- 1. 独立した年の所得は、確定申告で給与所得と事業所得を合算して精算する
- 2. 退職した年の給与所得控除は最低65万円が保障される
- 3. 青色申告特別控除65万円は、複式簿記に加えてe-Taxか電子帳簿保存が条件になる
- 4. 独立前に使ったお金は「開業費」として好きな年にまとめて経費化できる
- 5. 退職後に自分で払った国民健康保険料・国民年金保険料は全額が社会保険料控除になる
- 6. 事業所得が赤字でも、給与所得と損益通算すれば源泉徴収された税金が戻る
- 7. 独立直後から小規模企業共済に加入すれば、掛金全額が所得控除になる
- 8. 基礎控除も所得金額に応じて見直されている
- 9. よくある質問(Q&A)
- まとめ:独立1年目は控除の種類が多い分、確定申告で取り戻せる税金も大きい
「今年、会社を辞めて個人事業主として独立したけれど、税金の手続きはどうすればいいのか」
「会社員時代の給料と、独立後の事業の売上は、確定申告でどうやって合算するのか」
長年勤めた会社を退職し、個人事業主やフリーランスとして独立開業する人は、独立1年目の年末が近づくと決まってこの疑問にぶつかる。会社員時代は総務や経理が年末調整をすべてやってくれていたため、税金の手続きを自分で意識したことがない人がほとんどだからだ。
結論を先に言うと、年の途中で退職して独立した場合、退職した会社では年末調整は行われない。退職までの給与所得と、開業後の事業所得は、翌年2月16日から3月15日までの確定申告で自分自身が1本にまとめて申告することになる。会社が天引きしていた所得税は、この確定申告で本来の税額と精算され、払いすぎていた分は還付金として戻ってくる。
この記事では、独立初年度の確定申告の全体像、給与所得控除と青色申告特別控除の仕組み、独立前に使ったお金を「開業費」として計上する方法、退職後に自分で払う国民健康保険料や国民年金保険料の扱い、事業所得が赤字になった場合の損益通算まで、国税庁の公式見解と実際にあったやり取りを交えて整理する。
1. 独立した年の所得は、確定申告で給与所得と事業所得を合算して精算する

年の途中で退職して独立した場合、1年間の所得は「退職までの給与所得」と「開業後の事業所得」の2つに分かれ、この2つを翌年の確定申告で合算して総所得金額を計算する。
1-1. 独立初年度の手続きタイムライン
退職した会社は年末調整を行わず、退職の日以後1か月以内に源泉徴収票を交付する義務を負う。この源泉徴収票の数字を、確定申告書の給与所得の欄にそのまま転記して事業所得と合算する。
| 期間 | 所得区分 | 手元に残る書類 |
|---|---|---|
| 1月1日〜退職日まで | 給与所得 | 退職した会社が発行する源泉徴収票 |
| 開業日〜12月31日まで | 事業所得(売上-必要経費) | 自分でつけた帳簿・領収書 |
| 翌年2月16日〜3月15日 | 上記2つを合算して確定申告 | 確定申告書第一表・第二表 |
【国税庁の公式見解・1次情報】
所得税法第226条第1項は、給与等の支払をする者に対し、年の中途において退職した居住者については、その退職の日以後1か月以内に源泉徴収票を交付しなければならないと定めている。通常の在職者への交付期限(翌年1月31日まで)とは異なり、中途退職者は退職から1か月以内という短い期限が適用される。
出典:所得税法第226条(e-Gov法令検索) https://laws.e-gov.go.jp/law/340AC0000000033
会社が毎月天引きしていた所得税は、確定申告における前払い分として精算され、本来の税額より多く天引きされていた場合はその差額が還付される。
1-2. 開業届・青色申告承認申請書の提出期限
事業を始めるにあたって税務署に提出する「個人事業の開業・廃業等届出書」は、事業開始の日から1か月以内に提出することとされている。あわせて次章で説明する青色申告の届出も期限が決まっているため、退職と開業が重なる時期は、この2枚の届出書の提出期限を先に確認しておくと後々の申告が楽になる。
#### 【現場のリアル】給与所得と事業所得の合算方法が分からず税務署に駆け込んだ話
6月末に10年勤めた広告代理店を退職し、7月からデザイン業として独立した30代男性の話である。会社員時代は毎年11月になれば総務から配られる書類に判子を押すだけで済んでいたため、確定申告というもの自体を人生で一度もやったことがなかった。
翌年2月、国税庁の確定申告書等作成コーナーを開いてみたものの、退職した会社からもらった源泉徴収票の数字をどこに入力すればいいのか、独立後の売上や経費とどう合算されるのかがまったく分からず、画面を行ったり来たりするだけで1時間が過ぎたという。「給与所得の欄と事業所得の欄が別々に出てくるのに、最終的に本当に1つの税額にまとまるのか不安になった」と振り返る。
思い切って最寄りの税務署に電話し、確定申告期間中に設けられている相談会場を予約して出向いた。窓口では源泉徴収票と事業の収支内訳をその場で見せながら、「給与所得控除を引いた後の給与所得と、経費を引いた後の事業所得を、まず両方計算してから足す」という手順を職員に一つずつ確認してもらい、30分ほどで入力を終えることができた。「独学で調べるより先に窓口に行った方が早かった。専門用語が同じ言葉でも自分の状況にどう当てはまるのか、対面で聞かないと確信が持てなかった」と話していた。
2. 退職した年の給与所得控除は最低65万円が保障される
給与所得の金額は、源泉徴収票に記載された「支払金額」から給与所得控除額を差し引いて計算する。令和7年分以後は、給与収入が190万円以下であれば、勤務期間の長短にかかわらず一律65万円の給与所得控除が保障される。
2-1. 令和7年分以降の給与所得控除額
給与収入190万円までは一律65万円、それを超える部分は収入に応じて段階的に控除額が増える。
【国税庁の公式見解・1次情報】
国税庁タックスアンサー「No.1410 給与所得控除」では、給与所得控除額について、令和7年分以後の給与等の収入金額に応じた金額を次のとおり示しています。
「1,900,000円まで 650,000円」
「1,900,001円から3,600,000円まで 収入金額×30%+80,000円」
「3,600,001円から6,600,000円まで 収入金額×20%+440,000円」
「6,600,001円から8,500,000円まで 収入金額×10%+1,100,000円」
「8,500,001円以上 1,950,000円(上限)」
この改正は令和7年12月1日に施行され、令和7年分以後の所得税について適用されます(改正前の令和2年分から令和6年分までは最低保障額が55万円でした)。
出典:国税庁「No.1410 給与所得控除」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1410.htm
2-2. 勤務月数では按分されない
給与所得控除は、勤務した月数で按分される制度ではない。1月から6月まで半年しか働いていなくても、その間の給与収入が190万円以下であれば65万円がそのまま差し引かれる。退職までの給与収入が少ない年ほど、給与所得控除が所得に占める割合は大きくなる。
その上で、事業所得については次章の青色申告特別控除を適用できるため、独立初年度は「給与所得控除」と「青色申告特別控除」という2つの控除を同じ年にそれぞれ使える立場になる。これが、独立した年の確定申告が会社員だけの年や個人事業主だけの年と比べて控除の総額が大きくなりやすい理由である。
3. 青色申告特別控除65万円は、複式簿記に加えてe-Taxか電子帳簿保存が条件になる

事業所得から最大65万円を差し引ける青色申告特別控除は、単に青色申告をしているだけでは満額を使えない。複式簿記による記帳という基本要件に加えて、e-Taxでの申告か電子帳簿保存のどちらかを満たす必要がある。
3-1. 65万円・55万円・10万円を分ける要件
記帳方法と申告方法の組み合わせによって、控除額は3段階に分かれる。
【国税庁の公式見解・1次情報】
国税庁タックスアンサー「No.2072 青色申告特別控除」は、65万円の控除を受けるための要件を次のように説明しています。まず55万円の青色申告特別控除の要件、すなわち不動産所得または事業所得を生ずべき事業を営み、正規の簿記の原則(一般的には複式簿記)により記帳し、貸借対照表・損益計算書等を確定申告書に添付して期限内に提出することをすべて満たした上で、「その年分の事業に係る仕訳帳及び総勘定元帳について、電子帳簿保存を行っていること」または「その年分の所得税の確定申告書、貸借対照表及び損益計算書等の提出を、その提出期限までにe-Taxを使用して行うこと」のいずれかを満たす必要があるとしています。これらの要件を満たさない場合は55万円、簡易な記帳にとどまる場合は10万円の控除になります。
出典:国税庁「No.2072 青色申告特別控除」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2072.htm
3-2. 青色申告承認申請書は開業から2か月以内
独立初年度から青色申告特別控除を使うには、青色申告承認申請書を期限内に提出しておく必要がある。
【国税庁の公式見解・1次情報】
国税庁タックスアンサー「No.2070 青色申告制度」は、新規開業した場合の申請期限について、その年の1月16日以後に新規に業務を開始した場合は「業務を開始した日から2か月以内」に青色申告承認申請書を納税地の所轄税務署長に提出しなければならないと案内しています。
出典:国税庁「No.2070 青色申告制度」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2070.htm
退職と開業のタイミングが重なる時期は、開業届の提出に気を取られて青色申告承認申請書を出し忘れるケースが実際に多い。開業日から2か月というのはあっという間に過ぎるため、開業届を出すその足で一緒に提出しておくのが確実である。期限に間に合わなかった場合、その年は白色申告になり、55万円や65万円の青色申告特別控除は一切使えなくなる。
4. 独立前に使ったお金は「開業費」として好きな年にまとめて経費化できる
会社を辞める前に購入したパソコンや、独立準備のために受講したスクール代、名刺の作成費、事業に関する書籍代などは、事業を開始する前の支出であっても「開業費」という繰延資産として計上できる。開業費のもう一つの特徴は、償却する年やその金額を毎年好きなように選べる「任意償却」が認められている点である。
4-1. 開業費の法的根拠と任意償却の仕組み
開業費は60か月の均等償却と、支出額の範囲内で自由に金額を選べる任意償却のどちらかを選べる。
【国税庁の公式見解・1次情報】
国税庁の質疑応答事例「償却期間経過後における開業費の任意償却」では、繰延資産である開業費の償却について、所得税法施行令第137条第1項第1号及び第3項により、60か月の均等償却か任意償却のいずれかの方法によることとされていると案内されています。任意償却は、繰延資産の未償却残高の範囲内であれば償却する金額に下限が設けられておらず、支出した年に全額を必要経費にすることも、その年は全く償却しないことも認められる取り扱いです。さらに、支出から60か月を経過した後であっても、繰延資産の未償却残高はいつでも償却費として必要経費に算入できるとされています。
出典:国税庁 質疑応答事例「償却期間経過後における開業費の任意償却」 https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/shotoku/04/08.htm
つまり開業費は、開業した年に無理に経費化する必要がない。売上がまだ小さい初年度は経費にせず据え置いておき、事業が軌道に乗って利益が大きく伸びた年にまとめて経費化するという使い方ができる。
4-2. 開業費に含められないもの
商品の仕入代金、事務所の敷金・保証金、1点10万円以上の備品・機材は開業費に含まれない。
商品の仕入れは棚卸資産として売上原価の計算に組み込まれるため開業費にはならず、敷金や保証金は退去時に返還される性質の支出であるため経費そのものに該当しない。10万円以上するパソコンなど、通常の減価償却資産に該当するものも開業費には含まれず、別途減価償却の対象になる。何を開業費に含められるかで迷う場合は、領収書をすべて残した上で税務署や税理士に確認するのが安全である。
#### 【現場のリアル】開業費の任意償却で、利益が伸びた年にまとめて経費化した人の話
会社員時代からWeb制作の副業を続け、退職して個人事業主として独立した40代男性の話である。独立前の半年間で、講座の受講料やノートパソコンの周辺機器、名刺やポートフォリオサイトの制作費など、合わせて30万円ほどを自腹で使っていた。
独立1年目の売上はまだ月によってばらつきが大きく、税理士に相談したところ「開業費は今年無理に経費にしなくても、繰延資産として残しておいて構わない」と言われ、その年は帳簿上「開業費」として計上するだけにとどめ、必要経費には算入しなかった。当時は「経費にできるものをあえて使わないなんてもったいない」という感覚もあったというが、税理士からは「利益が出ていない年に経費を積み増しても節税効果は小さい、利益が伸びて税率が上がりそうな年に使った方が効く」と説明され、納得したという。
3年目に大口の継続案件が決まり、利益が独立後で最も大きくなった年、忘れずに残していたその開業費30万円を一括で必要経費に計上した。「開業した年になんとなく全部使い切っていたら、この年の節税には使えなかった。取っておいて正解だった」と話していた。
5. 退職後に自分で払った国民健康保険料・国民年金保険料は全額が社会保険料控除になる

退職後に自分で市区町村へ納めた国民健康保険料や国民年金保険料、会社の健康保険を任意継続した場合の任意継続保険料は、確定申告で社会保険料控除として全額を所得から差し引ける。
5-1. 対象になる保険料と控除できる金額
支払った社会保険料は、上限なく全額が所得控除の対象になる。
【国税庁の公式見解・1次情報】
国税庁タックスアンサー「No.1130 社会保険料控除」は、社会保険料控除の対象となる保険料として、健康保険・国民年金・厚生年金保険及び船員保険の保険料で被保険者として負担するもの、国民健康保険の保険料又は国民健康保険税などを挙げた上で、「控除できる金額は、その年に実際に支払った金額又は給与から差し引かれた金額の全額です」と案内しています。
出典:国税庁「No.1130 社会保険料控除」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1130.htm
会社員時代は毎月の給与から社会保険料が天引きされ、年末調整で自動的に控除されていたため、社会保険料控除という言葉自体を意識したことがない人が多い。しかし独立後に自分の口座から振り込んだ国民健康保険料や国民年金保険料は、会社が代わりに手続きしてくれるものではなく、確定申告の際に自分で金額を集計して申告しないと控除が適用されない。
5-2. 証明書の保管と添付の要否
国民年金保険料は日本年金機構が発行する控除証明書の添付・提示が必要だが、国民健康保険料は原則として証明書の添付は求められない。
| 保険料の種類 | 証明書の添付・提示 |
|---|---|
| 国民年金保険料 | 日本年金機構発行の控除証明書が必要(10月〜翌年2月に順次送付、e-Taxなら添付省略可・5年間保存) |
| 国民健康保険料(国民健康保険税) | 市区町村が所得情報を把握しているため原則不要 |
| 健康保険の任意継続保険料 | 加入先の協会けんぽ・健康保険組合の案内に従い、納付証明を保管しておくと安心 |
年末に市区町村や日本年金機構から届く控除証明書や納付書の控えを、退職後は捨てずに保管しておく必要がある。
#### 【現場のリアル】国民健康保険料の通知書を見て青ざめた話
会社員として年収500万円ほどを得ていたが、9月末に退職して10月からフリーランスの編集者として独立した30代女性の話である。10月中旬、区役所から届いた国民健康保険料の通知書を開封し、月々の金額の大きさに思わず声が出たという。「会社員時代は給与明細のどこに保険料が書いてあるかすら気にしたことがなかったのに、自分で全額払うとなるとこんなに高いのかと愕然とした」と話す。
不安になって区役所の窓口に相談に行くと、担当者から「今年度の国民健康保険料は前年、つまり会社員として働いていた年の所得をもとに計算されている」と説明を受けた。会社員時代の年収がそのまま保険料の算定基礎になっていることを知り、独立直後で収入が不安定な時期にこの金額を払い続けることへの不安はさらに強まったという。
ただ、その場で担当者から「支払った国民健康保険料は、確定申告のときに社会保険料控除として全額を所得から差し引けますよ」と教えてもらい、少し安堵したそうだ。翌年の確定申告で、退職後に払った国民健康保険料の総額を社会保険料控除の欄にそのまま入力したところ、控除額の大きさに驚いたという。「保険料が高いことへの不満は消えないが、少なくとも税金の計算ではきちんと差し引かれる仕組みになっていることが分かって、多少は納得できた」と振り返っていた。
6. 事業所得が赤字でも、給与所得と損益通算すれば源泉徴収された税金が戻る
独立1年目に事業が赤字だった場合でも、確定申告をしないと損をする。事業所得の赤字は、退職までの給与所得の黒字と損益通算でき、会社が源泉徴収していた所得税が還付されるからである。
6-1. 損益通算の対象になる所得
損益通算の対象になるのは不動産所得・事業所得・譲渡所得・山林所得の4つの所得に生じた赤字のみで、給与所得側の赤字を他の所得から控除する仕組みは基本的に存在しない。
【国税庁の公式見解・1次情報】
国税庁タックスアンサー「No.2250 損益通算」は、各種所得の金額の計算上生じた損失のうち、不動産所得、事業所得、譲渡所得、山林所得の4つの所得に生じた損失についてのみ、総所得金額等を計算する際に他の各種所得の金額から控除できると案内しています。所得税法第69条第1項がこの損益通算の根拠条文にあたります。事業所得に生じた赤字は、この4つの所得の一つとして、給与所得を含む他の所得の黒字から差し引くことができます。一方で、給与所得・配当所得・一時所得・雑所得の計算上生じた損失は、他の所得から控除することはできないとされています。
出典:国税庁「No.2250 損益通算」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2250.htm
出典:所得税法第69条(e-Gov法令検索) https://laws.e-gov.go.jp/law/340AC0000000033
つまり損益通算の方向は一方向で、事業所得の赤字は給与所得の黒字から差し引けるが、その逆、給与所得側に赤字が生じてそれを他の所得から控除するという発想自体が制度上ほぼ存在しない。
6-2. 実務上の注意点
独立1年目で開業費や設備投資がかさみ、事業所得がマイナスになった場合は、確定申告書にその赤字と会社員時代の給与所得をあわせて記載することで、給与から天引きされていた所得税がまとまって還付される可能性がある。「初年度は赤字だから確定申告しなくていい」と考えるのは誤りで、赤字の年こそ確定申告をすることで税金を取り戻せる年になる。
7. 独立直後から小規模企業共済に加入すれば、掛金全額が所得控除になる
独立開業後、中小機構が運営する小規模企業共済に加入すると、支払った掛金の全額が小規模企業共済等掛金控除として所得から差し引かれる。
7-1. 控除できる金額と掛金の範囲
掛金は月額1,000円から70,000円までの間で自由に選べ、支払った全額がその年の所得控除になる。
【国税庁の公式見解・1次情報】
国税庁タックスアンサー「No.1135 小規模企業共済等掛金控除」は、小規模企業共済法の規定による共済契約に基づく掛金などを支払った場合、その支払った金額について所得控除を受けられるとし、「控除できる金額は、その年に支払った掛金の全額です」と案内しています。
出典:国税庁「No.1135 小規模企業共済等掛金控除」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1135.htm
小規模企業共済の掛金は月額1,000円から70,000円までの範囲で500円単位で選べ、掛金を将来受け取る際には退職金がわりの給付にもなる。独立初年度から加入できる制度であり、資金繰りに余裕が出てきた時点で掛金額を見直すことも可能なため、開業と同時に検討しておくと控除の効果を初年度から取り込める。
8. 基礎控除も所得金額に応じて見直されている
令和7年度税制改正により、これまで所得にかかわらず一律48万円だった基礎控除が、合計所得金額に応じて段階的に変わる制度に見直された。
8-1. 令和7年分以降の基礎控除額
合計所得金額が低いほど基礎控除は大きくなり、132万円以下では95万円まで拡大される。
【国税庁の公式見解・1次情報】
国税庁「令和7年度税制改正による所得税の基礎控除の見直し等について」は、令和7年分以後の基礎控除額について、合計所得金額132万円以下の場合は95万円、132万円超336万円以下の場合は88万円、336万円超489万円以下の場合は68万円、489万円超655万円以下の場合は63万円、655万円超2,350万円以下の場合は58万円になると案内しています(改正前はいずれの区分も48万円)。
出典:国税庁「令和7年度税制改正による所得税の基礎控除の見直し等について」 https://www.nta.go.jp/users/gensen/2025kiso/index.htm
独立1年目は給与所得と事業所得の両方が発生し、退職の時期によって年間の合計所得金額が変動しやすいため、自分がどの区分に当てはまるかは確定申告書等作成コーナーで実際に数字を入力してみないと確定しない。基礎控除の金額や適用区分は年分によって変わることがあるため、申告する年の最新の情報を国税庁のサイトで確認するのが確実である。
9. よくある質問(Q&A)
独立初年度の確定申告で特に多い質問は、赤字だった場合の対応、会計ソフトの要否、青色申告の届出を忘れた場合、前職の源泉徴収票を紛失した場合の4点である。
9-1. 確定申告の要否・還付にまつわる疑問
赤字の年ほど確定申告をした方が得になる、というのがこの区分の結論である。
#### Q1. 独立1年目で事業が赤字でした。確定申告した方がいいですか。
した方がよい。前章で見た通り、事業所得の赤字は退職までの給与所得の黒字と損益通算できるため、会社で源泉徴収されていた所得税が確定申告によって還付される可能性がある。赤字だから申告しなくていいと考えるのではなく、赤字だからこそ確定申告で取り戻せる税金がないか確認するべきである。
9-2. 記帳・届出にまつわる疑問
青色申告特別控除を満額使うには、会計ソフトの活用と届出期限の順守がセットで必要になる。
#### Q2. 会計ソフトは必ず使わないといけませんか。
法律上の義務ではないが、青色申告特別控除65万円の要件である複式簿記による記帳や電子帳簿保存を、手書きの帳簿だけで満たすのは現実的に難しい。freee、マネーフォワード クラウド確定申告、弥生会計オンラインなどのクラウド会計ソフトは、銀行口座やクレジットカードの明細を取り込んで複式簿記の帳簿を自動作成できるため、独立初年度で経理の経験がない場合は導入を検討する価値がある。
#### Q3. 青色申告承認申請書の提出期限に間に合いませんでした。今年はどうなりますか。
その年は白色申告になり、55万円や65万円の青色申告特別控除は一切使えない。白色申告でも事業所得の計算や必要経費の計上自体は可能だが、青色申告特別控除の恩恵は受けられない。翌年分から青色申告を適用したい場合は、その年の3月15日までに改めて青色申告承認申請書を提出すればよい。
9-3. 前職とのやり取りにまつわる疑問
源泉徴収票が手元にない場合も、会社側の交付義務を根拠に対応できる。
#### Q4. 前職の源泉徴収票を紛失してしまいました。どうすればいいですか。
退職した会社に依頼すれば再発行してもらえる。源泉徴収票の交付は所得税法第226条で会社に義務づけられており、退職後であっても発行義務そのものがなくなるわけではない。連絡先が分からない、会社が倒産したなどの事情で再発行を受けられない場合は、給与明細の控えをもとに所轄税務署へ相談すれば対応方法を案内してもらえる。
まとめ:独立1年目は控除の種類が多い分、確定申告で取り戻せる税金も大きい
年の途中で会社を辞めて個人事業主として独立した年は、退職までの給与所得と開業後の事業所得を、翌年の確定申告で合算して申告する。給与所得控除は勤務期間にかかわらず最低65万円が保障され、事業所得には要件を満たせば青色申告特別控除の65万円を上乗せできる。独立前に使ったお金は開業費として好きな年にまとめて経費化でき、退職後に自分で払った国民健康保険料や国民年金保険料は全額が社会保険料控除の対象になる。事業所得が赤字であっても、給与所得との損益通算によって天引きされていた所得税が戻ってくる可能性がある。
独立初年度は、会社員だけの年にも個人事業主だけの年にもない特有の控除の組み合わせが使える年である。手元の書類を揃え、期限を守って一つずつ手続きを進めれば、払いすぎていた税金を漏れなく取り戻せる。年末調整や確定申告の手続きをスマホで手早く終わらせたい方は、完全無料で使える「書けた年末調整」をご利用ください。