「今年2回転職して、手元に源泉徴収票が3枚もある。今の会社でまとめて年末調整してもらえるのか」
「前の会社から源泉徴収票がまだ届いていない。このまま年末調整の締め切りを迎えたらどうなるのか」
キャリアアップのための転職、派遣や契約社員の更新、会社都合の退職など、1年のうちに複数回の転職を経験する人は珍しくない。11月に入って年末調整の書類が配られる時期になると、「会社A、会社B、そして今の会社Cの3枚の源泉徴収票がある。これを全部出したら総務に嫌な顔をされるのではないか」「前の会社が源泉徴収票をなかなか送ってくれない」と焦り始める相談が毎年一定数寄せられる。
この記事では、複数の源泉徴収票を今の勤務先で合算して年末調整を受けられる条件、前職の源泉徴収票が届かない場合の対処、年明けに自分で確定申告して精算する手順、そして転職の合間に受け取った失業手当の扱いまで、国税庁の公式情報と実際にあったやり取りを交えて整理する。
1. 源泉徴収票が全部揃うかどうかで、年末調整と確定申告の道筋が分かれる

転職回数がいくつであっても、退職した会社すべての源泉徴収票が今の勤務先の年末調整の締め切りまでに手元に揃えば、今の勤務先で合算した年末調整を受けられる。1枚でも間に合わなければ、今の勤務先では自社分だけの年末調整で終わらせ、年明けに自分で確定申告をして残りを精算することになる。
| 状況 | とるべき手続き |
|---|---|
| 前職すべての源泉徴収票が締め切りまでに揃っている | 今の勤務先へ全て提出し、まとめて合算年末調整を受ける |
| 1枚でも届いていない・入手できない | 今の勤務先では自社分のみ年末調整を受け、年明けに確定申告で精算する |
この振り分けを間違えると、税金を多く払ったままになったり、逆に本来受けられる控除を取りこぼしたりする。まずは今、手元に何枚の源泉徴収票があり、何枚が未着なのかを数えるところから始めるのが確実だ。
前職の給与を年末調整に含めるのは会社の任意ではない
前職で扶養控除等申告書を提出して給与を受け取っていた人については、その給与を含めて年末調整を行うことが国税庁の案内で明確に示されており、会社側が独自の判断で省略できる手続きではない。
【国税庁の公式見解・1次情報】
国税庁「No.2674 中途就職者の年末調整」には、次のように記載されています。
「就職前にその年中にほかの会社などから給与の支払を受けたことがあったかどうかを確認します。ほかの会社などに『給与所得者の扶養控除等(異動)申告書』を提出して支払を受けた給与がある人については、それらの給与を含めて年末調整を行う必要があります。」
「ほかの会社などから支払を受けた給与の金額やその給与から徴収された所得税や社会保険料の額を確認します。この確認は、その人がほかの会社などから交付を受けた『給与所得の源泉徴収票』などで行います。この確認ができないときには、年末調整を行うことはできず、その人が確定申告により所得税及び復興特別所得税の精算を行うことになります。」
出典:国税庁「No.2674 中途就職者の年末調整」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2674.htm
つまり、前職の源泉徴収票を今の会社に提出することは、総務担当者への個人的なお願いごとではなく、税額を正しく計算するために国税庁が求めている確認作業そのものである。3枚あろうと4枚あろうと、扶養控除等申告書を提出して働いていた勤務先の分は、原則としてすべて合算の対象になる。
2. 今の勤務先で合算年末調整を受けるための2つの条件
合算年末調整を受けるには、扶養控除等申告書を今の勤務先に提出していること、そして年末まで在籍して勤務し続けていることの2条件を満たす必要がある。
【国税庁の公式見解・1次情報】
国税庁「No.2665 年末調整の対象となる人」には、12月に行う年末調整の対象者について次のように記載されています。
「会社などに1年を通じて勤務している人」「年の中途で就職し年末まで勤務している人」
ただし、次のいずれかに該当する人は除かれます。
「1年間に支払うべきことが確定した給与の総額が2,000万円を超える人」
「災害減免法の規定により、その年の給与に対する所得税及び復興特別所得税の源泉徴収について徴収猶予や還付を受けた人」
出典:国税庁「No.2665 年末調整の対象となる人」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2665.htm
給与年収2,000万円を超える人は最初から対象外になる
年収が2,000万円を超える人は、前職の源泉徴収票が何枚あっても年末調整そのものの対象にならず、確定申告一択になる。
前職・現職を合算した年収が2,000万円を超える見込みの人は、そもそも年末調整の対象から外れるため、源泉徴収票を何枚提出しても会社側で合算計算はしてもらえない。この場合は最初から確定申告を行う前提で書類を揃えておくとよい。転職を繰り返しつつ年収が高い層では実際に起こり得るケースなので、心当たりがある人は総務に確認しておくと二度手間にならない。
#### 【現場のリアル】書類を全部出したら怒られると思っていた話
同じ年に2回転職し、3社目で働き始めた20代の男性から聞いた話である。11月に年末調整の案内が配られたとき、手元には会社Aと会社Bの源泉徴収票が2枚あったが、「短期間しかいなかった会社の分まで出したら、総務の人に『こんなに転職してるのか』と思われそうで気まずい」と感じ、しばらく提出をためらっていたという。
締め切り前日になってようやく意を決し、扶養控除等申告書の提出時に2枚の源泉徴収票をまとめて総務の担当者に手渡した。担当者は特に表情を変えることもなく「はい、確認しますね」とだけ言って書類を受け取り、拍子抜けするほどあっさり処理が終わったそうだ。「勝手に気まずいと思い込んでいたけれど、向こうにとってはただの事務作業でしかなかった」と振り返っていた。12月の給与明細には、3社分を合算した還付額がまとまって反映されていたという。
3. 前職の源泉徴収票が届かない・入手できない時の対処

前職の源泉徴収票がどうしても届かない場合は、まず前の会社へ直接再発行を依頼し、それでも応じてもらえなければ税務署へ「源泉徴収票不交付の届出書」を提出する。
【国税庁の公式見解・1次情報】
国税庁「F5-4 源泉徴収票不交付の届出手続」のページでは、この手続きについて案内があります。給与等の支払を受ける者が源泉徴収票の交付を受けられない場合、届出書を作成し、給与明細書等の写しがあればそれを添付のうえ、源泉徴収票を交付しない給与の支払者の所轄税務署長へ提出することで、随時この届け出を行うことができるとされています。
出典:国税庁「F5-4 源泉徴収票不交付の届出手続」 https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/hotei/23100017.htm
届出書を出すまでの3ステップ
前職への催促、それでも動かない場合の届出書提出、そして今の勤務先への状況共有という3ステップで、締め切りに間に合わなくても慌てず対応できる。
| ステップ | やること |
|---|---|
| ステップ1 | 前職の担当者へ源泉徴収票の再発行・送付を直接依頼する |
| ステップ2 | 応答がない・拒否された場合、給与明細のコピーを添えて所轄税務署へ「源泉徴収票不交付の届出書」を提出する |
| ステップ3 | 今の勤務先には「前職分は間に合わないため、自社分のみで年末調整してほしい」と早めに伝える |
今の勤務先への年末調整の締め切りに間に合わなかったとしても、慌てて未確認の金額を書いて提出する必要はない。ステップ3の通り、いったん自社分のみで年末調整を終えてもらい、前職の分は年明けの確定申告でまとめて精算すれば税額は変わらない。
#### 【現場のリアル】前の会社に3回電話してようやく届いた話
派遣先を2回変えて年内に3社を経験した30代の女性の話である。11月末になっても、半年ほど前に契約が切れた派遣元から源泉徴収票が届かず、担当だった営業に電話をかけても「確認して折り返します」と言われたきり連絡が来ない日が続いた。
年末調整の締め切りが翌週に迫った段階で、もう一度同じ番号に電話をかけ、「今の会社の年末調整に必要なので、今週中に発送してもらえないか」とはっきり伝えたところ、その日のうちに担当者から折り返しがあり、3日後に自宅へ源泉徴収票が届いたという。「催促するのは気が引けたけれど、黙って待っているだけでは埒が明かないと分かった」と話していた。結果的に締め切りの2日前に間に合い、今の勤務先で3社分を合算した年末調整を受けられたそうだ。もし間に合わなかった場合は、税務署への届出書提出と年明けの確定申告に切り替えるつもりだったという。
4. 年明けの確定申告で複数枚の源泉徴収票を合算する手順
会社での合算年末調整に間に合わなかった場合でも、年明け2月16日以降に国税庁の確定申告書等作成コーナーで、複数の源泉徴収票を1枚ずつ順番に入力すれば正しい税額に精算できる。
確定申告書等作成コーナーでの入力の流れ
確定申告書等作成コーナーの給与所得の入力画面では、源泉徴収票は1枚ごとに個別の収入として登録し、入力を終えるたびに「収入を追加する」操作でもう1枚を登録する、という作業を源泉徴収票の枚数分だけ繰り返す。
- 手元の源泉徴収票(前職分・現職分すべて)と各種控除証明書、マイナンバーカードを準備する。
- 確定申告書等作成コーナーの給与所得の入力画面で、1枚目の源泉徴収票の支払金額・源泉徴収税額・社会保険料等の金額を入力し、登録する。
- 続けて「収入を追加する」を選び、2枚目、3枚目と同じ要領で入力・登録を繰り返す。
- 全て入力し終えたら、還付される金額を確認し、還付先の口座を指定して送信する。
マイナンバーカードを使ったe-Taxでは、勤務先がe-Taxで源泉徴収票を提出している場合に限り情報が自動入力される場合もあるが、対応していない勤務先の分は自分で金額を転記する必要がある。手元の源泉徴収票と入力画面の数字を1つずつ照らし合わせながら進めれば、入力自体はさほど難しくない。
確定申告で税金が戻ってくる主な理由
転職の合間に無給の期間があったり、前職で高めの税率で天引きされていたりすると、1年間の実際の所得に対して源泉徴収された税額が多くなりやすく、確定申告で精算すると還付が発生しやすい。
月々の給与から天引きされる源泉徴収税額は、その月の給与が1年間続くと仮定して機械的に計算されている。転職の間に無給期間があった場合や、賞与の出方が会社ごとに違う場合は、年間の合計所得で計算し直す確定申告の方が実際の税額に近づき、結果として払いすぎた分が還付されるケースが多い。ただし還付額は年収や控除の内容によって個人差が大きいため、金額を保証するような案内はできない。
#### 【現場のリアル】スマホで初めて確定申告書等作成コーナーを開いた話
同じ年に3回転職し、最終的に無職の期間を挟んで4社目に落ち着いた20代後半の男性の話である。年末調整の締め切りまでに1社目の源泉徴収票がどうしても届かず、今の勤務先では自社分のみで年末調整を終えていた。
年明けの2月、スマホで確定申告書等作成コーナーを初めて開き、給与所得の入力画面で1社目、2社目、3社目、4社目と順番に源泉徴収票の数字を打ち込んでいった。途中、社会保険料の金額をどの欄に入れるべきか迷って画面を何度も行き来したが、4枚すべての入力を終えて画面に表示された還付見込み額を見たとき、「4社分をバラバラのまま放置していたら、この金額は戻ってこなかったのか」と実感したという。申告から3週間ほどで、指定した口座に還付金が振り込まれたそうだ。
5. 転職の合間に受け取った失業手当は確定申告に含めない

ハローワークから受け取る失業等給付(基本手当)は雇用保険法第12条により非課税と定められているため、確定申告書には記載しない。
【e-Gov法令検索・1次情報】
雇用保険法第12条(公課の禁止)は、次のように定めています。
「租税その他の公課は、失業等給付として支給を受けた金銭を標準として課することができない。」
出典:雇用保険法第12条(e-Gov法令検索) https://laws.e-gov.go.jp/law/349AC0000000116
確定申告書に失業手当の入力欄がない理由
失業手当は所得税法上の課税対象そのものに含まれないため、確定申告書等作成コーナーの給与所得や雑所得の入力画面のどこにも入力する欄が用意されていない。
確定申告で入力するのは、あくまで会社から支払われた「給与所得」の源泉徴収票の内容だけである。転職の合間にハローワークで求職活動をして基本手当を受け取っていたとしても、その金額を給与所得や雑所得として申告書に加える必要はない。逆に、誤って収入欄に入力してしまうと本来より税額が多く計算されてしまうため、源泉徴収票と失業手当の受給資格者証を混同しないよう手元で分けて保管しておくとよい。
6. よくある質問(Q&A)
複数回の転職者から寄せられる質問で特に多いのは、短期間だけ働いた勤務先の扱いと、前職の源泉徴収票が最後まで手に入らなかった場合の対応の2点である。
転職・源泉徴収票の合算に関するよくある質問
短期のアルバイトも含めて給与を受け取った勤務先の源泉徴収票はすべて合算対象になり、前職の分がどうしても揃わない場合は確定申告で精算する。
#### Q1. 1週間だけ働いた短期アルバイトの源泉徴収票も合算が必要ですか。
必要になる。1日でも給与の支払いを受けた勤務先であれば、その分の源泉徴収票も合算年末調整または確定申告の対象になる。金額が少額だからといって除外してよいという規定はない。
#### Q2. 前の会社が源泉徴収票をどうしても発行してくれません。どうすればいいですか。
まず前職に直接再発行を依頼し、それでも応じてもらえない場合は、給与明細のコピーなど支払いを受けたことが分かる資料を添えて、所轄税務署へ「源泉徴収票不交付の届出書」を提出する。届出後は税務署から前職へ是正の連絡が入ることが多い。
#### Q3. 会社で合算年末調整をした場合と、自分で確定申告をした場合とで、還付される税額に差は出ますか。
原則として差は出ない。どちらも同じ1年間分の給与と控除をもとに税額を再計算する手続きであり、計算の仕組み自体は同じである。会社での合算が締め切りに間に合うかどうかで、手続きの窓口が会社になるか自分になるかが変わるだけだと考えてよい。
#### Q4. 確定申告で精算する場合、いつから手続きできますか。
例年2月16日から3月15日ごろが確定申告の受付期間だが、還付申告(税金が戻ってくる場合の申告)に限っては、対象となる年の翌年1月1日から5年間、この期間にかかわらず提出できる。前職の源泉徴収票が2月の受付開始より遅れて届いた場合でも、慌てる必要はない。
まとめ:源泉徴収票を揃えて、合算年末調整か確定申告で確実に精算する
転職を重ねて源泉徴収票が3枚以上ある年は、まず今の勤務先の締め切りまでにすべての源泉徴収票が揃うかどうかを確認する。揃えば今の勤務先に全部提出して合算年末調整を受け、1枚でも間に合わなければ今の勤務先では自社分のみで年末調整を終え、年明けに自分で確定申告をして残りを精算する。前職から源泉徴収票が届かない場合は、直接の催促と税務署への届出書提出という2段階の手立てがある。転職の合間の失業手当は非課税なので、申告書には含めなくてよい。
書類の枚数が多いと面倒に感じるかもしれないが、手順を分けて考えれば、やることは1枚ずつ数字を確認して入力するだけである。年末調整や確定申告の書類作成をスマホで手早く終わらせたい方は、完全無料で使える「書けた年末調整」をご利用ください。