年金受給者の「確定申告不要制度」、年収400万円以下・他所得20万円以下の条件とあえて申告した方が得するケース

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目次

「年金をもらっているけど、確定申告って毎年しなきゃいけないものなの」

「年金収入が400万円以下なら申告しなくていいって聞いたけど、うちの親はどうなんだろう」

2月に入ると税務署の申告会場にシニア世代の列ができますが、実はその中のかなりの割合の人が、そもそも申告する義務のない人たちです。国税庁は高齢者の事務負担を減らすために「公的年金等に係る確定申告不要制度」という仕組みを設けていて、年金収入400万円以下・年金以外の所得20万円以下という条件を満たせば、税務署に何も出さなくても法律上問題ありません。

ところがここに落とし穴があります。申告しなくていいというのは義務がないという意味であって、申告すれば数万円単位のお金が戻ってくる人が、毎年かなりの数、申告せずに終わっているのです。加えて、所得税の確定申告が不要でも住民税の申告だけは別に必要になるケースがあり、これを知らずに放置して役所から連絡が来て慌てる人もいます。

この記事では、確定申告不要制度の条件を国税庁の一次情報で確認したうえで、あえて申告した方が得する4つのパターン、住民税申告が必要になる境目、そして源泉徴収票のどこを見れば自分がどちらに当てはまるかまで、実際の手続きに沿って整理しました。


1. 確定申告不要制度の2条件、所得税法第121条第3項が定めている中身

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確定申告不要制度の対象になるかどうかは、次の2つの条件を両方とも満たしているかで決まります。

条件具体的な範囲
条件1、公的年金等の収入金額が年間400万円以下国民年金、厚生年金、企業年金、共済年金などの受給額の合計
条件2、公的年金等に係る雑所得以外の所得が年間20万円以下アルバイトの給与所得、副業の雑所得、不動産所得などの合計
前提条件公的年金等の全部について源泉徴収がされていること
【国税庁の公式見解、1次情報】
国税庁タックスアンサー「No.1600 公的年金等の課税関係」では、確定申告不要制度について次のように説明されています。
『公的年金等の収入金額が400万円以下であり、かつ、その年分の公的年金等に係る雑所得以外の所得金額が20万円以下である場合には確定申告の必要はありません』
出典、国税庁「No.1600 公的年金等の課税関係」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1600.htm

この制度の法律上の根拠が所得税法第121条第3項です。同項は、公的年金等に係る雑所得を有する居住者について、その年中の公的年金等の全部について源泉徴収がされている場合において、公的年金等の収入金額が400万円以下であり、かつその年分の公的年金等に係る雑所得以外の所得金額が20万円以下であるときは、確定申告書の提出を要しない旨を定めています(e-Gov法令検索、所得税法 https://laws.e-gov.go.jp/law/340AC0000000033 で条文を確認できます)。日本の年金受給者の多くがこの2条件に収まるため、実務上は「申告しなくていい人がかなり多い」状態になっています。

雑所得としての年金の金額は、受け取った年金の額面そのものではなく、そこから公的年金等控除額を差し引いた後の金額で判定します。国税庁の速算表では、たとえば65歳以上で一定の収入区分に当てはまる場合、雑所得の金額は「収入金額×75%-275,000円」という式で計算され、年金支払時にはこの控除後の金額をもとに5.105パーセントの所得税が源泉徴収されています(出典、国税庁「No.1600 公的年金等の課税関係」同上)。控除額は年齢と収入区分によって表が分かれているため、正確な金額は源泉徴収票に記載された年間の受給額を国税庁の速算表に当てはめて確認する必要があります。

#### 【現場のリアル】源泉徴収票を前に、申告が必要かどうか1時間迷った話

1月末に届いた「公的年金等の源泉徴収票」を見ながら、確定申告をすべきかどうか判断できずにいた方の話です。年金の支払金額の欄には370万円ほどと印字されていて、400万円の基準は下回っているように見えたものの、去年から始めた家庭菜園の野菜をネット直売所で細々と売っていた分の売上と、去年秋に短期のシルバー人材センターの仕事で得た給与が合わせてどれくらいになるのか、自分では正確に把握できていなかったといいます。手元の通帳と源泉徴収票、シルバー人材センターから届いた支払調書を並べてテーブルに広げ、電卓を叩きながら1時間近く唸っていたそうです。結局、野菜の売上とシルバー人材センターの給与所得を合算しても20万円には届かないことが分かり、今年は申告不要だと確定できました。本人は「400万円という数字だけ覚えていて、年金以外の所得の合計にも上限があることをすっかり忘れていた、両方の条件をきちんと足し算しないと安心できないと分かった」と話していました。


2. あえて確定申告した方が「税金が戻る」4つのケース

申告義務がないことと、申告して得をするかどうかは別の話です。年金から所得税が源泉徴収されている人は、次の4つのいずれかに当てはまれば、確定申告(還付申告)によってその税金の一部または全部を取り戻せる可能性があります。

パターン内容
1、医療費控除・セルフメディケーション税制年間の医療費が10万円(所得200万円未満なら所得の5%)を超えた場合、または対象の市販薬購入費が12,000円を超えた場合
2、寄附金控除(ふるさと納税)ワンストップ特例を使わずに寄付した場合、寄付額-2,000円が控除の目安
3、各種保険料控除介護保険料、国民健康保険料、生命保険料、地震保険料などのハガキが源泉徴収票に反映されていない場合
4、扶養控除・障害者控除等の適用漏れ日本年金機構への扶養親族等申告書の提出が遅れた、または内容に誤りがあり、本来より高い所得税が源泉徴収されていた場合

医療費控除の金額は、実際に支払った医療費の合計から保険金などで補填される金額を引き、さらに一定額を差し引いて計算します。

【国税庁の公式見解、1次情報】
国税庁タックスアンサー「No.1120 医療費を支払ったとき(医療費控除)」では、控除額の計算式について次のように説明されています。
『(実際に支払った医療費の合計額-保険金などで補塡される金額)-10万円』
なお、その年の総所得金額等が200万円未満の人は、10万円の部分がその5%相当額になります。
出典、国税庁「No.1120 医療費を支払ったとき(医療費控除)」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1120.htm

対象になる医療費の範囲は、自分自身だけでなく生計を一にする配偶者やその他の親族のために支払った医療費も含まれます。同居していない子どもが親の入院費を立て替えて払った場合も、生計を一にしていれば親の医療費控除に含められることがあるため、家族間でまとめて申告する余地がないか確認しておく価値があります。

判断の起点になるのが、1月に日本年金機構から届く「公的年金等の源泉徴収票」の「源泉徴収税額」欄です。ここに数千円から数万円の金額が記載されていれば、その範囲内で還付を受けられる可能性があります。逆にこの欄が0円であれば、そもそも天引きされた所得税がないため、控除を申告しても戻ってくるお金はありません。

#### 【現場のリアル】医療費控除を申告して43,000円戻ってきた話

前年に人工股関節の手術で3週間入院し、退院後も月2回のリハビリ通院を続けていたある方の話です。医療費なんて申告しても大した額にはならないだろうと思い込んでいたものの、念のため入院時の領収書、通院の交通費のメモ、薬局のレシートを紙袋一つにまとめて保管していたそうです。確定申告の時期に税務署の相談会場へその紙袋ごと持ち込み、職員に「これ全部使えますか」と聞きながら1件ずつ確認してもらったところ、医療費控除の明細書に記入すべき金額が想定より大きく膨らみ、最終的に所得税の還付額は43,000円になったといいます。本人は「入院費だけで判断してリハビリの交通費や薬代を計算に入れていなかったら、この金額にはならなかった、レシートを捨てずに取っておいてよかった」と振り返っていました。

#### 【現場のリアル】扶養親族等申告書の提出が遅れて所得税を多く引かれていた話

同居している配偶者が障害等級に該当することになり、障害者控除の対象になったにもかかわらず、日本年金機構への「扶養親族等申告書」の提出が締切に間に合わなかった方の話です。翌年に届いた源泉徴収票を見ると、前年よりも源泉徴収税額が明らかに増えていて、最初は「年金額が増えたからだろう」と気にも留めていなかったといいます。たまたま地域の年金相談会で職員に源泉徴収票を見せたところ、「障害者控除が反映されていないようですが、申告書は出されましたか」と指摘され、そこで初めて提出が遅れていたことに気づいたそうです。結局その年は確定申告をやり直して障害者控除を適用し、多く引かれていた分の所得税を取り戻すことになりました。本人は「申告書が届いたら締切を確認してすぐ出す、それだけのことで毎年の税金が変わってくると知って、今は届いたその日に書いて出すようにしている」と話していました。


3. 所得税の確定申告が不要でも、住民税の申告は別に必要なことがある

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確定申告不要制度は、あくまで所得税および復興特別所得税に関する特例です。住民税の申告義務は、これとは別の基準で判断されます。

【国税庁の公式見解、1次情報】
国税庁「公的年金等に係る申告不要制度について」では、次のように説明されています。
『申告が必要ない場合であっても、住民税の申告が必要な場合があります』
出典、国税庁「公的年金等に係る申告不要制度について」 https://www.keisan.nta.go.jp/r7yokuaru/cat2/cat21/cat214/cid049.html

具体的には、源泉徴収票に記載されている社会保険料控除や基礎控除以外の控除、たとえば生命保険料控除や地震保険料控除、扶養控除の追加などを新たに適用したい場合や、公的年金等に係る雑所得以外の所得(20万円以下で所得税の申告は不要でも)がある場合は、お住まいの市区町村へ住民税の申告書を別途提出する必要が出てきます。反対に、所得税の確定申告書を税務署に提出した場合は、その内容が地方公共団体へ電子的に送られる仕組みになっているため、改めて住民税の申告書を出し直す必要はありません。つまり「所得税の申告はしなくていいから住民税も何もしなくていい」とは限らず、控除を追加したいのか、それとも何もしないのかで、必要な手続きが変わってくるということです。判断に迷う場合は、お住まいの市区町村の住民税担当課に、源泉徴収票を手元に置いたうえで問い合わせるのが確実です。

#### 【現場のリアル】住民税の申告を忘れていて役所から電話が来た話

年金収入と、月数回の家庭教師のアルバイト収入があった方の話です。アルバイト分の所得は年間15万円ほどで20万円の基準を下回っていたため、所得税の確定申告はしなくていいと判断し、そのまま何もせずに数か月が過ぎていたといいます。ところが5月になって、市役所の住民税担当課から自宅に電話がかかってきて、「アルバイト収入について住民税の申告書の提出をお願いします」と告げられ、最初は「確定申告はしなくていいはずなのに、なぜ」と戸惑ったそうです。担当者からは「所得税の申告が不要でも、雑所得や給与所得がある場合は住民税の申告が別に必要になります」と説明を受け、そこで初めて所得税と住民税は別の手続きだと理解できたといいます。結局、市役所の窓口で住民税の申告書に記入して事なきを得ましたが、本人は「申告しなくていいという情報だけを覚えていて、それが所得税だけの話だとは思っていなかった、電話が来るまで気づけなかった」と話していました。


4. 遺族年金・障害年金は非課税、400万円の判定に一切含めない

遺族年金や障害年金を受け取っている場合、その金額は確定申告不要制度の400万円という基準に一切含めません。これらは法律上の非課税所得だからです。

日本年金機構の案内では、次のように説明されています。

【日本年金機構の公式見解、1次情報】
日本年金機構「源泉徴収票について」では、次のように説明されています。
『障害年金や遺族年金は、所得税および復興特別所得税の課税対象となっていないため(非課税)』
また、障害年金・遺族年金を受給している人には公的年金等の源泉徴収票そのものが送付されないことも案内されています。源泉徴収票が送付されるのは、老齢年金または退職を支給事由とする年金を受けている人だけです。
出典、日本年金機構「源泉徴収票について」 https://www.nenkin.go.jp/faq/jukyu/uketori/tsuchisho/gensen/20140421-05.html

したがって、老齢基礎年金や老齢厚生年金、企業年金といった課税対象の年金と、非課税の遺族年金・障害年金を両方受け取っている人は、400万円の判定に使うのは課税対象の年金額だけです。非課税分は最初から計算に入れる必要がありません。年金の種類が複数ある場合は、まず自分が受け取っている年金のどれが課税対象で、どれが非課税なのかを、日本年金機構から届く通知や源泉徴収票の有無で切り分けておくと、判定の際に迷わずに済みます。


5. 源泉徴収票のどこを見れば「申告すべきか」が分かるか

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1月中旬から下旬にかけて日本年金機構から届く「公的年金等の源泉徴収票」には、判断に必要な情報がまとまっています。確認する順番は次のとおりです。

  1. 支払金額の欄を見て、年間の年金収入合計が400万円以下かどうかを確認する
  2. 年金以外に給与や副業、不動産所得などがあれば、その合計が20万円以下かどうかを確認する
  3. 源泉徴収税額の欄を見て、金額が入っているかどうかを確認する(0円なら還付の余地なし、金額があれば控除による還付の可能性あり)
  4. 社会保険料控除や配偶者控除など、源泉徴収票にすでに反映されている控除の内容を確認する
  5. 医療費控除や生命保険料控除など、源泉徴収票に反映されていない控除で追加できるものがないか確認する
源泉徴収税額欄の状態判断の目安
0円と記載天引きされた所得税がないため、確定申告をしても還付されるお金はない
数千円から数万円の金額が記載その範囲内で、医療費控除や保険料控除の申告により還付を受けられる可能性がある

3と5を踏まえて、天引きされた所得税がある人は、控除項目に心当たりがないかを一つずつ確認してみる価値があります。


6. 過去の分もさかのぼれる、還付申告は5年間有効

医療費控除などの申告を、今年うっかり忘れてしまった場合でも、あきらめる必要はありません。還付申告には時効までにまだ余裕があるケースがほとんどです。

【国税庁の公式見解、1次情報】
国税庁タックスアンサー「No.2030 還付申告」では、還付申告書の提出時期について次のように説明されています。
『還付申告書は、その年の翌年1月1日から5年間提出することができます』
出典、国税庁「No.2030 還付申告」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2030.htm

つまり、去年分どころか、5年前の分まで今からでも医療費控除や保険料控除の申告が可能です。ただし青色申告特別控除など、法定申告期限までの提出が要件になっている一部の特例は、還付申告であっても期限内の提出が必要になる点は別途注意が必要です。年金受給者の還付申告の大半は該当しませんが、不動産所得などがある人は念のため確認しておくとよいところです。


7. よくある質問

#### Q1、遺族年金や障害年金をもらっていますが、400万円の判定に入りますか。

入りません。遺族年金や障害年金は所得税法上の非課税所得のため、400万円の判定には一切含めません。老齢基礎年金や老齢厚生年金、企業年金など、課税対象になる年金の金額だけで判定します。

#### Q2、過去の年の医療費控除も、今から確定申告できますか。

できます。還付申告はその年の翌年1月1日から5年間提出が可能です。過去に大きな医療費を支払った年があれば、当時の領収書や明細が残っているか確認してみてください。

#### Q3、確定申告不要制度の対象なのに確定申告をした場合、何か不利になりますか。

不利益はありません。申告不要制度はあくまで「申告しなくてもよい」という免除の規定であり、申告すること自体を禁止するものではありません。控除を適用すれば還付を受けられる可能性があるだけで、申告したことで税額が増えることは基本的にありません。

#### Q4、年金以外の所得が20万円をわずかに超えてしまいました。どうすればいいですか。

その場合は確定申告不要制度の条件から外れるため、原則として確定申告が必要になります。年金の源泉徴収税額と、年金以外の所得にかかる税額をあわせて正しく申告し直す必要があるため、税務署の相談窓口や確定申告書等作成コーナーで、源泉徴収票とその他の所得の資料を持参して相談することをおすすめします。

#### Q5、確定申告不要制度を使った場合、住民税は自動的に計算されますか。

所得税の確定申告書を提出していない場合、住民税の計算に必要な情報は市区町村側にも十分に届いていない可能性があります。源泉徴収票に記載されている控除以外に何か追加したい控除がある場合や、年金以外の所得がある場合は、お住まいの市区町村へ住民税の申告書を別途提出する必要があるかどうかを確認してください。


まとめ、不要制度を理解したうえで、戻る税金は取りこぼさない

年金収入400万円以下、年金以外の所得20万円以下という2条件を満たしていれば、所得税法第121条第3項に基づき確定申告は不要です。ただしこれは義務がないというだけで、源泉徴収税額の欄に金額が入っている人は、医療費控除や保険料控除、ふるさと納税の申告によって、その一部または全部を取り戻せる可能性があります。加えて、所得税の申告が不要でも住民税の申告だけは別に必要になることがあるため、控除を追加したい場合や年金以外の所得がある場合は、お住まいの市区町村への確認を忘れないようにしてください。遺族年金や障害年金は非課税のため400万円の判定には含めず、還付申告は5年前の分までさかのぼって申告できます。

1月に届く源泉徴収票は、開封せずに引き出しにしまい込むにはもったいない書類です。源泉徴収税額の欄に金額が入っているかどうか、まずはそこだけでも確認しておくと、その後の判断がずっとしやすくなります。

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