年末調整の時期になると配られる「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」。書類の名前からして難しそうで、げんなりしてしまいますよね。「独身だし、養っている家族もいないから、自分には関係ないのでは?」「どこを書けばいいの?白紙で出してもいい?」と迷っている方も多いはずです。
実務上の結論としては、独身で扶養家族がいなくても、「この書類の提出は必須」です。しかし安心してください。独身(扶養なし)の方が書く場所は、「自分の基本情報」などごく一部のみ。残りの広大な記入欄はすべて空欄でOKです。
空欄でいい項目と、例外として書く必要があるケースも紹介するので、サッと読んで手際よく完了させてしまいましょう!
独身・扶養家族なしでも「扶養控除等申告書」の提出は必須?

【国税庁の公式見解・1次情報】
国税庁タックスアンサー「No.1180 扶養控除」では、控除対象扶養親族となる要件について『生計を一にする親族(配偶者を除く)で、合計所得金額が48万円以下である人』などと定められています。
出典:国税庁 タックスアンサー No.1180「扶養控除」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1180.htm
この規定があるため、扶養控除等(異動)申告書の記入欄の大半は「扶養親族がいる人」を前提に設計されています。独身で申告する扶養親族がいない人にとって、書類の8割が白紙になるのは制度上当然のことなのです。
「扶養控除」という名前がついているため、扶養する家族(子どもや配偶者、親など)がいない独身者には無関係に思えるかもしれません。しかし、この申告書は会社員であれば「全員が提出しなければならない重要な書類」です。
なぜ扶養家族がいなくても提出が必要なのでしょうか?
その理由は、この書類が「会社に年末調整をしてもらうためのチケット」のような役割を果たしているからです。会社は、この書類を受け取ることで「この従業員は自社で年末調整を行う」と判断し、毎月の給与から正しい税額を天引きする(甲欄適用)ことができます。
もし提出しないと、会社はあなたを「別の会社をメインで働いている人(または年末調整の対象外)」として扱い、税率が高い基準(乙欄適用)で所得税を計算することになってしまいます。結果として、本来払わなくてもよい高い税金を引かれ、手取りが減ってしまう可能性があります。「扶養がいない=白紙で未提出」は絶対にNGだと覚えておきましょう。
【現場のリアル】提出を後回しにして乙欄で引かれた新入社員
入社して間もない新卒社員が、この申告書を「どうせ独身だし関係ないだろう」と机の引き出しに入れたまま提出期限を過ぎてしまったという話を、ある企業の経理担当者から聞いたことがあります。翌月の給与明細を見て「先月より手取りが2万円近く少ない」と経理に駆け込んできたそうですが、原因は単純で、申告書が未提出のまま乙欄で源泉徴収されていたことでした。乙欄は本来、2か所以上から給与を受け取っている人などに適用される高い税率の表で、扶養の有無に関係なく機械的に多く天引きされます。
慌てて申告書を提出しても、その月の給与計算にはもう間に合わないことが多く、結局は次の給与、あるいは年末調整までその高い税額のまま我慢することになります。経理担当者いわく「独身だから空欄でいいと思って後回しにする人ほど、逆に提出を忘れて損をしている」とのこと。書く欄が少ない書類だからこそ、期限内にサッと出してしまうのが一番の得策です。
【結論】独身(扶養なし)が書くべき項目は「基本情報」だけ!
独身で、誰も扶養していない(扶養家族がいない)場合、書く場所は用紙の一番上にあるブロックだけです。
それ以外の複雑な記入欄は、すべて「空欄(白紙)」で問題ありません。「ここ、書かなくて大丈夫かな?」と不安になる必要はありません。
以下に、ブロックごとの対応をまとめました。
| 書く場所(ブロック) | 独身(扶養なし)の対応 |
|---|---|
| ① 基本情報(氏名・住所など一番上の欄) | 必ず記入する |
| ② 源泉控除対象配偶者(A) | 空欄でOK |
| ③ 控除対象扶養親族(B) | 空欄でOK |
| ④ 障害者、寡婦、ひとり親又は勤労学生(C) | 該当する場合のみ記入(※後述) |
| ⑤ 他の所得者が控除を受ける扶養親族等(D) | 空欄でOK |
| ⑥ 16歳未満の扶養親族 | 空欄でOK |
| ⑦ 退職手当等を有する配偶者・扶養親族 | 空欄でOK |
※書式年度によってアルファベットや配置が若干異なる場合がありますが、基本構造は同じです。
ご覧の通り、ほとんどの欄は、配偶者(妻や夫)や子ども、養っている親がいる人向けの項目です。独身の方にとっては、この書類の8割以上は「自分には関係ないエリア」なのです。
各項目の書き方を具体的に解説

では、唯一書かなければならない一番上の「基本情報」ブロックの書き方を詳しく見ていきましょう。ここさえ埋めれば完了です!
所轄税務署長等・市区町村長
会社の所在地を管轄する税務署名と、あなたが住んでいる市区町村名を書く欄です。
ここは「会社側があらかじめ印字しているか、会社がまとめて記入するケースがほとんど」です。もし空欄で「自分で書いて」と指示された場合は、お住まいの管轄税務署と市区町村名を調べ記入してください。
給与の支払者の名称(氏名)・所在地(住所)など
会社の名前、住所、法人番号を書く欄です。
こちらも基本的には会社側が記入・印字する部分ですので、自分で書く必要はほぼありません。
あなたの氏名・フリガナ・マイナンバー(個人番号)
自分の名前とフリガナを書きます。ちなみに、以前は必要だった「押印(ハンコ)」は現在廃止されているため、サインだけでOKです。
「マイナンバー(個人番号)」については要注意です。情報漏洩を防ぐため「すでにマイナンバーを提出済みの場合は書かないでください」と指示する会社が増えています。会社の案内に必ず従いましょう。
あなたの住所又は居所
「来年の1月1日時点」で住んでいる予定の住所を書きます。
年末調整は来年の住民税の計算にも使われるため、「来年の元日」にどこに住んでいるかが重要になります。年末年始に引っ越す予定がある方は、新しい住所を書くよう注意してください。
生年月日・世帯主の氏名・あなたとの続柄
自分の生年月日(和暦)を記入します。
「世帯主」とは、その家計の主な収入を得ている人のことです。
- 一人暮らしで自分が世帯主の場合:自分の名前を書き、続柄は「本人」とします。
- 実家暮らしなどで親が世帯主の場合:親の名前を書き、続柄は「父」や「母」などとします。
配偶者の有無
独身ですので、「無」に〇をつけます。これを忘れる方が意外と多いので、しっかりチェックしましょう。
「空欄でいいとは分かっても、細かい文字を読んだり、手書きで住所を書いたりするのは面倒くさい…」
「ハンコがいるのかマイナンバーがいるのか、毎年わからなくなる…」
こんな複雑な書類作成や面倒な確認作業も、『書けた年末調整』ならスマホで簡単な質問にポチポチと答えるだけで終わります。
独身(扶養なし)の方なら、最短1分で年末調整の入力が完了。ペーパーレスなので、もう紙とペンを用意する必要もありません。会社がまだ紙の書類だけで運用している場合は、担当者に導入を相談してみるのも一つの方法です。
独身でも「空欄」にしてはいけない3つの例外パターン
基本的には一番上の基本情報ブロックだけでOKですが、独身であっても以下の3つのケースのいずれかに当てはまる場合は、中段の「C:障害者、寡婦、ひとり親又は勤労学生」の欄に記入が必要です。これを書き忘れると、本来受けられるはずの税金の割引(控除)が受けられなくなってしまいます。
1. 勤労学生である
働きながら学校に通っている学生(一定の所得以下)の場合、「勤労学生控除」を受けられ、税金が安くなります。「C」欄の「勤労学生」にチェックを入れます。
国税庁タックスアンサー「No.1175 勤労学生控除」によると、控除の対象となるのは合計所得金額が75万円以下で、かつ自己の勤労によらない所得(利子や配当など)が10万円以下であることなどの要件を満たす学生です。控除額は27万円です。
出典:国税庁 タックスアンサー No.1175「勤労学生控除」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1175.htm
2. ひとり親である
未婚のまま子どもを育てているシングルマザー・シングルファザーなどで、一定の所得以下の場合は、「ひとり親控除」の対象になります。「C」欄の「ひとり親」にチェックを入れます。
国税庁タックスアンサー「No.1171 ひとり親控除」では、現に婚姻をしていないことなどの一定の要件を満たし、生計を一にする子(総所得金額等が48万円以下)がいる人のうち、合計所得金額が500万円以下である人が対象とされています。控除額は35万円です。
出典:国税庁 タックスアンサー No.1171「ひとり親控除」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1171.htm
3. 自分自身が障害を持っている
自分自身に障害がある場合、「障害者控除」の対象になります。障害手帳の等級などに応じて「一般の障害者」か「特別障害者」にチェックを入れ、右側の空欄に手帳の種類や交付日、等級などを記載します。
国税庁タックスアンサー「No.1160 障害者控除」によれば、障害者控除の額は一般の障害者に該当する場合で27万円、特別障害者に該当する場合で40万円と定められています。
出典:国税庁 タックスアンサー No.1160「障害者控除」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1160.htm
【現場のリアル】ひとり親控除の存在を知らず、1年分の控除を逃した話
商業施設で働くシングルマザーが、離婚して以来ずっと扶養控除等申告書のC欄を空欄のまま提出し続けていたという話を聞いたことがあります。子どもは扶養親族としてB欄には正しく記入していたものの、C欄の「ひとり親」にチェックを入れるという発想がそもそもなかったそうです。友人との雑談で「ひとり親控除のおかげで年末調整の還付が増えた」という話を聞き、慌てて自分の源泉徴収票を見返したところ、その欄にチェックがなく、35万円分の所得控除を1年間まるごと受けそこねていたことに気づきました。
まだ確定申告の期限内であれば還付申告として自分で申告し直せますが、期限も過ぎていた場合は「更正の請求」という手続きで、原則5年前までさかのぼって還付を求めることになります。税務署への書類提出や添付資料の準備で、平日に何度も窓口に足を運ぶ手間がかかることも珍しくありません。C欄はチェック一つで数万円単位の税金が変わる欄なのに、書類のどこにも「ひとり親の方はここにチェック」と大きく案内されているわけではないのです。自分が対象かどうかは、毎年自分で確認するしかありません。
独身者が扶養控除等申告書を出し忘れたらどうなる?

もし「独身だから関係ないや」と勘違いして、この書類を提出しなかったらどうなるのでしょうか?
実務上は、あなた自身が損をすることになります。
- 毎月の手取りが減る(税金が高くなる)
前述の通り、提出しないと給与から天引きされる所得税の計算が「乙欄」という非常に高い税率で行われてしまいます。
- 会社で年末調整してもらえない
会社で年末調整が行われないため、払いすぎた税金を取り戻すには、翌年の2月〜3月に自分で税務署へ行き、「確定申告」という手続きをしなければならなくなります。
国税庁タックスアンサー「No.2665 年末調整の対象となる人」でも、年末調整の対象となるのは「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出している人に限られると明記されています。出典:https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2665.htm 独身であっても、必ず期限内に会社へ提出するようにしましょう。
まとめ:独身の扶養控除等申告書は数分で終わる!
最後に、独身(扶養なし)の方向けの「扶養控除等申告書」の書き方をおさらいします。
- 独身でも提出は絶対必須(出さないと乙欄が適用され税金が高くなる)
- 書くのは一番上の「基本情報(氏名や住所など)」と「配偶者の有無(無に〇)」だけ
- 他の欄はすべて「空欄(白紙)」でOK
- ただし「勤労学生」(国税庁タックスアンサー No.1175)「ひとり親」(No.1171)「障害者」(No.1160)に当てはまる場合は該当箇所(C欄)に記入する
書類の見た目のごつさに圧倒されがちですが、記入箇所が一番少なく、あっという間に終わるのが独身の方です。C欄のチェック漏れだけは数万円単位の損につながるので、提出前にもう一度、自分がその3つのケースに当てはまらないか目を通してから、期限内に会社へ出しましょう。