ふるさと納税と住宅ローン控除は併用できるか、枠の食い合いの正体と防ぎ方

ふるさと納税と住宅ローン控除は併用できるか、枠の食い合いの正体と防ぎ方のイメージイラスト
目次

「住宅ローンを組んでマイホームを買ったばかりだけど、今年もふるさと納税をしていいのだろうか」

「確定申告をすると、住宅ローン控除とふるさと納税の枠が食い合って損をすると聞いたけれど、具体的に何が起きているのか分からない」

住宅ローン控除とふるさと納税は、どちらも会社員が使える減税制度の中で効果が大きいものです。だからこそ、この二つを同じ年に併用しようとすると、片方の枠が減るのではないかという不安を抱く人が少なくありません。実際、確定申告を選んだ場合には、条件によって住宅ローン控除の一部が引ききれずに切り捨てられてしまうことがあります。一方でワンストップ特例制度を使えば、この食い合いはそもそも起きません。

この記事では、なぜ確定申告だと枠がぶつかることがあるのか、その仕組みを国税庁と総務省の公式情報にもとづいて説明したうえで、ワンストップ特例と確定申告のどちらを選ぶべきか、住宅ローン控除1年目にふるさと納税をする際の実務的な注意点まで整理しました。


1. ふるさと納税と住宅ローン控除は、税金から引かれる「段階」がそもそも違う

ふるさと納税と住宅ローン控除は併用できるか、枠の食い合いの正体と防ぎ方の制度・手続きイメージイラスト

食い合いが起きるかどうかを理解するには、まずこの二つの制度が税金の計算のどの段階で効いてくるのかを知っておく必要があります。

【国税庁の公式見解・1次情報】
国税庁「No.1150 一定の寄附金を支払ったとき(寄附金控除)」では、寄附金控除について次のように説明されています。
『納税者が国や地方公共団体、特定公益増進法人などに対し、「特定寄附金」を支出した場合には、所得控除を受けることができます。これを寄附金控除といいます』
控除額については、『(1)その年に支出した特定寄附金の額の合計額 (2)その年の総所得金額等の40パーセント相当額』のいずれか低い金額から2千円を差し引いた金額が寄附金控除額になると案内されています。
出典:国税庁「No.1150 一定の寄附金を支払ったとき(寄附金控除)」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1150.htm

ふるさと納税は、地方公共団体に対する寄附金として、この特定寄附金にあたります。確定申告でふるさと納税の適用を受ける場合、この寄附金控除は「所得控除」として、税率をかける前の課税所得そのものを引き下げる形で効いてきます。

一方、住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)は「税額控除」で、課税所得に税率をかけて算出した所得税額から、直接その金額を差し引く仕組みです。

つまり、寄附金控除は税金を計算する前段階、住宅ローン控除は税金を計算した後段階で効く控除だということです。確定申告でふるさと納税をすると、まず寄附金控除で課税所得が下がり、その結果として算出される所得税額そのものが小さくなります。住宅ローン控除はこの小さくなった所得税額から差し引かれるため、控除しきれずに余ってしまう金額が、ふるさと納税をしなかった場合より増えることがあります。この引ききれずに余った住宅ローン控除は、翌年度の住民税から控除される仕組みになっています。


2. 引ききれなかった住宅ローン控除は住民税で拾われるが、上限がある

所得税から引ききれなかった住宅ローン控除は、翌年度の個人住民税からも控除されます。ただし、この住民税側の控除には上限額が設けられています。

【総務省の公式見解・1次情報】
総務省「所得税から住宅ローン控除額を引ききれなかった方」では、住民税から控除できる限度額について次のように説明されています。
通常のケースでは『所得税の課税総所得金額等の5%(最高97,500円)』が限度となり、令和4年中に入居し消費税率10%の住宅の取得等について一定期間内に契約した特定のケースでは『所得税の課税総所得等の7%(最高136,500円)』が限度になります。
また、この住民税への繰り越し控除を受けるために、納税者本人が市区町村へ改めて申告する必要はないとも案内されています。
出典:総務省「所得税から住宅ローン控除額を引ききれなかった方」 https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_zeisei/czaisei/czaisei_seido/090929.html

住宅ローン残高が大きく、そもそも所得税だけでは控除しきれず、住民税側の97,500円(または136,500円)の上限をすでに使い切っている人は、ふるさと納税を確定申告で行っても失うものは基本的にありません。もともと切り捨てられる予定だった部分が切り捨てられるだけだからです。逆に、住民税側の上限にまだ余裕がある状態でふるさと納税によって所得税額がさらに下がると、その分だけ住民税への繰り越し額が増え、上限を超えた部分が本当に消えてしまいます。これが、確定申告でふるさと納税をすると住宅ローン控除と食い合うと言われる正体です。

自分がどちらの側にいるかは、源泉徴収票の源泉徴収税額の欄と、住宅ローンの年末残高証明書に書かれた借入残高から住宅ローン控除の見込み額を計算し、両者を突き合わせてみないと正確には分かりません。5章で、ふるさと納税のシミュレーションを行う際の実務的な注意点を説明します。

#### 【現場のリアル】住宅ローン控除1年目、確定申告書を初めて書いて焦った話

マイホームを購入して初めての確定申告に臨んだ、ある会社員の話です。会社員生活が長く、確定申告というもの自体を人生で一度も経験したことがなかったため、税務署から届いた住宅借入金等特別控除額の計算明細書を前に、どこに何を書けばいいのか分からず固まってしまったといいます。国税庁の確定申告書等作成コーナーを使えば入力自体は進むものの、住宅ローンの年末残高証明書のどの数字を画面のどの欄に転記すればいいのかで何度も手が止まり、結局、土曜日の午後を丸々使って申告書を仕上げたそうです。あとになって「途中でふるさと納税の寄附金受領証明書の入力欄も出てきて、ここで一緒に入力していいのか、それとも別に何か手続きが必要なのか分からず、結局そのまま両方入力して提出した」と振り返っていました。実際には、ふるさと納税と住宅ローン控除は同じ確定申告書の中でまとめて入力してよく、別々に手続きする必要はありません。ただ、初めての確定申告と初めての住宅ローン控除が重なる年は作業量そのものが多いため、平日の夜ではなく休日にまとまった時間を確保して臨んだほうがいい、というのが本人の実感でした。


3. ワンストップ特例を使えば、この食い合いはそもそも起きない

ふるさと納税と住宅ローン控除は併用できるか、枠の食い合いの正体と防ぎ方の計算・シミュレーションイメージイラスト

ワンストップ特例制度を使うと、ふるさと納税の控除は所得税をまったく経由せず、住民税だけで完結します。

【総務省の公式見解・1次情報】
総務省「ふるさと納税のしくみ 税金の控除について」では、ワンストップ特例制度について次のように説明されています。
ワンストップ特例の申請をした場合は、『所得税からの控除は行わず、控除額の全額を住民税から控除』される仕組みになっており、この特例は平成27年4月1日以降のふるさと納税から適用されています。
出典:総務省「ふるさと納税のしくみ 税金の控除について」 https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_zeisei/czaisei/czaisei_seido/furusato/mechanism/deduction.html

ワンストップ特例では、ふるさと納税の寄附金控除がそもそも所得税の課税所得を引き下げないため、住宅ローン控除が引かれる所得税額にも一切影響しません。住宅ローン控除は住宅ローン控除だけで、ふるさと納税はふるさと納税だけで、それぞれ別の枠から控除される形になります。マイホームを購入した年以降、住宅ローン控除とふるさと納税を両方使いたい場合、ワンストップ特例を選べる状況であれば、それを使うのがもっとも確実に両方を満額受け取れる方法です。

ただし、ワンストップ特例には適用条件があります。

【国税庁の公式見解・1次情報】
国税庁「ふるさと納税をされた方へ」(令和7年分確定申告特集)では、次のように説明されています。
『ふるさと納税先の自治体数が5団体以内で、各ふるさと納税先の自治体にふるさと納税ワンストップ特例の申請を行った方は、原則として確定申告は不要です』
出典:国税庁「ふるさと納税をされた方へ」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/tokushu/keisubetsu/furusato.htm

寄付先が6自治体以上になった場合や、医療費控除など他の理由で確定申告そのものが必要になった場合は、ワンストップ特例は使えなくなります。


4. 確定申告をすると、出していたワンストップ特例の申請は無効になる

住宅ローン控除の1年目のように確定申告が必須になる年は、それ以前にワンストップ特例の申請書をすでに提出していたとしても、その申請は自動的に無効になります。

【総務省の公式見解・1次情報】
総務省「ふるさと納税のしくみ ふるさと納税の流れ」では、次のように説明されています。
確定申告を行うと、『ふるさと納税のワンストップ特例制度の適用対象ではなくなり、その年分の全額について、その年の住所地での税務申告が必要』になります。
出典:総務省「ふるさと納税のしくみ ふるさと納税の流れ」 https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_zeisei/czaisei/czaisei_seido/furusato/mechanism/procedure.html

つまり、年内に自治体5団体以内でワンストップ特例の書類を出し終えていても、住宅ローン控除の初年度で確定申告書を提出した時点で、そのワンストップ特例の効力は失われます。確定申告書の中で、寄付したすべての自治体への寄附金控除をあらためて記載しないと、ふるさと納税分の控除がまるごと抜け落ちてしまうため注意が必要です。

住宅ローン控除は、給与所得者の場合、最初に適用を受ける年だけ確定申告が必要で、2年目以降は年末調整で処理できます。

【国税庁の公式見解・1次情報】
国税庁は「年末調整で住宅借入金等特別控除の適用を受ける方へ」というページで、2年目以降に住宅ローン控除を年末調整で受けるための申告書の記載方法や必要書類を案内しています。この申告書と、控除を受けられる年数分の証明書類は、最初の年分について税務署へ確定申告を行った後、税務署から本人宛てにまとめて送付されます。
出典:国税庁「年末調整で住宅借入金等特別控除の適用を受ける方へ」 https://www.nta.go.jp/publication/pamph/shotoku/jukari/index.htm

住宅購入1年目は確定申告が避けられないため、ワンストップ特例も使えません。この年にふるさと納税をする場合の考え方は、次の章で説明します。


5. 住宅ローン控除1年目、ふるさと納税はどう考えればいいか

ふるさと納税と住宅ローン控除は併用できるか、枠の食い合いの正体と防ぎ方の完了・申告イメージイラスト

住宅ローン控除の初年度は確定申告が必須で、ワンストップ特例は使えません。この年にふるさと納税の上限額いっぱいまで寄付してしまうと、2章で説明した仕組みにより、住宅ローン控除の一部が住民税側の上限(97,500円、または136,500円)を超えて切り捨てられてしまう可能性があります。

#### 【現場のリアル】ふるさと納税の上限額を計算アプリで出し直した話

マイホームを購入した年に、ふるさと納税のポータルサイトにある上限額シミュレーターを使って寄付額を決めようとした、ある会社員の話です。年収や家族構成を入力して表示された上限額を見て、その金額いっぱいまで複数の自治体に寄付を済ませたところ、翌年の確定申告で税理士に相談する機会があり、「このシミュレーターの入力項目に住宅ローン控除の欄があったはずだが、入力したか」と聞かれてはっとしたそうです。使っていたシミュレーターには住宅ローン控除がある場合の任意入力欄が用意されていたにもかかわらず、住宅ローンを組んだばかりで気が回らず、その欄を空欄のまま計算していたことに気づいたといいます。あらためて住宅ローン控除の見込み額を入力して計算し直すと、表示される上限額が最初の結果より数万円ほど低く出て、すでにその金額を超えて寄付していたことが分かりました。結果として、超えた分の寄付は住民税の控除枠から漏れ、実質的な自己負担が2,000円では収まらなかったそうです。本人は「住宅ローン控除ありの年は、シミュレーターの入力項目を一つも飛ばさずに埋めることが何より大事だと痛感した」と話していました。ふるさと納税の上限額シミュレーターを使う際は、住宅ローン控除の入力欄が用意されているものを選び、見込み控除額を必ず入力したうえで結果を確認することが欠かせません。

上限額ぴったりまで寄付するのではなく、シミュレーターで算出された上限額に対して、ある程度の余白を残して寄付額を決めておくと、計算上の見込みと実際の控除額に多少のズレがあっても、自己負担が2,000円を超えてしまうリスクを抑えられます。何割引いておけば絶対に安全という一律の答えはありませんが、住宅ローンの年末残高証明書が届いたあとにもう一度シミュレーションをやり直し、余白を確認してから寄付を進める人が多いようです。

2年目以降は年末調整で住宅ローン控除が完結するため、ふるさと納税はワンストップ特例を使えば、確定申告そのものが不要になり、住民税の枠だけで両方の制度を満額受けられます。


6. どちらを選ぶべきか、状況別の考え方

ここまでの内容を、状況別に整理すると次のようになります。

状況選ぶべき方法理由
住宅ローン控除2年目以降で、寄付先が5団体以内ワンストップ特例所得税を経由しないため、住宅ローン控除への影響が一切ない
住宅ローン控除1年目(初年度)確定申告(強制)住宅ローン控除の適用そのものに確定申告が必須で、ワンストップ特例は自動的に無効になる
医療費控除など、他の理由で確定申告が必要確定申告ワンストップ特例と併用できないため、確定申告書内でふるさと納税分もあわせて記載する
寄付先が6団体以上確定申告ワンストップ特例の適用要件(5団体以内)から外れる

確定申告を選ぶ、あるいは選ばざるを得ない場合は、住民税側の上限額(97,500円または136,500円)を意識しながらふるさと納税の寄付額を決めることが、枠の食い合いを避ける唯一の実務的な対処法になります。


7. よくある質問(Q&A)

Q1. 住宅ローン控除の1年目に確定申告をしたら、その年のふるさと納税はどうなりますか。

確定申告書の中で、寄付したすべての自治体への寄附金控除をあわせて記載する必要があります。ワンストップ特例の申請書をすでに提出していても、確定申告をした時点でその申請は無効になるため、確定申告書側に記載を忘れると、ふるさと納税分の控除がまるごと反映されません。

Q2. 2年目以降は、会社の年末調整とワンストップ特例だけで両方の制度が完結しますか。

はい。住宅ローン控除は、税務署から送られてくる年末調整用の申告書と、金融機関から届く年末残高証明書を会社に提出すれば処理できます。ふるさと納税は寄付先が5団体以内であれば、ワンストップ特例の申請書を各自治体に提出することで、確定申告なしに住民税から満額控除されます。

Q3. 年収がどれくらいあれば、確定申告でも枠の食い合いは起きませんか。

年収だけでは判断できません。実際に効いてくるのは年収そのものではなく、所得税額と住宅ローン残高から算出される住宅ローン控除の見込み額との関係です。所得税額に対して住宅ローン控除の見込み額が小さく収まっている人ほど食い合いは起きにくく、逆に住宅ローン残高が大きく所得税額があまり高くない人ほど注意が必要です。判断に迷う場合は、ワンストップ特例が使える状況であれば、それを選ぶのが確実です。

Q4. ふるさと納税の上限額シミュレーターは、住宅ローン控除ありの年もそのまま使って大丈夫ですか。

住宅ローン控除の入力欄があるシミュレーターを選び、見込み控除額を必ず入力してください。住宅ローン控除の欄がない、またはその項目を空欄のまま計算すると、実際より高い上限額が表示され、寄付しすぎてしまう恐れがあります。

Q5. 控除がきちんと反映されているか、自分で確認する方法はありますか。

5月から6月頃に届く住民税の課税決定通知書に、寄附金税額控除と住宅借入金等特別税額控除の金額がそれぞれ記載されています。この金額を、寄附金受領証明書や年末残高証明書から自分で計算した見込み額と照らし合わせれば、控除が想定どおり反映されているか確認できます。金額の見方に不安がある場合は、通知書を持って市区町村の税務課の窓口に問い合わせれば、内訳を確認してもらえます。


まとめ、順番の違いを知っていれば怖い制度ではない

ふるさと納税の寄附金控除は所得控除として税額計算の前段階で効き、住宅ローン控除は税額控除として税額計算の後段階で効きます。確定申告でふるさと納税を行うと、この順番の違いによって住宅ローン控除が住民税側の上限(97,500円、または136,500円)を超えて切り捨てられることがありますが、ワンストップ特例を使えば、ふるさと納税の控除は住民税だけで完結するため、この食い合いはそもそも起きません。

住宅ローン控除の1年目は確定申告が必須でワンストップ特例が使えないため、ふるさと納税の上限額シミュレーターに住宅ローン控除の見込み額を必ず入力したうえで、ある程度の余白を残して寄付額を決めるのが安全です。2年目以降は年末調整とワンストップ特例の組み合わせで、両方の制度を手間なく満額受けられます。仕組みの順番さえ分かっていれば、身構えるほど複雑な制度ではありません。

おすすめ便利ツール
スマホで5分!年末調整の申告書を自動作成

年末調整の書類作成をスマホで手早く終わらせたい方は、無料で使える『書けた年末調整』もあわせてご利用ください。

無料で申告書を作成してみる
この記事を友達や同僚にシェアする

年末調整で迷っている方に役立つ情報を届けてみませんか?

🔍 お悩み・キーワード検索

他の年末調整の疑問・用語を調べる

全160本の解説コラムから、知りたい単語ですぐに見つけられます(入力すると下に即時表示されます)。

お悩み解決コラム一覧(全160記事)を見る 申告書作成ツール(するんと入力)をはじめる トップページへ戻る
記事URLをクリップボードにコピーしました!