます。つまり、学生時代のバイト収入が103万円を超えていても、150万円以下に収まっていれば、その年の親の扶養控除への影響は改正前より緩やかになっているということです。ただし、新卒で4月から通年で給与をもらう年は、バイト収入と新卒後の給与を合わせた年間所得がこの範囲を上回るのが一般的なので、その年の年末調整または確定申告で自分自身が扶養から外れる前提で書類を用意しておくのが安全です。
【現場のリアル・体験談】親の扶養から外れるタイミングを勘違いしていた
学生時代は親の扶養に入っていたという新入社員が見落としがちなのが、「扶養から外れる」タイミングの判定だ。扶養親族に該当するかどうかは、入社した月ではなく、その年12月31日時点の状況とその年1年間の所得の見積額で判定される。ある新入社員は「4月に就職したのだから、扶養から外れるのも4月からだろう」と思い込み、実家の親には何も伝えないまま年末を迎えた。ところが親の会社の年末調整では、前年と同じ感覚で子どもを扶養親族に含めたまま申告書を出してしまっていた。
結果として、親の年末調整の内容と実際の所得状況にずれが生じ、翌年になって税務署から親のもとに扶養控除の見直しを求める連絡が入ることになった。追徴税額そのものは大きな金額ではなかったものの、親は「なぜ確認もなく扶養に入れたままにしていたのか」と困惑し、本人も「先に一言伝えておけばよかった」と振り返っていた。新卒で就職し、年間所得の見込みが扶養の範囲を超えることがはっきりした時点で、早めに実家に「今年から自分は扶養に入らない」と伝えておくだけで、こうしたすれ違いは避けられる。
初任給から天引きされている税金って?
「初任給をもらったとき、手取りが思っていたより少なくて驚いた」という経験はありませんか?
新入社員の給与からは、主に以下のようなお金が天引き(控除)されています。
- 所得税:毎月の給与額に応じて計算される、国に納める税金。
- 雇用保険料:失業した際などに給付を受けるための保険料。
- 健康保険料・厚生年金保険料:※入社月や会社の規定によって、初任給から引かれるか翌月から引かれるかが異なります。
この「毎月引かれている所得税」の合計額と、1年間のトータルの給与から導き出した「本当の所得税額」をすり合わせるのが、年末調整の最大の目的なのです。
新入社員向け年末調整書類の書き方のポイント
新入社員が提出する年末調整の主な書類は以下の3種類です。書類名は堅苦しいですが、新入社員の場合は書くべき欄がかなり絞られます。
1. 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書
国税庁「No.2665」が年末調整の対象要件として提出を求めているのがこの書類です。
- 独身・扶養家族なしの場合は、氏名・住所・生年月日・マイナンバー(会社から提出を指示された場合)などの基本情報を埋めれば完了します。
- 上部の「令和〇年分」の年度表記を、その年に合わせて記入する必要があります。年をまたいだ用紙を使い回して前年のまま出してしまうミスは、実務でも起きがちです。
2. 給与所得者の基礎控除申告書 兼 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書
こちらも全員提出が必要な書類で、基礎控除の適用を受けるための申告を兼ねています。
- 基礎控除申告書の欄には、今の会社からの給与見込み額に、学生時代のアルバイト収入を合算した1年間の給与収入見積額を記入します。「合計所得金額」の欄は収入から給与所得控除を差し引いた金額で、令和7年度税制改正後は給与所得控除の最低保障額が65万円になっているため、書類裏面の早見表もこの改正後の数値で更新されています。手引きの表に当てはめれば計算自体は難しくありません。
- 配偶者控除等申告書・所得金額調整控除申告書の欄は、独身で該当しない場合は空欄のままで問題ありません。
3. 給与所得者の保険料控除申告書
自分で生命保険や地震保険、国民年金保険料を払っている人が提出する書類です。
- 対象になるのは、自分名義で生命保険に加入している人や、学生時代から自分で納めていた国民年金保険料(親が代わりに払った分ではなく自分の口座から払った分)がある人です。国民年金保険料は納付した本人だけでなく、生計を一にする親が代わりに支払った場合は親側の社会保険料控除にできる、という仕組みになっているため、誰が実際に払ったお金かを確認しておく必要があります。
- 保険会社や日本年金機構から10月から11月頃に郵送される控除証明書は、原本またはマイナポータル連携によるデータを添付します。紛失した場合は保険会社のマイページから再発行できることがほとんどです。
新入社員の年末調整でよくある質問
Q. アルバイト収入が年間103万円を超えていた場合、今の会社の年末調整にどう影響しますか。
自分自身の所得税・住民税の計算では、バイト収入と入社後の給与を合算した年間所得全体に課税されるため、103万円という数字そのものは今の会社での年末調整の計算に直接関係しません。影響が出るのは、自分が親の扶養親族から外れるかどうかという別の判定です。前述のとおり、令和7年分以後は扶養親族の所得要件が合計所得金額58万円以下(給与収入123万円以下)に変わっています。
Q. 源泉徴収票をなくしてしまいました。再発行はできますか。
できます。アルバイト先の給与担当・本社経理に連絡すれば、通常は数日から2週間程度で再発行してもらえます。すでに退職して連絡先が分からない場合は、雇用契約書や給与明細に記載された会社の連絡先から辿るか、それでも判明しないときは所轄の税務署に相談すると案内を受けられます。
Q. 年末調整の書類を出し忘れたまま提出期限を過ぎてしまいました。
会社の給与担当にまず正直に伝えてください。多くの会社では1月の給与計算日あたりまで多少の猶予を持たせています。それでも間に合わない場合は、年末調整を受けられず、自分で確定申告(翌年2月16日から3月15日)をして精算することになります。
まとめ 新入社員の年末調整はバイトの源泉徴収票が最初の関門
新入社員(1年目)であっても、国税庁「No.2665」の定める年末調整の対象者に該当し、年末調整は必須の手続きです。天引きされすぎていた所得税が還付金として戻ってくる可能性があるほか、翌年の住民税額の計算にもそのまま反映されます。
入社前の1月から3月にアルバイトをしていた場合は、その源泉徴収票を今の会社に提出し、現在の給与と合算して計算してもらう必要があります(国税庁「No.2668」「No.2674」)。源泉徴収票が期限までに揃わないときは、年末調整からアルバイト収入を除外したうえで、翌年自分で確定申告をすることになります。
独身で保険にも入っていなければ、書類の大半は基本情報を書くだけで終わります。提出期限に間に合うよう、アルバイト先の源泉徴収票や保険の控除証明書は早めに手元に集めておいてください。学生時代のバイト収入が親の扶養控除にどう影響するかについても、今年から扶養に入らない見込みなら、年末を待たず早めに実家へ一言伝えておくと後々のトラブルを避けられます。
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